研鑽の日々・後編
「なるほど!まずは…。」
ドリューにコツを教えてもらい、早速実践に移るモロ。
「体の重心をまっすぐ……杖は円の中心にむけて直角…。」
背筋をピンと伸ばし、杖のグリップを的に向けた。
「この状態で、ボタンを…力まずに…リラックスして、すぅー。はぁー。よし!」
—
覚悟を決め、ボタンを静かに押すと、驚くほどまっすぐに飛んでいき…
シュー……タンッ!
見事、円の中心へ当てることに成功した。
「当たった…?!」
「うむ…さすがだ!飲み込みが早いな…君は。だが、実戦でこんな構えをとっていては、相手に隙を与えてしまうことになる。」
「モロ。”臨機応変”という言葉は知ってるかい?実戦において、最も大切な言葉。」
「りんき…おうへん?それって…おまじないか何かですか?」
「おまじないか…確かに。近からず遠からず、と言ったところかな。臨機応変というのは、状況に応じて、対応を変えることさ。」
「状況に応じて…対応を…変える…。あ!分かりましたよドリューさん!つまり、ぜったいに当てないといけない時にしか、この構えはしたらダメってこと、ですよね?」
「その通り。これは、君に依頼を任せる日も近いかもしれないな……次は、君だ。」
モロの隣にいる骸骨に目を向けると、徐にズボンのポケットからあるものを取り出した。
「それは!ふ、普通のトランプ!」
「そう。ごく普通の、紙のトランプ。これを真っ直ぐ飛ばすには、こう持つんだ…。」
人差し指と中指でジャンケンのチョキを作り、モロに見せ、トランプを挟んだ。
「手の平で少し折り曲げ、手首のスナップを生かして…素早く投げる。」
シュル……
ツン!
それはすごい回転力で、三十メートルほど離れた的の中心に真っ直ぐ突き刺さった。
「す、すごい。持ち方も、投げ方も…全然違う。」
「うむ。だが…これはあくまで、紙の話だ。鉄を飛ばそうと思ったら…君のように、ブーメランのような回転をかける方がいいと思う。」
「…僕が教えたいのは、手首のスナップだ。君は、腕の力だけで、それをコントロールしようとしてたからね。」
「手首…そういえば、意識してなかった。」
「ふふっ…無理もない。それを意識するだけで、中心に百パーセント当てる…まではいかなくても、安定はすると思うよ。」
骸骨の先にある木製の的には、中心を除き、至る所に鉄製のトランプが刺さった形跡があった。
「モロ。実は言うと…こんなに早く、君が武器を扱えるようになるとは、思わなかった。」
「ほ、本当ですか?!えへっ。褒められちゃった!」
「次の休みの日…いつになるかは分からないが、”最後の試験”をしようか。」




