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水の精霊 ~もっと光り輝いて~  作者: あるて
第1章 光が消えることはない

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第10曲 酒は飲んでも飲まれるな

「ぎぼぢわるーい」


 言わんこっちゃない。

 壮絶に二日酔い中のより姉。他の姉妹は平気な顔をしてるのに。


「ほら、これでも食べてもう少し横になってて」


 そう言ってラムネを渡す。


「なんも食べたくない」


「そんなこと言わないで食べてみて。アルコール分解で不足した糖分を補ってくれるから。頭痛や吐き気がマシになるよ」


 顔の前に差し出すと、もそもそと動いてラムネを数粒、口に放り込んだ。お布団の中でそんなことするのは行儀悪いけど、かなり辛そうだから目を瞑ってあげよう。


「そんな様子じゃ朝ごはんは食べられないね。糖分を補給したらマシになると思うから、お腹が空いたら下りてきて」


 万が一に備えて嘔吐袋を横に置いて、より姉の部屋を後にする。


 こんな状態になるまではしゃいでいたんだね。それだけ喜んでくれたというのも嬉しかったりするから、ついつい甘くなってしまう。

 他の人と飲んできてこんな状態になってたら、もっと冷たくしてるかもしれないけど。

 飲んだくれの旦那を持った奥さんの気持ちが分かってしまう。って誰が奥さんだ。


 心の中でノリ突っ込みをしながらリビングに下りると、他の姉妹が心配そうな顔で待っていた。


「依子さん、大丈夫でした?」


「今は死んでる。でもラムネを渡してきたからそのうち復活すると思う。あんな姿をあまり見られたくないと思うから、今はそっとしておいてあげようと思って」


 かの姉の問いかけに応えながら、みんなのご飯をよそっていく。ひよりが運ぶのを手伝ってくれたから、すぐに全員分をよそい終わった。おかずはすでに作ってある。


「より姉いない。ゆきが言って」

「わかったー。それじゃあ、いただきます」

「「「いただきます」」」


 いつも声掛けをしてくれている長女がいないから、長男であるわたしが声掛け。

 こう見えても長男坊なんです。長男坊。


「食べないの?」


 長男を噛みしめていたら箸が止まってしまっていた。最近妄想癖が強くなったのかな。


「食べるよー。うん、今日も良く出来ている」


 焼いただけのお魚を噛みしめながら、舌鼓を打つ。焼き加減もけっこう大事なんだよ。


「ゆきちゃんの料理にハズレなんてないよ~」


 今日も楽しそうなひよりが頬をリスみたいにしている。

 飲み込んでから話しなさい。


「ふふ、ありがとうね。落ち着いて食べないと喉詰まらせるよ」


 美味しそうに食べてくれるのは嬉しいんだけど、もうちょっと上品にね。




 朝食を終えしばらくゆっくりしていると、ようやくより姉が下りてきた。


「あう~。だいぶマシになったぞぉ。いやはやひどい目にあった」


「これからは飲むときもほどほどにしないとね」


「いや、あたしはもう飲まない!」


 二日酔いの人ってみんなそう言うらしいね。

 でもこの人昨日言ったこと忘れてるのかな。


「でも今日はワインの美味しいお店でデートだよ?」

「え?」


 やっぱり覚えてなかったか。


「より姉記憶にないの? 昨日ゆきちゃんがわたし達四人をディナーデートに誘ってくれたんだよ」


「う、途中から記憶にない」


 どんだけ酔ってたのさ。飲みすぎだっての。


「より姉だけ留守番」

「そんなわけねーだろ茜! ディナーまでには復活するからわたしも行くぞ!」


「ワインはいらないよね。でも料理も十分美味しいお店だから」

「何言ってんだゆき! ワインの美味しいお店で料理だけなんてもったいないだろ」


 おい、さっきの禁酒宣言はどこ行った。手のひら返し最速記録だぞ。


 でもどうせ行くならみんなで行く方がいいもんね。誰かが仲間外れになるのはわたしもイヤだ。


「それじゃ夕方に出かけるから、それまでには体調を整えておいてね」


「おう、まかせろ! まだラムネは残ってるしな」


 ラムネ万能説。


「でもラムネだけじゃお腹すくでしょ。お昼には何か消化にいいものでも作ろうか?」


「そろそろお腹も空きそうだしな。よろしく頼む」


 結局お昼ごはんはより姉だけに作ろうと思っていた、あさりと水菜のリゾットをみんなが美味しそうだと言うので、全員がリゾットになってしまった。夜には腹ペコになるかもね。




「そろそろ行くよ~」


 先に支度の終わったわたしが呼びかけると、自分の部屋にこもっていた姉妹たちがそれぞれ精いっぱいのオシャレをして下りてきた。

 元気なひより。スタイリッシュなあか姉。優しいながらもゴージャス風なかの姉。男前なより姉。

 それぞれスタイルは違えども、煌びやかなのは間違いない。

 これだけの美人たちを連れて歩けるわたしは世界一幸せなのかもしれないな。


「こうやってみんなでおめかしすると、ゆきちゃんの美しさが頭一つ抜けているのがよく分かりますね」

 

 え。


「あたしも自信がないわけじゃないけど、ゆきはまた別格だからなぁ」


 あれ。


「ゆきちゃんのオーラは並じゃないからね」

「神の造形」


 幸せを噛みしめていたのに、そんなことを言われると。

 嬉しいのは嬉しいんだけど複雑な気分。だけどここで単純に喜んでいてはエスコート役失格。


「みんなも眩しいくらいにキレイだよ」


 別にお世辞を言っているわけじゃない。口を揃えて褒めてくれるけど、みんなだって十分に美人なんだから。


 健康的なひより。寡黙でクールなあか姉。令嬢のように上品な美しさのかの姉。大人の雰囲気をまとったより姉。

 それぞれの特徴と服装が見事にマッチしていて、全員が並ぶととんでもなく華がある。


「こんな美人を四人も連れて歩けるわたしは幸せ者だよ」


 本心で言っていることが伝わったのか、みんな何も言わずに赤くなってしまった。

 はにかむ姿も可愛くて、胸の中に愛しさが満ちていく。


「みんなと同時に手を繋げないのが残念だけど、隣を歩くだけでも誇らしいよ」


「大丈夫だ。交代で腕を組むから。二本あるから二交代でいけるしな」


 バイトのシフトみたいだな。いいけど。


「美人を四人も連れて歩いてたら、道行く人からヘイトを買いそうだね」

「「「「それはない」」」」


 おい、声を揃えて否定すんな。

 言われなくても分かってますよ! 仲のいい姉妹にしか見えないって言いたいんでしょ!


「もうゆきは全国的な有名人だからな。それにあたしらと仲がいいこともみんな知ってるし。世間は微笑ましい家族として見ているよ」


 そっちか。

 それにしても家族、か。そうだよね。世間はどこから見ても姉弟としてしか見ないよね。

 だけど、みんなが何も言わないからといってそのままズルズルと行くのでは男として不甲斐ない。


 カバンの中身を確認した。すでに準備は整えてある。

 あとは実行に移すのみ。


「それじゃ、出かけようか」


 決意を胸に、玄関から一歩を踏み出した。

 わたし達の関係をハッキリとしたものにするために。

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