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男の過去 その5

 何だこれ……何だこれ何だこれ何だよこれぇ!!!!


 冷静に状況とこの事態に陥った原因を考えようとした。

 だが血だらけの流華が視界に入り思考が纏まらない。


『流華……!! 流華ぁ!! 何でこんな事に、間島二号さんは何処に行ったんだ!?』

『……ぁ』

『っ!? 流華!!』


 俺の呼びかけに反応したのか、流華は口から血を吹き出しながら微かに息を上げた。


『どうしました!?』


 叫び声に反応したのは流華だけではない、三人の使用人が流華と俺の部屋へ入って来た。


『……っ、流華様!?一真様何を……!!』

『は、早く医者を呼んでくれ!! 流華を助けてくれぇ!!!!』


 彼女を抱えながら俺は叫んだ。


『まだ……まだ息があるんだ!!! 早く、早く医者に……早く!!!!』


 流華はまだ呼吸をしていた。非常に微弱で、いつそれが途切れるかは時間の問題だが、ともかくまだ生きている。


 今は一刻も早く流華を治療出来る場所へ運ばないと……!!


 原因の究明は今はどうでもいい、目の前の最愛の人を助けなければ。

 幸いここは日本七代名家の一つである斎条家の邸宅だ。当然宅内であっても病院顔負けの治療設備が整っている。そこまでの距離はそう遠くないのだ。


『これは一体どういう事だい?』

『っ義父さん!!』


 三人の使用人に次いで部屋へ入って来たのは斎条龍路だ。


『流華が刺されたんです! ですが今は犯人捜しよりも流華を治療施設に運ばないと!』


 俺は流華を抱え上げると部屋の扉に近づく。


『いや、君にはここから出てもらう訳にはいかない』

『は……?』


 気付けば三人の使用人は俺を囲むような位置取りをしていた。 


『義父さん……何を?』

『悪いが……流華を殺した君にはここで拘束されてもらうよ』


 何だ……? 目の前の男は何を言っている……?


『俺が流華を殺す? ……そんな訳ないだろ!!』


 あまりの荒唐無稽な龍路の言葉に、語調を変え俺は怒鳴りつけた。


『そうは言うけどね、あるじゃないか。君の足元に証拠が』

『証拠……?』


 そう言って俺は足元を見る、そこには流華を指したと思われる一本のナイフがあった。


『こ、これは流華を刺した犯人が置いていったものだ!!俺のじゃない!!』

『見苦しい言い訳だねぇ。ここは流華と君の部屋だ、この部屋の前の通路には常に使用人が居るが誰も部屋には入れない……入れるとするならば、部屋の主の許可を得た者か或いは……部屋の住人だけだ。そのナイフを調べてみればきっと分かるよ……きっと、君の指紋が検出される』

『……あ』


 ここに来てようやく俺は理解した。


 龍路が……俺の義父が何をしようとしているのか。

 この男は……この野郎は……。


『嵌めたのか……てめぇ!!!』


 俺を殺人犯にする気だ。

 何故そんな事をするのか、決まっている。この男は・・・いやこの家は、流華と俺を排除したかったのだ。

 俺を流華の殺人犯に仕立て上げる、恐らく床の包丁には俺の指紋が付いてるんだろう。

 そうして俺と流華を同時に斎条家から切り離す。

 邪魔なものを全て排除する、それがこいつの目的だ。


『嵌めただなんて失礼だなぁ。僕はただ目の前から推察出来る状況を受け入れて前向きに対処しようとしているだけだよ』


 嘘だ。


 ならそのふざけた態度は何だ、どこから「前向き」なんて言葉が出てくる?

 それはもう……俺達が忌むべき存在と見ていなければ出来ない事だ。流華と俺を家族と思っているなら出来るはずの無い所業だ。

 だが、そんな事は今はどうでも良かった。

 早く流華を医者の元へ届けなければ。時は一刻を争う、この出血量だと一秒の遅れが何か後遺症に繋がる……、最悪……死んでしまう……!!!


『どけ、お前ら』


 俺を囲む三人を睨み付けた。余裕なんてものは無い、必死だ。

 血走った目で俺はドスの利かせた声を放つ。愛する人の命が掛かっているから出来た事だ。

 瑠々は間島二号さんが預かっていると聞いた。なら大丈夫、俺は今流華を助ける事だけに頭を回転させろ……!!


『うっ……』


 俺の放った圧に怯んだのか、使用人の三人は少したじろいだ。


『おいおい何を怖気づいているんだい君たち?幾ら彼が怖い顔をしていようが関係ない。鍛えている君たち三人なら楽に無力化出来る。そうだろ? ……それでも出来ないって言うんなら……ね?』


 龍路もまた三人の使用人に圧を与えた。

 内側と外側から圧の板挟みになる使用人たち、彼らの呼吸が多少乱れていく。

 だが圧は外側からの方が強かった。


『……!!!』

『てめぇら……!!』


 三人が一斉に俺へと襲い掛かって来る。覚悟を決めた、というより強迫観念から動いているようだった。


『残念だったね、君はここまでだ。瑠々を医者の元へ行かせはしない……君たち二人まとめて警察へ行くんだよぉ!!』

『斎条、龍路ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!』


 涙を流しながら叫んだ。怒りから、無力さから、悲しさから、憎しみから。

 その時。


『っと』


 天井からそんな声と共に一つの黒い人影が姿を現した。


『なっ……!?』


 降ってきたその背中を見て驚愕した。


『ま、間島さん!?』


 俺の秘書兼護衛を務めている間島さんが現れたのだ。


『一真様、ご無事ですか?』

『お、俺は大丈夫だ。だ、だけど流華が……!!』


 血だらけの流華を間島さんは視界に入れると再び俺に背中を見せるように向き直った。


『時間が有りません。ここを脱出します』


 そう言った直後、間島さんが動いた。

 俺を囲っていた三人の使用人をあっという間に制圧、無力化し俺を立ち上がらせた。


『一号か、何故そこに居る?』

『私は最初から一真様の護衛兼秘書です。あなたの側に付いた覚えはありません』


 表情を変える事無く間島さんは答える。


『一真様、言いたい事は色々あると思いますが。今は分かりますね?』

『あぁ』


 俺は即答した。そうだ、先程言った通り時間が無い。一刻も早く流華を医療施設へ運ばねばならない。つまりこの屋敷をさっさと脱出しなければいけないんだ。


『では、目を瞑ってください』


 間島さんはそう言ってポケットから何かを床へ放り出した。

 放たれたソレは忽ち光を放ち部屋中を包み込んだ。


 閃光弾!?


 俺は投げられた物の正体が判明し間島さんの指示の意味が理解出来た。

 一時的に失明状態にさせてしまう程の光が発される危険物、目を瞑っていなければ


『がああぁぁぁぁぁ!!!』

 俺も龍路ヤツのように声を上げていただろう。


『今です』


 間島さんは部屋の壁を蹴り壊すと俺から流華を受け取った。

 この判断は間違っていない、俺より明らかに間島さんの方が膂力に長けているしあまり流華を揺らすことなく運べる。


『走って下さい』


 俺は間島さんに導かれるように走り出した。

 廊下を駆け、階段を何段も飛ばし下り、屋敷の外を目指す。

 目的は単純、だが一つ問題がある。

 俺は走りながら間島さんに聞いた。


『間島さん、どうやって脱出するんですか!?』

 もうここは俺の家では無い、敵の巣窟、俺と流華、間島さん以外の人間は皆龍路の使用人であり人数は圧倒的にあちらに分があった。

 どのルートを通っても最終的に辿り着くのは出入口、そこには大量の敵が居るはずだ。

 間島さんが幾ら強くても流華を抱えている今、かなり動きが制限されている。

 だが俺が疑問を抱いている間に間島さんはどうやら目的の場所まで着いたらしい。


『ここから飛び降ります。間島様は外壁の配管を伝って降りて下さい』

『なるほど……』


 これなら出入り口から出ずに屋敷の外に、裏の森から敷地外へ出れる。


『部屋を出てから約四十五秒、すぐに家の人間がここまで網を巡らせます。急ぎましょう』


 間島さんはそう言った直後、二階から地面へと音も無く飛び降りた。

 俺もすぐさま窓から配管に手を掛けるとなるべくスピードを付けて降りる。通常の二階と違い高さがあるがそんなものに怖さを感じている余裕なんて無い、何の躊躇いもなく行動に移した。

 地面に足を付けた俺と間島さんは森に足を踏み入れ草木を踏むことによって生じる微かな通過音を立てながら走り続ける。


『はぁ……はぁ!!』


 必死に足を動かし続けた。

 景色が変わるまで休む事無く足を酷使した。 

 間島さんは流華を抱えているにも関わらず足場の悪い地面を息も切らさずに駆け抜けている。

 一刻も早く森を出るべく走る俺達。

 そうして遂に、俺達は辿り着いた。


『一真様、一号。こっちです。瑠々様も無事保護出来ています』


 森を抜けた直後、前方を見るとそこには間島二号さんが立っていた。


『あぁ……分かっている。が、その前に』


 間島さんは自分のズボンを引き裂くとそれを流華の腹部の負傷箇所へ巻いていく。


『これでまだ保つでしょう。さぁ』


 そして後部座席のドアを開けるとそこに流華を寝かせた。後部座席は広く椅子もU字型になって繋がっているため流華のスペースを広くとることが出来る。


『一真様は後ろに座って下さい。そちらの方が今は良いでしょう』 

『はい……ありがとうございます』


 俺は流華と同じ後部座席へ座ると近くで彼女の手を握る。


『私は助手席で瑠々様を見ています。二号、運転を頼む』

『あぁ』


 運転席に座る間島二号さんがエンジンを掛け、車が発進した。


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