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男の過去 その7

 斎条龍玄の所有する隠れ家で俺はひたすらに流華の手術の成功を祈っていた。


 頼む……生きてくれ……流華……。


 祈る手は震え、上の歯で噛み締めた下唇は出血している。

 流華が生死を彷徨う間、何も出来ない自分の無力さに涙が止まらなかった。

 手術が開始され既に二時間が経過している、俺が出来る事は一歩も動かず扉の前の椅子に座りただ祈る事だけだった。


『一真様』


 震え続ける俺に間島さんが声を掛ける。


『少し、お休みになられた方がいいです』

『お気遣いありがとうございます。でも、大丈夫です』

『その顔で大丈夫と言われても説得力無いですよ』


 言われて気付いた、今自分の顔はとても人に見せられるような顔ではないと。


『確かに……大丈夫って言うのは、嘘です。ですが……居させてください、ここに。流華があの部屋で頑張っているのに俺だけが休むなんて……出来ません』

『そうですか……では』

『間島さん?』


 間島さんは何を思ったのか、俺の隣に腰を下ろした。


『一真様がいつ倒れてもいいように、私も同席します。私は間島さんの秘書兼ボディガードですから』

『……ありがとう、間島さん……』  


 震えながらも絞り出す声、その時だった。


 ガチャ


 扉の開く音に俺の意識は全て持っていかれた。

 すぐに音のした方へと顔を向けると手術室のランプが消え扉が開いていた。俺は我を忘れるようにそこから出て来た担架の元へ駆け寄った。


『先生……流華は?』

『全力を尽くし、何とか一命は取り留めました』


 その言葉に俺は思わず脱力しその場にへたりと座り込む。


『良かった……本当に良かった……!!!』


 流華の手を握りしめながら俺は涙を流す。

 死ななかった……生きてくれた……!!

 その事実から来る安堵が俺の心に染み渡り、体の震えとなって現れる。

 未だ状況は厳しいままだが底知れぬ幸福感が俺を包み込んだ。


『一先ず落ち着いて話すために別室へ移動しましょう』


 間島さんのその言葉に俺の含めるその場に居た全員が同意し流華を乗せた担架を運びながら別室へと足を運んだ。 


 

 空き部屋へと移動し現在部屋にいるのは俺と流華、間島さん、間島二号さん、そして流華の手術を担当した先生とその助手である。五人が眠る流華を囲むような体制で話が始まった。


『先程も申し上げた通り、流華様は一命を取り留めました……ですが』

『「ですが」って……どういう事ですか先生?流華は、助かったんですよね?現に今こうして眠っているじゃないですか!』

『確かに……一命は取り留めました。しかし、出産後で体が弱っていた事と腹部からの大量出血。脳への血流が停止して大脳が機能していなかった。処置の開始が後数分早かったらこんな事にはならなかったのですが……』

『ちょっと待って下さい……。分からない、分からないです。流華はどういう状態なんですか!!』


 俺は立ち上がり先生の目を見た。

 医者である先生は気まずそうに目を逸らしたが、口を開く。


『所謂……植物状態という事です』

『植物、状態……?』


 その言葉を疑問形で口にした。意味が分からない訳では無い、ただ単純にそれを現実として受け止める事が出来なかった。


『何時流華様の意識が戻るのか、医者の私でも判断出来ません』

『何か、何か無いんですか!?流華の目を覚まさせる方法は……!!!』


 懇願する俺に先生は非常な事実を告げた。


『申し上げにくいですが……ありません。強いて言うなら、延命治療で自然に意識の回復を待てとしか……』

『そんな……』


 嘘だ……なら、流華は何時目を覚ますかも分からないっていうのか?

 永遠に……このまま目覚めない可能性もあるっていうのか?


『ぁぁ……うぁ……ああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!』


 頭を抱え、意味も無く叫びを上げた。 

 流華が喋らない。

 流華が歩かない。


 つまり


 会話が出来ない。

 一緒に歩けない。

 だがそれよりも辛いのは彼女の笑顔を見る事が出来ないということだった。


『くぅ……ううぅぅああああ……!!!』


 涙を流し、顔を両手で覆い、頬に指を食い込ませる。

 生じる痛みが何一つ霞む事の無い現実であると俺に突きつけた。


『一真様』


 絶望に浸っていた俺に間島二号さんは言葉を発する。


『流華様を刺したのは、私です』


 意味が分からなかった。


『……は?』


 だから思わず声が出た。


『何を……言ってるんですか……?』

『事実です。私が流華様を刺した、と言ったんです』

『え、いやいやいや……ちょっと本当に……どうしたんですか。変な事言わないで下さいよ』


 理解出来なかった。本当に何を言っているのか、こんな時に冗談を言っている場合じゃ無いでしょ間島二号さん。


『……』


 嘘だと言ってほしかった。冗談だと、質の悪い冗談だと。場の空気を変えるための冗談だと……到底容認出来る冗談ではないが今ならまだ軽く怒るだけで済む。


 なのに、なんだ……その目は?


 間島二号が俺に向ける目、言い放った事が真実であると俺に直感させた。


『っ!!!!!』


 俺は間島二号の襟を両手で掴むと壁に叩きつけた。


『何でだ……、何でこんな事をした!!??』


 激昂し目を血走らせ、まくし立てるように叫ぶ。


『それは……私から話しましょう』

『……お前もか、間島ぁ……!!』


 声を出したのは二号ではなく間島……一号だった。


 殺す、殺す、殺す殺す殺す殺す殺してやる……!!!!


 一瞬で殺意が満ち満ちるのを実感した俺は一号を睨み付ける。

 だが……、ここで俺は我に返る。

 今の俺じゃあこいつら二人を殺せない。

 俺には二人を素手で殺せる程戦闘に長けていないし武器を使うにしてもその武器も今持ち合わせていない。


 だから今俺がここですべきなのは……情報収集だ。


 物事の全ては情報から始まる、情報だ。情報が要る。

 俺がどんな行動を起こそうがまずは、こいつらの話を聞く必要がある。


 そのために落ち着け、冷静になれ。憎むなと言う訳ではない、怒るなと言う訳じゃない。

 ただ堪え切れない憎悪を、憤怒を、全部体に押し留めろ……!!


 機をうかがいこいつらは必ず殺す、必ず報いを受けさせる!!そのために今は動くな俺……!!

 軽く鼻で深呼吸をした俺は二号の襟から手を放すと一号の方を見た。 


『一つ、条件がある』


 重苦しく俺は口を動かす。


『何でしょうか?』

『質問形式だ。俺が質問した事だけに答えろ、余計な事を喋るな』


 そうしないと、すぐにでもこいつらにまた飛び掛かってしまいそうだ。


『承知しました』


 一号が肯定の返事をした所で俺は質問を開始した。

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