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不条理で滅茶苦茶なお嬢様

午後六時四十分


「うめぇ!!やっぱ優佳の作るメシはうめぇな」

「ん、家の給仕にも引けを取ってない。メイドに欲しい」

「瑠々様!?」


 瑠々の放った何気ない一言は優佳は目を見開いた。


「美味、やっぱり優佳の作る料理が一番美味」

「優佳の、って言う事は二人も料理が作れるのか?」


 相馬の言い方に引っ掛かった瑠々は相馬と武人にそう質問する。


「ノーです、俺は料理が作れません。武人は一応作れますが……」

「武人のは料理、と言ってもその前にサバイバルが付かないと駄目だからな。お前が出し

た料理で僕は初めてトカゲを食べたぞ武人」

「何だよ。俺がネタバラシするまで気付かなかった癖によ」

「それはトカゲの形をしていなかったからだ!」

「お前らが抵抗ないようにバラバラにして入れてやったんだろ!!俺の気遣いに少しは感謝しろよ!」

「気遣うならトカゲを料理に使うのをやめてほしかったなぁ!?」


 武人は育った環境から市販で売っている食材とあまり縁が無かった。

 それでも人は腹が減る、その時に武人が食べていたのは虫なのだ。

 最初は殺してただ腹に入れていただけだが何時しか味の変化を求めるようになり、虫や雑草を調理して食べるようになった。

 それにより武人の(サバイバル)料理スキルは非常に高くなっており何を使っているのか食べた人間が聞かなければ普通の美味い料理なのである。

 だが流石にそんなものをお嬢様に出すわけにはいかない。

 優佳が料理を引き受けたのはその理由も多少含まれていた。


「あっそういや話変わるけどよ。瑠々お前よく初っ端から家出なんてしようと思ったじゃ

ねぇか」

「初っ端……ってどういう意味だ?」


 武人の言葉の意味が良く分からなかった瑠々は首をかしげる。

「いや、何かお前頭そこそこ良さそうだからよ。もっと頭の良い方法?みてぇなの考えついたんじゃねぇかって思ってよ。言いたかねぇけど家出なんてバカのやる事だぜ」

「本当にお前には言われたくない事だな」

「完全、同意」

「うるせぇなお前ら!?」


 口々に武人に刺さる言葉に本人は堪らず声を上げた。


「頭の良い方法の意味があまり分からないけど、最初はもっと別の方法を使った……気持ちを手紙に書いて、お父さんに送ったりとか……」


 段々とゴニョゴニョ呟くように喋る瑠々。


「ほーん、じゃあこれは最終手段って訳か。ならなおさら成功させねぇとな」


 ニヤリと笑う武人に瑠々はどう返せばいいか分からず神妙な顔つきになった。


「にしても昌義の奴らおせぇな。すぐ来るって言ったのに」


 優佳の作った料理を口に頬ばりながら武人が言う。


「すぐ、というのはそこまで早い訳じゃないだろう。電話してからまだ三十分も経っていないぞ」


 そう言い返しながら優佳が瑠々の平らげた皿を調理場で洗っているその時であった。


「来たわっ!!」


 天井に設置されている銀色の排気管、その一部に突如として穴が開いたかと思うとそこから一人の少女が飛び降りてきた。


「っ!?興花様一体何処から!?」


 突然の興花の来訪に優佳は声を上げた。


「上からよっ!」


 興花は腕を高く自分の開けた穴へと伸ばした。


「おぉ興花、やっぱ早かったな!」

「当然よ!すぐに来るって言ったじゃない!!」

「だからってそんな登場の仕方はどうかと思いますお嬢様」

「昌義、何だお前は普通に入って来るんだな」


 武人は普通に食堂の入り口から入って来た昌義を見た。


「何だ?お嬢様みたいに排気管を蹴破って出てきてほしかったか?」

「嫌よ、そうしたら私のインパクトが半減じゃない!」

「あの、すいません」

「ん、何相馬?」

「これは、誰が直すんですか?」 

「「……」」


 相馬の言葉によって彼と興花の間に数秒の沈黙が流れた。


「……さぁ、その子が瑠々ちゃんね!大まかな事は道中昌義から聞いてるわよ!!」


 興花は誤魔化した。


「ああぁ可愛いわね!お目目クリクリで髪の毛サラサラ!!まるでお人形さん……なんていうテンプレートな言葉じゃ言い表せないわ!!」


 そう言って興花は瑠々に抱き着くと自分と彼女の頬を擦り合わせる。


「っ!!っ!?……っ!!」


 突然の興花の行動に瑠々は驚き声も出せず、その場で身悶えにも似た状態になった。


「あぁいい!そのどうしていいか分からず小動物みたいにプルプルしてるのも最高!!」

「く、苦しい……」

「紹介するぜ。こいつは芳澤興花、お前と一緒で金持ちなんだけどまぁダチの昌義がこいつのボディーガードしててな。それでまぁちょくちょくつるんでるって訳だ」

「よろしくね瑠々ちゃん!」


 抱き着くことをやめて瑠々から離れた興花は自己紹介をした。


「御代瑠々です。あなたの事は知ってます」

「あらそうなの?光栄だわ!」

「いや、あの学園でお嬢様を知らない人なんて数えるほども居ないでしょ」


 半眼で昌義はそう言った。

 芳澤興花、大正時代から続いており今では多くの企業を傘下に収めているエントリック社の社長、芳澤信弘の娘である彼女の知名度は学内でも屈指と言ってもいいほどのものだ。

 昌義の言っている事は誇張一切なしの事実である。


「さて、芳澤嬢が来たところでこれからの計画についてちゃんと説明する」

 

 そう言って相馬が椅子から立ち上がったところで、その場に居た人間全員が相馬の話に耳を傾けた。


「今回、俺たちがすべき事は自分たちのアリバイを作り御代嬢様を安全に家に帰す事。そのためには……」


 相馬が言いながら興花に目配せすると彼女は胸を張って言った。


「瑠々ちゃんを私の方で最初から預かってた体にするのね!」

「そ、それで大丈夫なのでしょうか?少し単純すぎる気が」

「大丈夫よ!そこは私の態度でカバーするわ!!自信満々にしていれば案外疑われないものよ!」


 優佳が口を挟んだがそんなものは杞憂だと言わんばかりに興花が言った。


「よっしゃ!何か色々決まったみてぇだな!!じゃあ興花、頼んだぜ!!」

「えぇ任せて!それじゃあ皆で遊園地に行くわよ!」

「おう!!」


 ……。


「……ん?」


 意気込んだ武人と興花の掛け合い。

 しかし興花の放った言葉がその場において明らかにおかしなものだったため瑠々を含め沈黙、唯一武人が疑問を浮かべながら声を漏らした。


「あーー、えぇっと興花?何か今良く分からねぇ事言わなかったか?」

「ん?そうかしら、理解出来ない事あったかしら?」


 興花は武人の言っている事が分からないらしく本気で首を傾げているようだった。


「い、いやだから遊園地……とか?何かよく意味が分かんねぇっつぅか」

「あら、武人は知らないのかしら。遊園地、友達や家族と行く娯楽施設よ!」

「そこじゃねぇよ!?」


 見当違いの発言を繰り返す興花に堪らなくなった武人は声を荒げてツッコんだ。


「えーと、じゃあ何処なのかしら?」


 指に唇を当て目を上に向ける興花、それを見た武人、そして後方に居た相馬はガクリと項垂れて溜息を吐いた。

 昌義に協力を要請する提案をした相馬とそれを聞いた武人が少し気乗りしなかった理由はこれである。

 芳澤興花、武人達と友人関係にあり協力を頼めるお嬢様。これだけ聞けば非常に頼りになる武人達にとって御仏のような存在だろう。

 しかし彼女はある理由があり御仏に成り得ないのだ。


「芳澤嬢様、御代嬢様を匿うんですよね?遊園地に行く意味が分からないのですが」


 イラついてきている武人に説明は無理だろうと考えた相馬は可能な限り簡潔に興花に分かりやすく質問した。


「どうして?預かる間暇だから遊ぶためよ?」

「そ、それがどうしてそう……あぁ、なるほど」


 何か納得したように相馬は手を額にやった。


「相馬?」

「……武人、芳澤嬢様は一度でも言ったか?自分の屋敷で匿うって」

「……」


 相馬の言葉に腕を組み目を瞑った武人は今までの会話を思い出した。


「言ってねぇな」

「つまり、そう言う事だ」

「どういう事だってばよ!?」


 分からない武人は語尾がどこかの忍者のようになった。


「だからな武人」


 今まで沈黙を決めていた昌義はふと武人に喋り出した。


「お嬢様は自分が御代様を連れ出した事にしてアリバイを作る。だから過程で何があっても関係無いだろう。たとえ遊園地で遊んでも結果お嬢様が御代様と一日中一緒に居たという事実さえ残っていればいい。お嬢様はそう言ってるんだ」

「つまり?」

「……遊園地に皆で行くって事だ。武人」

「何でそうなんだあぁぁぁぁぁ!!!!????」


 昌義の言葉を聞いた武人は頭を背と背がくっつのではないかというくらい背中を逆方向に曲げた。


「決まったわね!行きましょ武人!」

「『行きましょ!』っじゃねぇよ!?何一つ決まってねぇよ!!第一それじゃあ俺達が関係してるってサツにバレるだろうが!!」


 今回の事に関して武人達がしなければならないのは自分たちのアリバイを作り、瑠々を安全に元の屋敷へと帰す事である。

 しかし一緒に遊園地に行ってはアリバイは成立する所か武人達が主犯と見なされる可能性の方が高いのは明らかだ。


「武人は私たちと遊びに行ってくれないの?」


 上目遣いでそう訴え掛ける興花だが武人はそれを他所に他の面々を見た。


「第一私たちって言ってるけどよぉ、誰も行かねぇだろ。なぁ?」

「いや、俺はお嬢様の命令ならば行く」


 と昌義。


「行かないと、芳澤嬢様は協力してくれない」


 と相馬。


「ここまで来て責任を丸投げするのは良くないだろ武人、俺たちは協力すると言ったんだ」


 と優佳。


「メチャクチャ、メチャクチャだよこの人達!!」


 武人は堪らず叫んだ。

 相馬の言う通り、このまま興花の提案を聞き入れなければ興花は恐らく協力してはくれない。

 彼女はそう言う人間なのだ。

 それはすなわち武人達が自力で瑠々を屋敷へと戻さなければならなくなる。

 それはほぼ不可能に近い。

 優佳の言う通り、気付かぬ内に武人達は事態を興花に丸投げする方向に向いていた。

 武人は言ったのだ。協力すると、瑠々の父親を振り向かせると。

 自信の発言を思い出した武人、ばつの悪そうな顔をしながら後頭部をかくと彼は瑠々に言った。

「……っしゃあ!行くぞ瑠々!!」


ここまで読んでいただきありがとうございます!!

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