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こうしてバカ共は脱獄する

「本気かよ武人」

「マジもマジだぜ栄治、俺は瑠々を助けに行く」

「ったくお前勘弁してくれよ。ほらお前らからも何か言ってやれよ!」


 頑なに自分の意思を示す武人に呆れながら栄治は他の三人を見た。


「武人には、困った。いつもいつも抜け出せないところまで、俺を巻き込む」


 相馬はそう言ってと笑うと


「幾ら情報を遮断しても、いずれ警察に気付かれる。警察の動きに奴らが気付いたら御代嬢様がどうなるか分からない……今ここで、目的を躊躇せず迅速に行動出来る俺たちが動くしかない」


 覚悟を決めた顔で栄治を見た。


「栄治が言うのなら間違いないんだろう。ここで動かなければ瑠々様の命が危ない。俺はボディーガードの卵として、一人の人間として、瑠々様を助けたい。例え自分の首をどれ程苦しめる事になろうとも」


 優佳に瞳には一点の曇りも無くなっていた。


「はぁ……まぁここで行かないとお嬢様に後で何されるか分からないからなぁ」


 軽くため息を吐いた昌義も乗り気を見せた。


「お、お前らなぁ……」


 全員のとんでもない発言に事なかれ主義の栄治も思わず頭を抱えた。

 その発言の裏に隠されている真意を、彼自身が察したからだ。

 栄治の目を真っすぐに見る武人、次いで彼はこう口にした。


「頼む、栄治」


 いくら武人達といえど彼らだけで留置所、警察署から抜け出すのは至難の業である。

 そう、警察の助力でもなければ隠密に抜け出すのは不可能。

 真意とは、栄治にここから抜け出す手引きをしてほしいという意味合いでの事だった。


「ンな事したら俺の首が一瞬で飛ぶっての。出来る訳ねぇだろ」


 栄治の返答はもっともなものだった。

 いくら武人達が友人関係であろうと栄治にも踏み込めない一線が、出来ない事がある。

 栄治のような人間が公務員の職に就けているのは奇跡と呼べるものだ。まがりなりにもそこそこの収入を得られている今の状況を破棄するような危険な可能性を孕む選択をするほど頭がおかしくはない。

 大人にはするべき事が、考えなければいけない事がたくさんある。

 世間一般に見て栄治はロクデナシの部類に入るがそれでもれっきとした大人である。

 感情だけで動けない、その期間は彼にとってとうに過ぎている。

 武人は栄治を動かす力を持ち合わせていない。何故なら彼は栄治に返せるものが何も無いからだ。

 だが、そんな事は武人にとって動かない理由にはならない。

 見返りもいらない。先の事など今はどうでもいい。

 損得勘定ではない。ただ純粋に、瑠々を助けたいという思いだけを胸に今の武人達は動こうとしている。

 余計な制約など今はどうでもいい。

 そんな武人だから似たような優佳達が動く。

 今この場に居るボディーガードの卵は、どうしようもないガキ共なのだ。

 そんなガキが説得する方法など愚直に、真剣に相手に伝えるしかない。


「頼む」


 他には何も言わない。

 返せるものが何もないから。

 その言葉の前にも後にも何も付け加えるものが無い。

 一つ何かあるとするならば、傲慢で相手を危険にさらすだけの頼みにも関わらず、武人は少し和らいだ表情で笑っていた事だった。

 この状況でする表情ではない。

 だが、栄治は知っていた。

 いつも馬鹿笑いをしている武人は滅多にこんな表情を作らない。友人にこの表情を作る時、それは決まって一歩も譲れない時であると。

 そしてその顔を見た時、自分が頼みを断れない事に。 

 自分が乗せられてしまう事に。

 真っ直ぐなその瞳に感化されてしまう事に。


「……貸しは出世払いで返せよ」


 言っちまった……。


 栄治は自分の放った言葉に対しそう思った。

 だが、そこには不思議と後悔という感情は無かった。



「代わるぜ監視、交代だ」


 留置所内を監視する役割を持つ監視室、そこで見張りをしている後輩に栄治は言った。


「せ、先輩。ですが自分の職務を怠るわけには……」

「いーんだよ、そんな根詰めようとしないで。すこーし肩の力抜くくらいがちょーどいいんだ。お前最近無理やり残業させられてるだろ。こういう時くらい『良い』上司を頼れって」

「で、ですが……」


 栄治の言葉に後輩は渋るようになかなか動こうとしなかった。


「ったく本当に固いなお前。先輩の好意には喜んで従っとけって。ほら、これで何か食って来い。まだ飯食ってないだろ?」


 栄治はそう言って一万円札をぴらぴらと後輩に見せる。


「わ、分かりました。行かせていただきます」


 後輩は万札を受け取った。


「そうそうそれでいい……あっ、釣りは後で返してくれ」

「あっはい」


 そこはきっちりしてるんだな、と後輩は心の中でツッコんだ。


「よーっし分かったら行った行った」


 そう言って栄治は後輩を半ば強引に部屋から追い出す。


『いいぞお前ら』


 耳に付けた小型無線機で栄治は牢に居る四人に連絡を入れた。この無線機は相馬が持ち物検査を受けた後もなお隠し持っていたものだ。相馬曰く「俺から全ての所持品を取り上げる事は妹でも不可能だ』との事。何故妹なのかは不明である。


『最初は俺からか』


 昌義はそう言うと天井に向かいジャンプをして天井の通気口の柵に手を掛けた。


『っと意外と簡単に外れたな』

『上る順番は、昌義、俺、優佳、最後が武人だ』


 各々の身体能力や体重を加味して相馬は上へ上がる順番を決めて指示をする。

 この牢を通っているダクトは比較的大きく人がしゃがんで膝を突いてもギリギリ大丈夫な大きさなので上に上がり下にいる者が上へ上がる手助けが可能なのだ。

 元々このダクトを通って外へ出るという案は栄治のものではなく相馬のものだった。

 かつてこの警察署のデータベースに侵入し内部の設計構造、通気口がどう繋がっているかをを把握しているからこそ出来た計画だ。

 だがこれだけでは隠密に脱出は容易ではない。監視室の人間をなんとかしなければ結局全てが水の泡、そこで栄治の出番だ。昔は留置所の入り口と監視室に計二人の人間を配置していたが近年の警察官の人数不足に監視室内のシステムの向上も相まって配置されている人間は監視室内の人間だけになっていた。それが功を奏し栄治一人で対処する事を可能にしたのだ。


『よし、昇れた。次は優佳だ』

『あぁ』


 優佳は武人に肩車をされ上昇しダクトの入り口に手を掛けた。相馬の時も念のために武人が同様の行動に出た。二人の身体能力であれば武人の補助など必要は無いのだが念のための処置である。


『よし、これで』


 優佳は天井に手を掛けダクト内に侵入した。そして最後に


『っと』


 武人が軽々と跳躍し、こうして収監されていた全員が一時的に牢屋の中から消えた。

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