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犯罪者との邂逅

 北開浜湾第五倉庫内:時刻十一時四分


「う……」


 頬に感じる冷気、体に走る微かな痛みが明良の目を覚まさせた。


「ここは……」


 そこまで言って自分が攫わた事を再認識する明良、後ろ手で手を縛られており体は床に倒れている状態である。

 あれからどれだけ経った……?


 明良が周囲を見渡すと近くには同様に拘束されている瑠々が倒れている。

 そして椅子に座り腕を組んでいるタマが二人を眺めていた。


「目が覚めたか、うなされているようだったが悪夢でも見たか?」

「黙れ……!!」


 睨み付けるような眼光をタマに向けるが彼は全く動じず話を続けた。


「予定では後六分後に取引相手が金を持ってここに来るはずだ」

「なっ……!」

「安心しろ、俺達は何もしない。ここで金を受け取るだけだ。お前達はそれまでただここで「何もせず」じっとしていればいい」


 ふざけるな。それはつまり金を受け取った後の事は何一つ保証出来ないという事だろうが……!!


 明良は最もな思考をした。


「まぁ狙われたお前達に運が無かったって事だ。諦めてくれ。恨むなら俺達に依頼をした依頼人を恨むんだな」


 依頼人……。


 明良の耳に聞き捨てならない言葉が入る。


「一体誰に頼まれた……っ!?」


 声を荒げタマに追及を掛けるがそれは突如放たれた弾丸によって塞がれる。


「余計な事を言うな。この場合は『例外』だ。次探りを入れるような言葉を吐いてみろ、今度は床に撃ち込んだそれをお前の頭にブチ込む」

「くっ……」


 床から香る硝煙が鼻孔を突き抜け脳がそれに浸る。

 今の口振り、本当に嘘を言っている様子はない……動きを見せれば間違いなく殺される。

 タマの一連の言動と行為から明良はそう判断した。


 下手な動きは出来ないか……。

 だがこのままでは瑠々の命が、いや下手をすれば命を失う以上の苦痛が瑠々に……!!


 思考する明良、必死でこの場を乗り切ろうとする彼だが現状があまりにも悪い。取引相手が来るまで後僅か、それまでに助けが来るなど考えられないしそもそも助けを呼べる算段も無い。当然、己の力だけでの脱出も不可能。

 絶望的な状況で打開策は無い。ただ、タマの言う事に従うしか無かった。


「……そうだ、それでいい」


 苦渋の思いで決断を下した明良にタマは向けていた銃を下ろす。そして放っていた殺気も徐々に薄れていった。

 言葉を発するのを躊躇う明良、何も語らなくなったタマ。広いコンテナに再び静寂が訪れた。しかしそれも束の間だった。


「ぁ……」


 微かに響いた声に男二人は音源の方へと顔を向けた。


「お、お父さん……」


 瑠々が目を覚まし明良を見る。今がどういう状況なのか小学六年生の少女は目の前の光景を一瞬で理解し言葉を発した。

 そして唐突に事は起こる。


「お父さんに……ひどい事しないで!」


 大きな声で少女はタマを非難した。


 は……?


 娘の言葉を父親は一瞬理解する事が出来なかった。いや、理解を拒んだというのが正しいのか。


「何を……言っているんだ瑠々?」


 瑠々が啖呵を切る光景を何とか飲み込んだ明良、何をどうする事が最適解なのか不明瞭だったが何も言わないのはまずい、思わず出た言葉がそれだった。

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