路地裏にて
音のする方向に走る。
「く…くるしぃ。ギブだギブ!だ…誰かぁ!」
「うるっさいわね!さっさと…返しなさい!」
「し…しぬぅ。ハッ!お…おい、坊主!た…助け、グホッ」
女性に羽交い締めにされた男は、今にも窒息しそうな勢いでモロに助けを求める。
「あんたを助ける奴なんて…あら?学生がなんでこんなところに?」
一瞬拘束が緩んだのか、男は拘束から抜け出し…
「ぼ…坊主。助かったぜ!」
男は首元を抑え、苦しそうに呟き、素早い動きで逃げていく。
「ま…まちなさい!シンバ!」
そう叫ぶ女性だが、男の背中はどんどんと離れていく。
「へっ!あばよ!」
男は高らかに叫ぶ…どこにそんな元気が残っていたんだ?
「はぁ…逃げられちゃった。」
女性は赤髪で、上半身はほぼブラジャー。ズボンもお尻を強調されたホットパンツを履いている。思わず目を背ける。
「あいつ、逃げ足だけは早いんだから…」
「ところで…なんで学生がこんな汚い路地裏に?」
「イヤー。ちょっと…いろいろ…ありまして。」
「ふーん…訳ありって感じか。それ、ルミナス学園の制服でしょ?授業とかは?」
「えっと…」
「わかった!課外授業で、はぐれちゃったとか?」
「あ、そ…そんな感じです。」
「ふーん。それで…いつまでそんな方を向いてしゃべってんのよ?」
「人と話すときは、ちゃんと顔を見て話なさい。」
目を背けながら話すモロの頬を優しく掴み、自身の方向に向ける。
整った顔立ち、艶かしい口紅、それに鼻から伝わる香水のいい匂いで全身が包まれる。
モロは彼女の顔をしばらく見つめていた。
「うーん?」
ー突然正面の扉が開いた。
「エヴァ…状況は?えっと…またナンパかい?相手は…シンバ…な、わけないか。懲りないねぇー君も。」
「ド…ドリュー?!そ…そんなんじゃないわよ。シンバは…逃しちゃった…ごめんなさい…でも!あいつが行きそうな場所は見当がついてるわ!」
ドリューと呼ばれた男性は、緑色の髪でシルクハットを被り、糸目で片眼鏡をかけている。
「ならよかった。ところで、その子はどうしたんだい?」
「私がシンバをとっちめてる所を見てて…事情を聞いても、あまり答えてくれないの。」
「そうか…君、訳ありなのはその顔を見ればよくわかる。泣いた跡があるからね。とりあえず…僕の店に入るかい?」
モロはエヴァから逃げるように、ドリューと呼ばれた男性の後をついていく。
その店の看板には便利屋ドリューと書かれている。
エヴァは彼らが店の中に入る様子を眺めながら
「私に照れていたんじゃないの??」
そうつぶやいた。




