武人VSタマ その2
「うおっなんだぁ!?」
そう言い驚く武人だがその身体は意識するよりも先に動いていた。
「いっ!?」
彼はその場で跳躍し体を回転させながら飛び交う弾丸を回避する。
「いって……」
だが流石に全弾綺麗に回避という訳にはいかない。腕や足を微かにかすった。
それだけで済むのも十分に偉業ではあるが。
……空中ならばそう思うように動けないだろう!!
「はぁ!!」
タマは爪の長さと固さを殺傷力の限界まで高めると腕を大きく振りかぶり武人に向かい振り下ろした。
「くっそ……!!」
先程同様に武人は無理やり体を捻り体勢と向きを変えるとタマの攻撃を両腕で防ぐ。
まるで激しい斬撃を受けたかのように攻撃を受けた腕はおびただしい出血をし、服の袖も破けた。
そしてすぐさま武人を蹴り横へ飛ぶ。次の攻撃モーションへと移行する。
タマの攻撃が反動になり先程まで自由落下で降下していた武人はそれよりも速い速度で床へと接近した。
予備の弾丸は十分……これを続ければ、確実に奴の息の根を止める事が出来る!
銃撃を加えた新たな戦闘スタイルの確立に心を躍らせながらタマは先程は至れなかった確殺の成功を予感する。
「こ、……こだぁ!!!」
その大声にタマは目を見開く。見れば武人が床に足を向け
「りゃぁ!!」
二本の脚でけたたましい音を立て着地する。
その衝撃は振動として伝わり周囲が大きく揺れた。
しかもそれだけではない、あまりにおおきな衝撃だったものだから武人の足を中心に波紋のように地面が割れた。
この倉庫は廃材などを管理している倉庫、そのため木材や梱包材などがそこら中に視認出来る。
だが管理が杜撰なのだろう、立て掛けてあるものもあれば床に放置したままの物も見受けられる。
武人はその床に落ちていた物に目を付けたのだ。
「うらぁ!!!」
武人の周囲で床にあった鉄板が跳ね上がる。
右腕を伸ばすとまるで鞭のようにその腕をしならせ鉄板を弾き飛ばす。
鉄板は勢いの良い回転を付けブーメランのような軌道を描きながらタマに向かっていく。
「なっ!?」
今のタマの位置は武人を土台に跳躍した事でかなり距離が開いてはいる。
しかしそんな事は今の彼に向かって飛んでいく物体の前では意味を為さない。
くそ……! どうする、このままでは俺が壁に足をつく前に鉄板が俺に刺さる。
空中にいる今の状態では上手くアレを避けられない……!
猫殺スタイルは密閉された空間で真価を発揮する、壁や床を瞬発的に利用しその際に生じる多大な運動エネルギーを使い相手をかく乱させる動きや殺傷力の高い攻撃を生むのだ。
だが利用する足場の無い空中では隙が発生する。
向かい来る鉄板を目視しながら打開策を考える。
いや、まだだ。逆にこれを利用しろ! これを足場にして次の攻撃モーションに……!
タマは体を小さく丸めるようにすると鉄の板の上に自身の体を置く。
「ふぅっ!!」
少しのズレも許されない。下手をすれば鉄板に直撃してしまう行為をタマは何とか成功させた。
空中に出来た足場を利用して上空に跳躍した。
跳躍中足を上に頭を下に、そして弾倉をを素早く入れ替える。
このまま天井を利用して勢いの反動をつけ上から銃撃を・・・。
その時だった。タマは上空から俯瞰して見た景色に大きな違和感を覚える。
いない……。
そう、居ないのだ……武人が。
あの場で鉄板を飛ばしたはずの武人が既にその場に居なかったのである。
「やると思ったぜ……!!」
「っ!?」
その声のする方向を首を回してタマは見る。
そこには膝を上げ、拳を構え、空中で同じ高さを保っている武人が存在した。
「あれを足場に飛んでくれると思ってたぜおい!! 飛んでくれりゃあそっからどこ行くかなんてイヤでも分かるからなぁ……!!!」
武人は拳を強く握りしめ悪鬼のような笑みを浮かべる。
やられた、こいつは俺の先を行っている……。
単純な身体能力だけじゃない、精神力も、戦闘に関する勘も……、こんな……。
「てめぇ今こんなバカ面なのにって思いやがったなぁ!!!!」
「ぶふぅへぇっ!!!???」
普段はデリカシーの欠片も無く大体どんな事象にも鈍感な武人だが戦闘中に限り彼は相手の善意や悪意に敏感になる。
今回も例に漏れず洗練された読心術、それによって武人はタマの心中を察した。
その内容に激昂した男の拳は殺人的な速度でタマの左頬を貫く。
ドガァン!!と音を立てタマは床に叩きつけられた。
「っしゃぁ俺の勝ちぃ!!」
野生児のような着地を決めた武人は野太い声と共にガッツポーズをした。
タマはピクピクと身体を動かしてはいるが最早戦闘不能である。勝負は完全に決した。
「無理……か」
当然と言えば当然だ。
慣れない戦い方は往々にして隙を生む、磨かれてないからだ。
磨かれてなければ失敗する。
それに自分が相手にしてきたのは常に同格か格下、格上相手は闇討ちや奇襲でしか戦ったことが無い。
正面から、こんなに正々堂々やり合うとは……馬鹿みたいだ。
「すまない……ミケ」
「あ?まだ意識トんでねぇか。中々やるじゃねぇか」
二本の足で立っている武人は笑顔でタマを見下ろす。
「途中まで指示されてたのかってぇくらい動きがワンパターンだったから急に変わってビビったぜ」
どうやら武人もタマの変わりように気付いたらしい。
「でも動きに無駄多かったな。もっと鍛えりゃ大したモンになるぜお前」
武人の言う通りであり間違いなく無駄は多くそれはタマも心から自覚していた。
「お前は……何者だ?」
「俺?」
動きは出鱈目で滅茶苦茶だがあの超人めいた身体能力でそれをカバーしている。
それでいてあれだけ破天荒な攻撃なのに無駄が無かった。
普通に訓練していて身に付くものじゃない。
タマは武人という謎めいた強さを持つ男に人間的興味を持った。
「名前は覇原武人、去年からこの町に住んでる。その前は不良特区に居た」
聞かれた事に武人は淡々と答える。
「不良特区……の……」
聞かされた情報を頭に埋めるように呟いた。
何だ……どこかで、聞いた事がある……いや、こいつは。
「あの……覇原武人……!?」
タマは不良特区の住人ではないがそれでも悪行を生業とする人間としてその内情や危険人物を把握している。その知識の中には不良特区で育った武人の事もあった。
覇原武人、超人的な身体能力を持ち不良特区内で十代の中では最強と言われていた男。
一年前突如として特区から姿を消したと聞いたが、まさかこの市に居たとは……。
「あれ俺有名人?いやぁ照れるなぁ!」
武人は思わず口元を緩ませた。
「はは……強い訳だ」
思わず自嘲気味な笑みをタマは零す。
「まだまだだぜ俺なんて、アネゴの足元にも及ばねぇよ」
そう言って彼の脳内に一人の女性の顔が散らつく。
武人はその本名を知らない。一緒に生活を送る中で気付いたらその呼び名が定着しており武人自身別に名前を知ろうとしなかった。
そんな奇妙な関係性の上での共同生活、武人は彼女から地獄のような特訓を課せられ普通に鍛えただけでは至らないであろう境地まで彼を至らせたのだ。
武人にとってアネゴとは最も尊敬し、越えるべき目標である。
「っておい? ……あー気絶したか」
先程の言葉を最後に薄っすらとしていたタマの意識は完全に途絶えた。
「えーっと、とりあえず相馬にもらったコイツで縛っとくか」
武人は相馬から手渡された鉄製のワイヤーで適当にタマの腕と足を縛り付ける。
「よし、これで起きてもそうそう動けねぇだろ。外の音も止んだって事は優佳達も終わったみてぇだし、行くか」
外から一切の戦闘音が聞こえなくなった事実を認識した武人は三人でここを抜け出すために優佳と昌義との合流を図った。
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