決断
静寂がその場を包む。
「はい……禁術…そう呼ばれています。」
モロは観念し、鞄の中の骸骨に手をかざし、やがて人型の骸骨が出来上がる。
「うわっ。実際に動くとこ、初めて見たわ。」
「学園でこの魔術を使いました。」
「禁術の中でも骸骨操術と呼ばれ、特別危険視される魔術だ。学園で使った君は今頃、魔術協会が必死に探しているだろうね。」
「で、でも…僕、本当に何もしてないんです。ただ、みんなに自慢したかっただけで…」
「君がいくら危険ではないと言ったところで、世間は君のことを…化け物を操る…恐怖の対象。として見るだろうね。」
「わ、悪いことをしたわけではないのは分かるわ。でも…」
再びの静寂に耐えられず
「すみません。もう…帰ります。」
「待ちなさい。…君が帰ると言うのなら、止めはしないよ。ただし…そうだな」
「君に選択肢を与えようか。」
「一つ。ここを出て、彼らに捕まるか。」
「もう一つ。この場に留まり、僕達の仕事を手伝うか。」
「…僕は……どうすれば……」
「ちょっと。相手は子供なのよ!」
「だからこそ…だよ。その魔術は、君のような子供が使っては…いや…”使えてはいけない魔術”…なんだ。君がその魔術を手放し、魔術協会に捕まるのも。僕達と共にその魔術に向き合うのも。全ては君次第だよ。」
「僕は…」
骸骨を見つめる。
一人ぼっちだった時、それに出会った時の事を思い出す。
このまま魔術協会に捕まれば、僕は…禁術使いとして、一生恐れられる存在になるのか。
骸骨は、何も言わずにモロを見ている。まるで、その選択を見届けるかのように。
モロは決心したように、ドリューの顔を見る。
「僕は…この魔術を認めてほしい。僕にしか使えない…特別な魔術なんだって。でも…誰かを傷つけたいわけじゃ…ない…です。だから…その…」
「ここで働いて、2人に認めてほしい。この魔術は人の役に立つものなんだって!」
「…ちゃんと言えたじゃない!」
エヴァがモロの頭を撫でる。
「理由としては十分だ。よし!」
「今日から君を、この便利屋ドリューの見習いとして雇おう!」
「ほ、本当ですか!」
「ちょうど一名、欠員が出たところだしね…」
「あの馬鹿シンバね。」
「モロ…初仕事だ。エヴァに着いていって、一緒にシンバを捕まえてきてくれないかな?」
「も、もちろんです!」
「あと…その格好は目立つからね。そうだな…ちょっと待っててくれ。」
と言うと、彼は入り口とは反対に位置するドアを開ける。
ーーしばらく経つと、ドリューはモロの身長に合う服とズボンを持って戻ってきた。
「いやー。売らずに取っておいてよかった。」
「どうしたの…それ。」
「どうしたって…僕が子供の頃に着てた服さ。」
エヴァとモロは顔を見合わせ、彼女は小さな声で、
「あいつも、中々の変わり者でしょ?ま、貰えるものは貰っときなさい。」
「あ、ありがとう…ございます。ドリューさん。ハハっ」
乾いた笑いをするモロ。
「ふむ。僕のお下がりが嫌なのかい?大丈夫。ちゃんと綺麗に保管してたからね。」
「そうじゃなくて!どう見たって…見つかったらダメな子が着る服じゃないでしょ?」
彼が持ってきた服は、至る所にキラキラと光加工が入ったマジシャンが着るようなコート。
ーードリューから貰った服を着る。
「ど…どうですか?」
「ま、まぁ。似合ってる…かも?」
「うん。似合ってるよ!」
ドリューさんはとても和かな表情を浮かべている。
「それじゃ。いってらっしゃい!」
「い…いってきます!」
モロは少し恥ずかしがりながら、そう言った。
便利屋ドリューの外に出る。
先程まで薄暗かった路地裏と彼らを、てっぺんまで登った太陽が照らす。
モロは無意識に抱え込んでいた鞄をそっと、肩にかけるように持ち直した。
もう胸で抱き抱える必要はない…そう思った。




