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逃走劇 その1

 話し合いから約二分後、結局のところバレないように一刻も早く施設を出なければならないという結論に一同は至った。

 そこで意外だったのは全く当てにしてなかったところから助け船が出たことだった。というのも興花が重役などの人間が視察目的で使用する通路を知っていたからだ。

 そこは係員が使用する通路とは別であるため従業員に見つかる事もないらしい。

 そこを警備する人間にも既に話は通しており現在は出払わせているらしくかなり用意が良い。

 正直なところ瑠々を匿う事を了承してもらった時点で奇跡だと思っていた相馬は明日世界が消滅するんじゃないかとすら思ってしまっていた。


「流石興花様です。抜け目がない」


 歩きながら優佳はそう賛辞を贈る。


「気にしなくていいわ!……っとここよ」


 先頭を歩く興花がそう言うと目の前に扉があった。


「ここを通れば入場口の丁度反対側に出られるわ!」

「うっしじゃあさっさと行くか。って開けたら追ってが居たりしてな」


 武人は笑いながら言うと興花の前へと出て我先に扉の取っ手に手を掛けた。


「ははは、居たらすぐ友達になって見逃してもらえよ武人」

「任せとけって」

 相馬の冗談に武人は便乗した。二人とも通常の通路ではない場所を通る事、そしてそれを捻くれた快楽主義者である興花がそれを手引きしてくれた事からかなり気が緩んでいたからこそである。

 安堵の気持ちで武人は取っ手をひねると扉を勢いよく開いた。


『……』


 一同はその先に広がる光景に瞬時に真顔になった。

 そしてそれは。


『……』


 扉の向こう側に警官達も同様であった。


「でやあぁ!!??」


 謎の状況に武人は変な声を上げながら目の前の人の一人を殴り飛ばした。

 謎の状況、といっても理解出来ないものではない。

 興花の手配により本来なら誰も存在しないはずのルート、そこに人が居るという事はつまり。


「何で居るんだよ!!」


 十中八九瑠々を保護し目的に来た方々という事になる。


「おわっ急に持つな武人」


 武人はすぐさま踵を返しすと瑠々を再び腕に抱えて走り出した。

 当然、他の優佳たちも武人のように状況を理解し即座に後ろを振り返り走り出した。


「おいどうした武人、友達になるんじゃなかったのか!!」

「うるせぇだったらてめぇがなって来い!!てかそのマスク早く取れや俺だけ顔バレて不公平だろうが!!!」


 走りながら武人は片手で相馬のマスクを、相馬は武人の皮膚を互いに引っ張り合う。


「そんな事してる場合じゃない追ってきている!」


 優佳の言葉に武人と相馬は我に返るとすぐさま正面を向き直した。


「もう入場口から出るしか道はねぇぞ!」


 同じように走りながら昌義は言った。


「そうね!! でも追いつかれないかしら?」


 興花もまたボディーガードとして日々鍛えている男たちの脚力に並ぶ脚力を見せつけ並走していた。


「ここから入場口までの最短ルートは頭に入ってる、だが見つかった以上それを行くのは難しい。必ず相手側もそれを予測して先回りを図る」


 だが、それでも追っ手を出し抜いて先に入場口へ辿り着かなければ捕まってしまう。

 最悪な状況に相馬は顔を歪ませた。

 そしてこの時点でどう策を講じたところで、この中の誰かが犠牲になるであろう事をこの場に居る男たちは察した。


「おい!どうすりゃいい相馬!!」


 武人はそう叫びながら相馬を見た。

 誰かが損する役割になる事は武人でも分かっている、そもそも武人は既に顔が割れている。

 ここで逃げ切れたとしても武人が捕まるのは時間の問題だ。だがそれでも武人は諦めてなかった。

 自分が決めた事を、やり遂げると言った事をやり切る気でいるのだ。例え自分がその損する役割に就くことになったとしても構わないと、武人は言っているのだ。


 はぁ、そういえば俺も決めたんだったな……このバカを手伝うって。


 相馬の歪んでいた表情は口角を吊り上げ皮肉の混じった笑顔に変化した。


「武人、この状況で後ろの奴らを出し抜くには何か突飛な……要は想像の上をいくよなデカい事をして奴らの動きを統率の出来ないものにして、そこを突いて御代嬢様をこの中の誰かが芳澤嬢と一緒に連れ出す」

「デカい事か。つっても何すりゃいいんだ」


 武人は高速で周囲を見渡す。とそこで遠目に一つのアトラクションが目に入った。


「おい相馬!あれなら行けるか!?」


 武人は相馬の視線を自分の見つけたものに誘導した。


「……、いいな」


 武人が何を言いたいのかそれを見た相馬はすぐに理解し肯定の言葉を発した。


「あれなら、攪乱役ももしかすると逃げ切れるかもしれない……とりあえず後ろの奴らを撒く、優佳、昌義は芳澤嬢と一緒に、場所は分かったな?」


 相馬の問いに優佳と昌義の二人は頷いた。何も言わずともこの二人も武人の視線から内容を理解したのだ。


「よっしゃ解散!!」


 武人の声に一つの集団は一気に三つへ分裂し散開した。


 ……。


「ってよく考えたら俺しか追って来ねぇじゃかこいつらぁ!!」


 追っ手の全員の目的は瑠々の保護である。当然、瑠々を現在進行形で抱えている武人を追うに決まっていた。


『観念しろ誘拐犯!!!』

「いやああぁぁぁぁぁぁ!!!」


 武人は涙を流しながら園内を爆走した。


「ふふっ、あはははは!!」


 するとまるで堪えきれなくなったかのように瑠々が笑い出した。


「何笑ってんだよ!!」

「武人。私今すごく楽しい!こんな気持ちになったのは久しぶりだ!!」


 たった数時間、だがそんな短時間でも武人たちは瑠々を飽きさせない。色々な感情を抱かせ色々な体験をさせてしまう。何もかもが滅茶苦茶だが、全てが新鮮。瑠々はそれに感動した。


「そりゃあ良かったな!!ていうか誰か俺を助けてくださぁぁい!!」

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