動き出す影
魔術協会本部の会議室では、円卓のテーブルの中央に置かれた、蝋燭の明かりだけが照らされていた。
その灯りを囲むように、魔術協会の代表と四天王が椅子に腰掛け、その背後には四天王の部下である、四天王直属が手を後ろで組み、その会議を静かに聞いていた。
「禁術使いの生徒は…以前、行方がわからぬのだな?チリヌルよ。」
代表のタナトスが、上座の席から、手前の席に座るチリヌルに目線を向けた。
「はい。…ルミナス学園近辺の、アリステアやネクストランにも向かいましたが…進展はまだ…。」
「…そうか。この数日間、お主だけに任せておったが…進展は無いか…。チリヌルよ…お主の、禁術使い捕獲の任を…解任する。」
「お、お待ちください!確かに…成果は挙げられてませんが…。もう少しだけ、チャンスを頂けませんか?」
「ふむ…お主だけに任せておった、ワシの責任だ…。許せ…。」
「そ、それは…つまり…。」
「よいか皆の者!これより…禁術使いの捜索は、組織の者達、全員に命ずる!」
タナトスは語気を強めると、中央に置かれた蝋燭の灯りが激しく揺れた。
「はいはーい!チリヌルさん!その生徒の顔とか分からないんですかー?」
イロハが暗がりの中、明るく手を挙げ、質問した。
「学園の生徒や、教師に聞いたんだが…その生徒は、普段俯いていて、誰も顔を覚えていないと言っていた。親は…ショックを受けていて…聞ける状態じゃなかった…。」
「それは見つからないわけだ。よかったね!チリヌルさん!責任を押し付けられずに済んで…。」
「チリヌルよ…そんなに難航しておるなら、なぜわしらに相談しなかったのだ?」
「一応、俺が任されてたんで……それより、俺が探索した場所とかの共有をしたいんで、明かり、付けますね。」
会議室の明かりが着くと、様々な顔ぶれが現れた。
ぱちっ!
(このメンバーが一同に会するなんてな……)
蝋燭の明かりを消し、チリヌルは、中央に地図を広げると、数日間で調べた情報を皆に共有した。
——
(これで一安心…か。いや、禁術使いは…絶対に捕まえねぇーと。)
チリヌルは、その任を解かれたことで、久しぶりの休暇を得ることができたが、気が収まらないのか、自宅の庭に設置された木製の人型の模型を眺めていた。
二メートルほどのスカーフを首に巻き、金の装飾を首につけており、白い布でできたズボンを履いている。
フワッ…
チリヌルは、自身の【砂塵の魔術】をそれに放つと、それは宙を舞い、落下する直前に、再び舞い上がった。
(禁術……あんなに…やばい魔術だったなんてな…。でも、それを捕まえられないで、何が四天王だ。)
ズザザッ!
しばらく経ち、覚悟を決めたように魔力を強めると、その模型は宙で粉々に切り刻まれ、木の破片が、次々と地面に落ちた。




