シンバという男 後編
赤みを帯びた空がアリステアの街を包む。
先ほどまでの盛り上がりが嘘かのように
静寂に包まれる酒場のカラウィンでは…
床に倒れる二人の姿。
モロはそんな二人を少し離れた席で見守っていた。
これが大人の勝負なのか…
「お、おい!どっちだった?」
「うーん。僅差だが、エヴァの方が、
倒れるのが遅かった気がするな。」
酒を大量に飲み倒れ込む二人とは対照的に、
酔いが覚めたのか、冷静に話し合う男たち。
「いいや…同時だ。こりゃたまげた…」
店主がそう告げた。
「あ、あんたがそういうなら…でもよ。」
「あぁ。こんなの初めてだ。」
シンバが頭を抑えながら起き上がる。
「うぅ。くそー。久しぶりに飲みすぎたぜ。
で、どっちが勝ったんだ?」
「それがよ、同時だったんだ。」
「同時だぁ?お?!でもよ。
こいつがまだ倒れているということは…」
シンバが倒れ込むエヴァを見下ろしー
「俺の勝利ってことでいいんじゃねぇか?!」
エヴァは右手に体重を預け、
必死に起き上がりながら…
「ば…バカ言わないでよ。まだ…まだ飲めるわ!」
「嘘つけ!
よっしゃ。これでこいつは俺のモンだな。」
シンバは賞状を広げる。
その賞状を丸め、腰のポケットに入れる。
「それじゃあなエヴァ!…楽しかったぜ。」
「ま…待ちなさー」
キィー
その時、酒場の扉が開く。
「やっぱりここにいた。」
そこには、シルクハットに片眼鏡、緑髪の男。
ドリューがシンバの道を塞ぐように立っていた。
「ゲッ。ど…ドリュー。」
「昼間からビール一気飲み対決とは…
便利屋ドリューとしての自覚を持って欲しいよ…」
「うるっせ!俺はもう抜けたっつったろ。」
「いいか!俺は独立して、
たっけー依頼料の仕事をバンバン受けるんだ!」
「またそれか。何度も言うように、
依頼の受ける受けないは、本当に難しいんだ。
…命に関わる。」
命…その単語が出て、辺りは騒然とする。
「んなこたぁー、分かってるよ。」
シンバは少し気圧されるが、
覚悟は既に決まっているといった態度で、
ドリューと正面から向き合う。
「ドリュー…大丈夫。
私が捕まえて、諦めさせるって言ったんだから。」
エヴァは机にもたれるように座る。
「それに、私はまだ負けてない。
シンバ!これがほんとに最後の最後。」
「最後の最後…”あれ”…だな。」
「えぇ。その、”あれ”よ。」
2人の視線が静かにぶつかる。
これから何が起こるのか、
2人の迫力に圧倒されるモロ。




