研鑽の日々・前編
「むぅー。」
便利屋ドリューのお風呂場では、温かいお湯に浸かりながら、何やら考えこんでいるモロの姿。
「当たらないなぁー…的に…。」
便利屋ドリューに来て数日が経ち、ここでの生活にも慣れてきた。
自分の魔術を何のために使うか、自分のやるべき事、自分の目標……様々なことを教えられ、経験もしてきたモロだが、どうしても超えられない壁があった。
「ど・ど・どうすれば当たるんだぁ〜……どうすれば当たるんだ〜……」
湯気の立つ浴室に、間の抜けた独り言が響く。
(僕の杖もだし…骸骨さんのトランプ…そもそも…鉄製のトランプなんて…本当にまっすぐ飛ぶのかな…)
的に正確に当てる…自分でその目標を立て、その練習を繰り返してきたが、なかなか成果が出ずにいた。
「ド・ド・ドリューさん〜……教えてよドリューさん〜……」
—
「——モロ?僕が、どうかしたかい?」
「ひぇっ?!ドリューさん?」
お風呂場の洗面台、その先の廊下から、ドリューの声が聞こえた。
「——何驚いてるんだい?廊下まで丸聞こえだよ。」
「す、すみません……実は、ドリューさんから貰ったトランプを、的に正確に当てられなくて…早く、依頼をこなして…役に立ちたいのに…。」
「——ふむ。焦ることは無い…と言いたいところだが、そんな”変な歌”を歌ってしまうほど、悩んでいるんだね?」
「へ、変な歌……。」
「——実は、明日の予定が無くてね…よければ、その練習に…付き合ってあげようか?」
「ほ、本当ですか?!ぜひ!ぜひお願いします!」
湯船から飛び出す勢いで、その提案にくいついた。
——
翌日の早朝、魔術修練場に集まる三人の姿。
「ではモロ。君が…君達がやっている練習を、僕に見せてくれ。」
「はい!」
一人でやっていた練習を、誰かに見てもらえる…その事が嬉しくて、いつもより熱が入る。
「…いきますよ。えい!」
仮面の骸骨と並び、それぞれの武器を的に目掛け放った。
トンッ!
ズサッ!
両方、的には当たったものの、中心の円からは離れていた。
「おー!当たったじゃないか!」
まだ当たらないものだと思っていたのか、予想外の成果にドリューは目を丸くした。
「でも…中心から離れていて……これで実際に戦えるのかなって…思っていて…。」
「モロ。実は言うと…少し予想外だった。…だけど、確かに…正確に当たるのは、大事なことだ。」
「まずは、その杖から始めよう。」
持っていた杖をドリューに渡すと、グリップを的の中心に向けた。
片眼鏡の縁がキラリと光り、次の瞬間、ボタンを静かに押した。
シュー……バンッ!
そのグリップは円の中心に、勢いよく直撃した。




