拘置所にバカ四人
開浜東警察署内留置所 十時十八分
「あーーーー暇だ。俺らこれからどうなるんだろうな優佳」
「どうなるもなにも刑務所に移送されて終わりだ」
淡々と優佳は答えた。
「やっぱり、武人と居るとロクな事が無い」
武人、優佳、相馬の三人は警察に連行され現在留置所に放り込まれていた。
三人は同じ牢に入れられ全員牢に手をかけながら牢の向こう側を見て話を展開している。
「……し、しりとりでもするか!」
「「……」」
「はい、すみません……」
全員が先ほど言ったように牢の向こうを見ているので表情は横顔でしか見えないが優佳と相馬の沈黙が何を指しているか即座に理解した武人は即座に謝った。
「じゃあ、『ご』で。武人から」
「あっ乗ってくれるのね」
相馬の返事に武人は驚きつつも『ご』で始まる言葉を考えた。
「えーーっと……ゴルゴ」
「「何でだぁ!?」」
武人の言った言葉に優佳と相馬の二人は堪らず叫んだ。
「いや何が!?」
二人の叫んだ意味が理解出来ない武人は驚く。
「何で『ご』で始まって『ご』で始まるものを言うんだ!」
「最初にそれは、しりとりの意味がない……!」
「いや知るかぁ!!てか相馬もいきなり『ご』からとか始めんじゃねぇよ!!」
二人の指摘の予想以上のくだらなさに武人は大声を上げた。
「せっかく乗ってやったのにその体たらくは困るな武人」
「だから、武人は武人」
「上等だ表出ろやお前らぁ!!さっき無言だったからちょっとすまねぇってなってた俺の気持ちを返しやがれ!!」
三人の会話が激化を増した最中、会話を中断させるように鈍い鉄の音がした。数メートル先にある留置室の出入り口を担う檻の開閉音である。
「おっ、俺たちの仲間が来たか」
「先に入所入りした先輩として、いびってやる」
「先入りして十分くらいしか変わらないだろ」
先程の言い合いはどこへやら、武人と相馬は標的を変え優佳は少しズレた物言いをする。
そして警官と彼が拘束した被疑者が武人達の牢屋の前に姿を見せた。
「数十分ぶりだな」
「おーおー、遂にぶち込まれたかバカ共」
入ってきたのは知り合いの警官である栄治と彼に拘束されている昌義だった。
「何だ栄治が昌義捕まえたのか」
「いや、捕まえたっていうか……」
栄治は歯切れ悪そうに昌義を見ると
「お嬢様が俺の事を差し出した」
「「あぁ……」」
あのお嬢様ならやるな、すぐそう納得した武人と相馬は昌義に同情の声を漏らした。
「まぁ、俺たちだけ捕まってお前が捕まらないなんて理不尽だしな」
「世の理、俺達運命共同体」
「お前ら友達としてそりゃねぇだろ!?」
武人と相馬は先程の同情は何処かへやったかと思えば昌義にそう笑顔で言うと言われた本人は堪らず叫んだ。
「んだとぉ?友達やってるだけまだマシだと思え!!」
「俺たちが、今まで芳澤嬢様どれだけ酷い目に遭わされたか……」
「てめ!?今回はお前らが頼んできたんだろぉ!?自分達の事棚に上げやがって!!」
「やめろお前ら!その事で今更言い合った所で意味無いだろ!!」
三人の醜い言い争いが始まる事を察した優佳は先程とは打って変わってそれには乗らず仲裁に入った。
その直後である。
怒り気味の昌義が少し激しく動くとポケットから出た物が音を立てて床に落ちた。
「ん?昌義何だそれ」
栄治が床に落ちたそれを指摘する。
「それ、御代嬢様の場所が分かるGPSレーダー。いざという時のために発信機を付けてたからそれを補足するための端末」
端末を渡した張本人である相馬が答えた。
「えっと……ん?おかしくないかこれ」
端末を拾い上げた昌義はマップに表示されている現在地を見て疑問を抱き相馬に画面を見せた。
「……何だ、この場所」
画面を見た相馬も昌義と似たような感想を抱いた。
「変って何がだよ。今頃瑠々は家に帰ってるから家って出てんだろ?」
「場所は、北開浜湾第五倉庫を示してる」
「はぁ!?全然ちげぇじゃねぇかよ」
「一体どういう事だ相馬!!
「発信機が、そこにあるっていう事」
優佳の問いに相馬は淡々と答えた。
「違う俺が言いたい事はそれが何故そんな場所を示しているかって事だ!!」
「考えられる可能性として、一番あるのは発信機を付けたままの御代嬢様がそこに居るという可能性」
「そりゃあつまり、俺達とは別の……本物の誘拐犯が瑠々を攫ったってことかよ」
「そう、考えるのが自然」
武人の的を射た答えに相馬は同意した。
大方予想できた返答だったが突き付けられた事で一同の雰囲気が重くなった。
「で、でもよ。瑠々のボディガードとかいんだろ。瑠々が帰って来なかったら大騒ぎなんじゃねぇか?」
「それもそうだな。一体どうしたんだ。まさか全員寝てる訳でもないだろう」
「そうだよなぁ……あ」
言われて武人は思い出した。遊園地で瑠々のボディガードと思しき人物達と戦った事を。
もし、あの場に居たボディガードが御代家に所属するボディガード全員で、未だに意識を失っているとしたら。
そう考えた次の瞬間。
「あぁ……やっべ」
武人は冷や汗が止まらなかった。
「お、おいどうした武人?」
顔色が豹変した事に驚いた優佳は武人に問う。
「な、ななななな何でもねえぇよ!?そ、それよりもほら!!何か他に瑠々を助ける方法考えようぜ!!なっ!?」
「お、おうそうだな」
優佳に顔を近づけ、焦りの表情を見せる武人。
「警察に言うのはどうだ。幸い今ここは警察官がこいつ含め沢山いる」
昌義が栄治を見ながら言う。
「そもそも、御代家の方が異変を感じて警察に連絡を入れてるはず。だけどそれが無いって事は警察に連絡が出来ない状況にあるって事。恐らく警察を呼んだら御代嬢様を殺すとでも言われて誘拐犯に動きを縛られてる」
質問に答えながらも相馬は考察を交えた事実をこの場に居る全員に告げていく。
「今警察に言っても混乱を招くだけか」
「下手に動くのは、駄目。一挙手一投足が御代嬢様の生死を分ける」
沈黙。
誰もが言葉を発する事をやめた。自分達は収容されており下手な行動は瑠々の命に関わる。それを分かっているから優佳も、相馬も、昌義も、普段バカを起こす彼らも動けないのだ。こんな状況で誰が行動を起こせるだろうか。こんな局面で誰が後先考えず行動出来るだろうか。
もしそんな事が出来る人間が居たとしたら、踏み出せない彼らに発破を掛けられるとし
たらそれは……、
「行くぞ。瑠々を助けに」
覇原武人《度を越したバカ》だけだ。
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