ヒナの葛藤・中編
「まずは、禁術の話からさせていただきますね。こちらをご覧ください!」
ヨーコ先生が、机の上に、一枚の紙を二人に見える位置に置いた。
「以前あった、禁術事件をまとめてみました。」
そこには、ちょうど百年前に起こった禁術事件の顛末が、事細かに書かれていた。
「このように…禁術というのは、街が…国でさえ滅ぼせるほどの力を持つ、禁じられた魔術なんです。」
「こんな…内容だったかしら…?これは、酷いわね…。」
その内容を見て、顔が青ざめるカーラ。
カーラの学生時代には、ここまでの内容は書かれていなかった。
「そんな禁術を使う生徒が…今日、この学園で出てしまいした。なので、我が学園としては…これを不吉な予兆と捉え…更なる魔術教育の推進を図るつもりです。」
「そうですね。そうしてもらえると、私としても安心できます。」
「そこで…なんですが…。その、ヒナさんの成績なんですが…。」
ぶんぶんっ…
ヨーコがヒナの方を見ると、ヒナは勢いよく首を振り、上目遣いでうるうるとした瞳を向けた。
(お願い!言わないで…先生!お母さんに、心配かけたくない!)
「そのー。座学や実技の方は、大変優秀なんですが…実戦科目の成績が…あまり芳しくなくって。」
ヒナの無言の抵抗も虚しく、その事実を告げた。
「…そうなんですか?ヒナ…あなた…エヴァに教えてもらっているから、大丈夫って言ってなかったかしら?」
(……バレちゃった。)
「エヴァさんには、どういった依頼をしたか…魔術をどうやって使っているかを…教えてもらってるだけで…。」
「なるほどねー。ヒナ。人には得意、不得意があるから、お母さんも強くは言えないけど…。」
「…お母様の心配も分かります。でも、安心してください!先ほどお伝えしたように、魔術の実技、実戦関わらず、授業の時間を増やす予定ですので!」
(最悪…)
魔術の授業の時間が増える…そのことに、頭を抱えるヒナだった。
——
「あら?そんなことがあったの?」
「おう!エヴァとシンバの真剣勝負…あれは、見応えがあった。」
二人が家に戻ると、閉店前にも関わらず、店は閉まっていた。
「それで、そっちはどうだったんだ?」
「それがね、禁術を…」
二人が話すのを横目に、静かにお風呂場へ向かった。
—
(はぁー。お父さんも、絶対心配するだろうな。お母さんは、人には得意、不得意があるって言ってくれたけど…できないままだと…ダメだよね。)
「私は…人を、傷つけたくないのに…。」
ヒラッ…
魔術を使い、桃色の鮮やかな花びらを湯船に浮かべ、そう呟いた。




