裏での手引き
警察署の近くまで戻ってきた一行は車のカギを明良に渡し、後日返しておいてくれという旨を伝え下車、別かれ際に瑠々は武人達に笑顔で手を振り武人達もそれに応えた。
明良の運転に変わり再発進する車を見る武人、優佳、相馬、昌義の四人。
車の窓から身を乗り出して手を振っていた瑠々が四人の姿を視認出来なくなるまで四人
も手を振り続けていた。
そしてその後。
「いやいやいや!! お前ら何で瑠々のオヤジに警察署に掛け合って無罪にしてくれって言わねぇんだよ!?」
「それは、こっちのセリフだ武人。あの良い感じの雰囲気で空気の読めない発言をするのはお前しか適任が居ない……!!」
「そうだぜ武人!!折角無罪になるチャンスをみすみす捨てるとか阿保かてめぇは!!」
「思ってたんならお前何か言えや昌義!!ずっと無言で運転しやがって、存在感皆無だっ
たぞボケ!!」
「ンだとおい!!」
先程まで瑠々達の前で良い感じの男を演じていた男達は一変し、とても醜い者へと成り
果てていた。
「落ち着けお前ら。早く戻らないとそろそろマズイ!」
「おいおい優佳!てめぇ何一人で俺は関係ないです感出してんだ、お前も何も言わなかったから同罪だ!!」
「そうだそうだ!」
「悪い、と思うなら……女子のスク水を着て写真を撮らせてくれ」
「ちょっと待て今一人おかしかったぞ!?」
「「「何もおかしくねぇだろスク水姿見せろ!!」」」
「いや今度は全員おかしい……!」
男三人の馬鹿さ加減に優佳は頭を抱えた。
「もし何か反論出来んならしてみろ優佳。まぁどうせ相馬と昌義と一緒で言い返せねぇだろうけどな」
武人の言葉に少し思慮をした優佳は申し訳なさそうに口を開いた。
「そうだな……。瑠々様とその御父上が折角良い関係に一歩進んだ矢先にどうも水を差せなくて……な。確かにあの場で瑠々様の御父上に頼むべきだった、すまない」
優佳は頭を下げた。
対して争いを繰り広げていた男達は……。
「えっ。ちょ、いや優佳そうじゃないだろ。やめろって……お、おい……何か今の今まで言い合ってた俺達が惨めになるじゃねぇか!!」
「汚い、俺達」
「やっぱ優佳には色々叶わねぇわ……」
一人の美少年により三人の汚少年は落ち込むように黙り、留置所へと戻って行った。
◇
「……ん」
体が揺れる感覚でミケは目を醒ます。
「ここは……車の中か」
窓は無く完全に密閉状態で外を確認する事は出来ないが微かに聞こえる排気音などからそう推測した。
「全員、無事なのか……?」
薄暗いが今回の作戦を実行した仲間が倒れていた。しかし死んでいる訳ではなく眠って
いるだけだという事はすぐに分かった。
そしてその中には相棒であるタマも居た。
『目が覚めたみたいですね』
「誰だ」
突然聞こえた声にミケは少し身構えた。
『このトラックを運転している者です。運転席からスピーカーを通してあなた達に聞こえるように話しています』
淡々と語るその口調に警戒を強めるミケ。
『では、私の上司に変わります』
「上司……?」
『はい。リーダー格であるあなたかタマさんが起きたら電話を掛けてくれと命令されていますので、それでは』
そう言うと今度は非常に加工された声がミケの耳に届く。
『さぁさぁ起きたわね!』
非常にテンションが高い声だ。更にその声が女性である事をミケは理解する。
「お前は誰だ?どうして俺達を回収した?」
今の状況を指示したと思われる彼女にミケは率直な質問をぶつけた。
『あらそれくらい察しが付くと思うけど、まぁいいわ! じゃあまず私の正体からね。詳しくは言えないけどあなたに今回の御代家の令嬢誘拐の話を持ち掛けた奴の大元、分かりやすく言えばボスって奴かしら?』
「お前が……?」
『えぇ!それで二つ目の質問の答えね。単純に言うと困るのよ。あなた達があのままあそこに居て警察に捕まるのは。それにあなた達だって捕まりたくないでしょ?』
「……」
その問いにミケは何も言えなかったが答えは勿論イエスだった。
身元が保証出来ない事に加え数々の犯罪行為に手を染めている彼らが警察に捕まればどうなるか、それは想像に難くなかった。
『と、言う訳で理解してもらえたかしら?』
「……」
またもミケは無言、それを通話越しの彼女は肯定と捉えた。
『良かったわ理解してもらえて! じゃあ話を続けるわね、まずは感謝を言わせてもらうわ。ありがとう!急な話を受けてもらっちゃって!! それにしてもすごい手際の良さだったらしいわね! 詳しくは聞いていないけれど大方要所要所で事故を起こして対象を乗せた車を人通りの少ないポイントまで誘導したって所かしら?そこで人員を割かせて目的の車を警察が護衛出来ないようにした。急だったから人も少なかったでしょ?それなのに完璧な人員配置と各々の役割分担で無駄の無い作戦を成功させた……褒めるに値するわ!』
依然テンションの高い声が車内に響く。それが耳に堪えたのかミケは言葉を挟んだ。
「おい」
『ん? 何かしら?』
「……お前達の、目的は何だ?」
耳に響く声を中断させたいがため話す内容を決めていなかったミケ、そんな彼が突発的に口に出した質問がそれだった。
『目的?』
「あぁ。今アンタの話を聞いてて感じたんだ。アンタはただ、楽しんでる。本当は取引相手なんて最初からあの場に来なかったんじゃない? ……でも、楽しむだけにしてはあまりにも話が急すぎる。僕達に依頼が来たのが作戦実行の数時間前だ。アンタみたいなタイプはもっと事前に計画を練るタイプだ。でも実際そうはしてない……意図が見えないんだよ。何がしたかったんだ?」
思い返し、事実を加味し、ミケは推論を重ねる。だがそれでも何か一歩届かないもどかしさをミケは感じていた。
『んーー……ねぇ知ってる?今あなた達の命は私が握ってるんだよ?』
何気無く聞いた問いだった。だがその返答からミケは背筋が凍りつき、心臓を鷲掴みにされるような感覚に襲われる。
ミケはすぐに理解した。これ以上深く聞けば命は無いと。
「……命は、惜しいね」
心拍数の上昇を体内で感じながら冷静さを装い、ミケは必死で言葉を取り繕った。
『そう?良かったわ話が分かる殺し屋さんで!! えぇそうよね!! 指定された口座に前金も払ってあるし余計な事を言わなければ命の保証もする!! 十分よね?』
言葉に節々に圧を感じるミケ。しかし何とか雇い主の機嫌は直ったようである。
『えーっと、じゃあもう話す事は無いわね! 私とのお話はここで終わりよ! じゃあね!!』
その声を最後に通話が切れたのか、その後声が聞こえる事は無かった。
『通話は終了です。後はこのままあなた方を運びますので、そのままごゆっくりしていて下さい』
運転手のその言葉に本当に雇い主との通話が切れた事をミケは実感する。
嵐が過ぎ去り再び静寂が空間を支配する中、ミケは複雑な心境のまま腰を下ろし壁に背を付けた。
「……」
まるで抜け殻にでもなったかのようなミケの動きだがこの数時間であまりにも色々な思いが心中を巡り過ぎた上に今の状況であるため無理も無い事だ。
処理しなければならない様々な情報が頭を交錯するが、今はそれらについて思考のリソースを回す事もままならなかった。
そして、昌義によって蓄積させられたダメージが癒えておらず再び意識が崩れ落ちていきそうになるのをミケは直感する。
果てして自分達がどこまで運ばれるのか、運ばれた先で自分達は自由なのか。そういった不安は勿論彼の中にある。だが今はそれよりも身体が一刻の安息を求めていた。
「くっそ……」
そして、意識はそこで再び途切れた。
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