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遊園地で遊ぶ奴ら

 十五分後

 

「ふぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 武人は大声を上げながら絶叫マシンの定番、ジェットコースターを堪能していた。


「きゃああぁぁぁぁ!!!!」


 武人の後ろの座席には同じように手を上げてジェットコースターの楽しみポイントの一つ、下り坂の急降下を全力で楽しんでいる興花の姿があった。

「……」


 武人の隣に座っている瑠々は風圧を顔に受けて頬がプルプルと揺れており声を出せないでいた。


「やっぱり、こうなった」

「全く、アトラクションに乗る前までは仕事人のように取り繕っていたのに一回乗っただけですぐに化けの皮が剥がれたな」


 相馬と優佳の二人はアトラクションの出口付近で待機していた。

 二人がアトラクションに乗らず周囲を確認、興花の正式なボディーガードの昌義は興花の隣席でジェットコースターに乗っているためここには不在だ。昌義は乗らないと言っていたが護衛対象であるお嬢様に命令されては従うしかない。

 被り物をしているので妙な視線を浴びていたが二人はそんな事を気にせず会話を続ける。


「相馬、捜査員は居たか?」

「現状、確認されてない。警察もこんな目立つ所に居るとは考えられてないと思う。敢えて堂々としている芳澤嬢様の行動が良い方向に働いている」

「そうか」


 ほっとしたように優佳は腕を組んだ。

 幾ら人数を投入すると言っても人海戦術を行う限り限界がある。

 取捨選択、人数を多く送る場所とそうでない場所。

 誘拐と銘打って捜索が行われている所で人の多い目立つ場所、特に遊園地などのテーマパークには大した人数、それどころか人すら送らないのかもしれない。


「ふぃー!風がちょー気持ちよかったぜ!!」


 優佳と相馬が会話を繰り返しているとそう大声を出した武人が出口から出てきた。


「大声を出すな!」

 声で視線を更に集めてしまった武人に優佳は持ち込みできなかった武人の被り物を勢いよく頭からかぶせた。


「ほれ」

「あぁ、お嬢様も御代様もどうぞ」


 相馬によって渡されたマスクを迅速に受け取った昌義はそれを更に迅速に興花と瑠々に渡した。


「いやぁあんなすげぇ乗り物があんだな。遊園地ナメてたぜ」

「楽しいでしょ武人?」

「おぉ!来て良かったぜ!!サンキュな興花!」


 態度は反転し、先程までの武人の姿はそこには既に無く、初めての遊園地を楽しんでいる武人の姿がそこにはあった。


「じゃあ次はあれ乗ろうぜあれ!」

「えぇ勿論!」


 そう言って武人と興花は走り出した。


「ちょ、お嬢様勝手に行かないで下さい!」


 ボディーガードである昌義もまた興花の背中を追って走り出した。


「俺たちも行きましょう御代様、この広い敷地内ではぐれるのは危険ですから」

「お、おう」


 武人たちの突発的な行動に目をパチクリさせていた瑠々は興花にそう諭され慌てて走り出した。


 メリーゴーランド

「おい昌義、興花。てめぇ俺の前ずっと走ってんじゃねぇよ!!てか何だこれ!?おい馬もっと早く走れ追いつけねぇじゃねぇか!!」

「バカこれはメリーゴーランドだ!!土台の上でぐるぐる回ってるだけだからお前は一生俺に追いつけねぇんだよ!!」


 とツッコむ昌義。


「あはははは!定番のアトラクションも楽しいわね!!」


 興花は変わらぬ笑顔のまま堪能している。

「くっそ瑠々そっちのソリみてえぇな奴と俺の馬交換しろ!やっぱ俺には動物は合わねぇみたいだ!」

「いや同じだろ」


 昌義に代わり瑠々がツッコんだ。


 お化け屋敷


「(びくっ)」

「お、何だよ怖ぇのか瑠々?」

「べ、別にそんな事、無い」

「にしてもこんなんでビビるのか、お前も変わってんな」

「だ、だから怖くないっ『ドゴッ』て・・・」

「怖いのは何されるか分からねぇからだ。だったら先にこっちがやっちまえばいい!」


 突然飛び出して来た生首を武人は殴り飛ばした。


「なるほど」

「勿論駄目ですよ御代様」


 思わず武人の言った事を真に受けた瑠々を昌義は冷静に諭した。


「ランランラーン♪ララララーン♪」

 興花は鼻歌を歌いながらぐんぐん前へと歩みを進めていく。道中幾度となく作り物や時には精巧な化粧を施されたお化け役の人間が興花を驚かせようとしたがその度に「すごいわね!どうやって作っているのかしら」などと言う始末である。


「芳澤さんは楽しいのか?」

「お嬢様は基本何でもああやって笑って楽しむんです」

「ある意味すげぇよなアイツ」


 昌義と武人の言葉を聞いて瑠々は改めて興花の破天荒さを思い知らされた。


 フリーフォール

 武人、瑠々、興花、昌義の四人がちょうど四人乗りの席へと座った後、それは垂直に上昇した。


「おおぉぉ!高い、高いぜ!!人がアレみてぇだ!!」


 ぐんぐんと上昇し上から見下ろせる景色に武人は感激していた。


「ゴミでしょ!」

「それだ!!」

「お嬢様……仮にも大企業の娘がその発言は些かどうかと……」


 武人達がそんなコント染みた会話をしていると遂に四人の座っている席は頂上まで来た。そして「ガコッ」と何かが外れたような音がしてコンマ数秒、武人達の視界は急に変動し下からの風圧に襲われた。


「ふぉおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「きゃああああぁぁあぁ!!!!!」


 純粋にアトラクションを楽しむ武人と興花。

「……」

「……っ!!」


 対照的に昌義は護衛対象である興花を守るという使命からみっともない声を発さず早くこのアトラクションが終わる事を祈っている。

 瑠々はこれも怖いのか目を強く瞑り安全装置であるベルトを終始握りしめていた。



 そんなこんなでその後も瑠々、昌義の二人が主に武人と瑠々に連れて行かれる形で数々のアトラクションに乗った。

 優佳と相馬はアトラクションの出入り口で周囲の警戒に務めていた。

 そしてそんなやり取りが続いて約一時間後の事である。


「……」


 瑠々が何とも言いたげな表情で静止していた。

 彼女の関係者か普段から親交のある者ならば瑠々の事が分かるのだろうが今この場に居る人間は全員が全員今日会ったばかりの初対面である。瑠々が何がしたいのか、何が言いたいのか分かるはずも無かった。


「どうしたんですか御代様?」


 優佳がそう聞くが瑠々は「何でもない」と言ってその場から動こうとしない。


「何も喋らないと分からないわよ瑠々?」


 興花はそう言って瑠々の口を開かせようとするが当の本人は頑なに口を閉じ何も喋ろうとしない。

 理由があるのだ……が、この場に居る男達は理由を聞いた優佳を含めその理由が既に分かっていた。


『『『トイレですね(だ絶対)(だな)』』』


 瑠々の足をもじもじとする動作、恥じらいなのか俯きがちに何か平静を保とうとする肩の動き。優佳、相馬、昌義の三人はそれらの情報から冷静に分析した。

 そして同時にその原因を分析する必要も無く解明していた。


『『『絶対芳澤様(芳澤嬢様)(お嬢様)のせいだ……』』』


 というのも理由がある。

 瑠々たちは遊園地内のアトラクションだけを堪能していた訳ではない。園内で他の事もしていた。

 具体的には売店で飲食物を買っていたのだ。

 売店がある度に瑠々は何かを買い、そしてそれらを興花に与えていた。

 被り物をしているため物を口に運ぶことは不可能であったのだがそんなものは被り物を外せばいいだけの話、興花は瑠々の被り物を電光のような速度で外し食べ物を食べさせ、飲み物をぐいぐいと飲ませ、そしてその一連の動作が終わるとまた電光のような速度で被り物を被せた。

 瑠々本人は興花に楽しんでもらいたい一環でしていた行動であったのだろうが興花本人にしてみればいい迷惑だろう。

 その場に居た訓練生の男たちは瑠々を止めようとしたが有無を言わさぬ勢い余る行動っ

ぷりに誰もが興花の動きを止める事が出来なかった。

 しかしただ一人、その男たちとは異なる行動をしていた男が居た。


「いやぁしっかしうめぇなここで売ってるモン」


 勿論武人だ。彼は興花の行動を止めずに自身も興花が購入した飲食物をご相伴に預かっていた。しかも被り物をうまく帽子のように頭に乗せているため顔が常時丸見えになっている。


「ふぅ……よし、俺ちとうんこ行ってくるわ」


 マイペースに物を食べ、飲み終えた武人はそう言うと優佳たち男性陣と瑠々、興花の女性陣に目をやる。

 すると武人はようやく自分以外の空気がおかしな事に気が付いた。

 何だ?と言わんばかりに首を傾げる武人。しかし瑠々を見た武人は何か分かった様ですぐに口を開いた。


「お?何だ瑠々お前もうんこ行きてぇのか?」


 武人の発言に男達は一斉に武人の方へ視線を注いだ。

 当然その視線は「言うんじゃねぇ馬鹿野郎!!」を示す視線に他ならない。


「何を言ってるんだ武人そんな訳ないだろう!!」

「武人、そんな訳が無い」

「行きたいのはお前だけだ!!」

「あ、成程瑠々はう「言わなくていいですお嬢様!!」」


 ……。


 武人を除く男達が必死で武人の発言を否定しようとするが興花の横槍気味な一言によっ

て場は悪い意味で鎮静化した。


「ち、違う……」


 顔を俯けて言う瑠々、表情は物理的に読み取れないが露出している両耳は真っ赤に染まっていた。


「ンだよ。うんこじゃねぇのかよ、足モジモジさせてるからうんこかと思ったぜ」


 全くもって不毛で生産性皆無の会話である。トイレに行く、もといお花を摘みに行きたい瑠々は限界状態であった。最早恥じらいやら何やらは何処かへやっても構わないところまで来ていた。

 一刻も早くこの場を切り上げて厠へと向かわなければ最悪の状況に陥る。

 刹那の時で考えた瑠々は先程とは打って変わって恥じらいを捨てた言葉を吐き捨てた。


「違う……うんこじゃないおしっこだ!!」

「「「……」」」


 瑠々の発した爆弾にも似た発言にその場に居た男たちは言葉を失いどういった表情を作ればいいのか分からないと言った表情で瑠々から目を逸らした。


「~~~~////ッ」

「おい待て一人で行くなって!」


 その場に居たたまれなくなりトイレを目指し駆け出した瑠々の背中を武人は追いかけた。

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