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パパは異世界ATM 〜家族に届く育児クラフト〜  作者: taniko


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105/106

第105話 魔力とは


「ちょっと、俺は魔力とか魔石のことに詳しくないんですけど、かいつまんで幼児にもわかるように話すと、どういうものなんでしょう? アルフィアーナさんは、ご存知です?」


 ライチの教えを請う言葉に、アルフィアーナは、一瞬、懐かしげな、切ない表情を浮かべた。


「そうですわね……わたくしは……それらの知識を持っております。

 黙っていても、いずれどこからか耳にすると思いますので、言ってしまいますが、わたくし、少し前には、王妃になるべく、厳しい教育を受けておりましたの」


「お? お、おう、王妃!!?」


 ……って、なんだ?! 領主より偉いんだっけ? そりゃ“王”とか付いてるんだし、偉いに決まってるか!


「今は、孤児院の黒魔石のお姉さん、ですけれどもね」


 アルフィアーナが自虐っぽく微笑む。


 何がどうなって、王様の妻になるべく学んでいた人が、孤児のお世話をすることになっているのだろうか。

 本人にずけずけと聞くのは、さすがのライチにも憚られた。


「なので、そのご質問には、かなり深いところまで、お答えできると思いますわ。……それこそ、一般の貴族では知り得ないところまで」


「そ……そんな深いところまで、俺なんかが知ってしまっていいんでしょうか……」


「あなたがこれらの魔導学の真髄について吹聴したところで、誰もそれが正しいと信じる人はいないでしょう。それに、ただ伝播されていないだけで、特に秘匿されている、ということではありませんので」


 アルフィアーナが、あっけらかんと言い切った。


(もう王妃にはならないし、このライチって人は、神様が直々に連れてきた異世界人だし、いいやいいや言っちゃえ〜、くらいに思ってるのかな?)


 『何からご説明しましょうか……』と少し考えた後、アルフィアーナが話し始めた。



「魔力とは、命の力ですわ。では、命の力とは何か? それは、心臓に寄生した魔力生成器官が、生物を乗っ取る際に放出するエネルギーだと言われています。ゆえに、このエネルギーを放出しなければ、身体すべてが魔力生成器官に乗っ取られて、魔石へと変わってしまうわけですわ。モンスターは、脳を魔力生成器官に乗っ取られた結果、肥大化して、凶暴化しているんですの。このエネルギーは、体を巡りやすい反面、伝導率の良いものに直接触れることで、そちらに引き込まれて流れてしまうという性質があります。伝導率が良いものとは、魔石と、鉱脈に土地の魔力が蓄えられて変質した“魔導鉱”から作られる魔導線ですわね。魔力生成器官ができるかどうかや、器官が生成できる魔力の量には、遺伝が強く関係しますが、生まれる環境にも実は起因しているんですの。神聖力で結界を張ることで、領地内に大型のモンスターが発生しないようにしているのはご存知かもしれませんが、大型モンスターの発生状況と、特発性で遺伝でない平民の魔力持ちの発生状況は、かなり似た比率になっているのですわ。このことから、“神聖力で浄化しない土地のわだかまりが、魔力生成器官という一種の【病気】を引き起こすのではないか”という説が現在有力となっているんですの。ですから、あえて神聖力で浄化しない土地を作り、そこで肥大化させたモンスターから良質な魔石を獲りに向かう、それが、聖騎士の大きな役目なのですが、そのわだかまりに様々な者が触れられるように、規則として、貴族や平民にそこへの同行を課しているのですわ。魔力を持つ者は、わだかまりにあてられると発症しやすい、遺伝性の不治の病にかかっているようなもの、という認識ですね。魔力を放出し続けないと死ぬ、ということは、この説もあながち間違えてはいないのではないかと思いますわ。ここまでくると、なぜ、その病気のエネルギーを土地に流すと、豊かな土地になるのか?という疑問が湧いてくるかと思います。しかし、それは逆の考え方なのですわ。“魔力を流すと、たまたま実りのいい、収穫量の増える種ができ、あとは淘汰された”という結果が、“魔力がないと荒れる土地”を生み出したのですわ。植物が魔力に適応し、人々がそれを選んできた結果なのです。

 ……さて、幼児レベルに落としてお話させていただきましたが、ここまではもちろん理解できましたわよね」


「すみません、あの……長くて、その、全然、分からなかったです……。エネルギーという単語がよく出てきたなぁ、というのと、【病気】って単語が怖いなぁと思った、その程度ですすみません……」


 ライチは、ダンゴムシのように小さくなった。


 耳から一気に異世界の常識が流れ込んできても、これまで黒板で説明されて、テレビの字幕を読みながら見て育ってきた視覚優位のライチには、さっぱり理解ができない。ラジオしかなかった時代の人ならもう少し理解できたのだろうか。


「二十文字くらいまでなら、なんとか耳だけでもよく分かるかも……すみませんほんと……」


 しょぼんとしたライチを見て、アルフィアーナはしばらく思案して、


「まりょくは、ふじのやまいの、のっとりえねるぎー? ですわ」


 綺麗に二十音で答えてくれた。現地語では一体どう答えてくれたのだろうか。なんにせよ優しいし有能すぎるので、王妃として是非推したいくらいに、ライチは感激した。


「おお!よく分かりました!アルフィアーナさん、さすがです!!

 魔力って、病気が発するエネルギーかも?なんですね。不治の病か……ちょっと恐ろしいですね。でも、魔力を出してたら大丈夫なんですもんね。

 それだと確かに……父性がたぎっては魔石に流し込める俺は、かな〜り、異質ですね……」


「そうなのですわ。わかっていただけましたか! 魔導学者がひっくり返って、そのあと起き上がって、こぞって心臓や脳の解剖を始めたくなる程度には、異質な存在なのですわ」


「解剖は嫌です……。魔力が出てくる器官を肉眼で探さないで……。

 まぁまだ飛車が飛んだだけなんで、父性エネルギーは、魔導線を流れて魔石が動くだけで、土地の命の力にはならない、という仮説も立てられますよね。う〜ん。……そもそも魔石ってなんなんですかね?」


 ぽろっと質問が口からこぼれて、ライチは『しまった』とすぐに後悔した。


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