逃走劇 その2
「どうしますか撃って動きを止めますか?」
警官の一人が並走している上司にそう提案すると
「馬鹿か!あの子に当たったらどうする!?」
「す、すみません!!」
部下はすぐに謝罪した。
「確かにそれが今奴を止める最も効果的な方法かもしれない……、だが安心しろ。既に園内に居る部下に連絡は入れてある。俺達とで奴を挟み撃ちだ。それにしても……」
何だアイツの体力は!幾ら抱えているのが小学生とは言えども抱えたままあの速度を出し続けるなど馬鹿げてる、奴との距離が一向に縮まらない……!!
男は武人の背中を見ながらそんな思いを巡らせた。
だがそんな事は関係ない、俺たちの使命はあの子を保護して目の前の奴に手錠を掛ける事だ・・・!!
「来たか!!」
上司の男は堪らず声を上げる。武人たちの目の前に先程連絡をした別部隊が現れたからだ。これで予定通り挟み撃ちにして、瑠々を確保する事が出来る。
現在左右には逃げ道となる道は無いため武人は前方を走り抜けるか方向転換をして後方へと走るしかない。
しかしそのどちらを取ったところで挟み撃ちを回避する事は不可避、武人は瑠々を抱えているため派手な動きは出来ない。
この時、武人を挟む形にいる警官達は間違いなく任務の達成を確信していた。確かにこのまま何事も起きなければ彼らの思惑通りになるだろう。
そう、何も起きなければ。
ブロロロロロロロ!!!
その音について、最初は男たちも幻聴かと思っていた、しかしそんな考えはすぐに打壊されることになる。
武人の前方に居る集団、後方に居る集団は後ろを見た。そこには到底想像出来ない光景が迫ってきていた。
「うおわぁっ!!」
それぞれの集団の後方を走る人間から次々とそんな声が聞こえる。
「何だっ!?」
「班長!!後ろからマスクを被っている奴らが……っ!!!」
言われて上司の男は接近を続ける異常な光景を目にした。
「何だあれは……!!」
そこには全速力で向かっているゴーカートがあった。何にぶつかる事も考えないかのような直進走行ぶりに男たちは思わず横へと避けてしまっている。
前方と後方から来たそれらは警官の集団を突破し武人の元へ辿り着いた。
「来たわよ武人!」
前方から来たゴーカートには興花が。
「救世主、相馬様の登場だ」
「武人瑠々様は無事だろうな!?」
後方から来たゴーカートには相馬と優佳が乗っていた。
「待ってたぜお前らぁ!!」
「いいから乗れ時間がないぞ!」
武人の感激の言葉を発するが確かにそんな時間は無い、一刻も早く武人と瑠々もこれに乗りこの場を脱しなければならないのだから。
「よっし乗るぜ!」
武人は瑠々を抱えたままそう言うと相馬のゴーカートに飛び乗り込んだ。
「レッツ、ゴー」
再びアクセルを踏み相馬の運転するゴーカートは動き始めた。
『行かせるかぁ!!』
しかしボディーガードの男たちがそれを許すはずがない。全員が走り出し武人の乗るゴーカートへと接近してきた。
「よいしょぉ!!」
しかしそれは興花の運転するゴーカートによって遮られた。
「あれ興花?昌義どした!!」
「邪魔だったから突き落としたわ!!」
「何してんのお前!?」
「まぁまぁそんな事よりも……こんなに楽しく自由に運転出来るなんて初めてだもの、やめないわよ!!だからここは任せて!!」
「おっしゃあ任せたぜ!!」
こうして、興花の暴走運転によりボディガード達は翻弄され、武人たちの乗るゴーカートはなんとか混乱状態にあったその場を抜け出す事に成功した。
◇
「それにしてすごいなこのカート、四人も乗ってるのに全然スピードが落ちない」
相馬の運転するゴーカートに乗り入場口を目指す途中に瑠々がそんな事を言った。
「このカート、というかゴーカートのアトラクションだけ芳澤嬢が自ら監修したそうです。コースは勿論、カートも。で、カートに至っては骨組みもパーツも全部特別製でF1カーと張り合えるレベルらしい」
「何というか、すごいな芳澤さんは」
「その分、色々と残念ですけどね」
相馬は皮肉交じりに言った。
「まぁ何はともあれ興花達のおかげで助かったぜ。こっからどうすんだ優佳?」
「俺に聞くな。こういうのは相馬だろ」
「一先ず、ここから出たらある程度の所でカートを捨てる。その後は昌義達と合流する、場所は俺たちが決めればいいだろ」
「というか芳澤さんは大丈夫なのか?」
「「「大丈夫だな(ですね)」」」
瑠々の問いに三人は即答した。
あまりに早い言い切りっぷりに流石の瑠々も少し驚いた。
「なので、俺たちは気にせずさっさとここを出ます。っと、ようやく出口だ」
「ようやく出口か!」
「色々と長かったな」
ようやく外に出れるという事実に相馬、武人、優佳の三人は少なからず嬉しさが声に滲
み出ていた。
今彼らの目には目の前の門が光り輝いて見えている。
その光に魅了されるようにその光に飲まれていった。
そして
『……え?』
光を抜けたその先には、大量のポリスが待ち構えていた。
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