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命の重さ

「聞いてくれ、皆。」

誕生日より2ヶ月後。急遽、領主様に話があると騎士たちが集められる。部屋に入ると少し険しい表情をしている領主様がいた。


「どうしましたか?」

「すまないが、戦闘準備をしておいてくれ。南側の国境で敵が確認された。」

「「「「!」」」」


戦争が始まる???

「しかし、なぜ今?」

「恐らくヤマタドナの暗殺を同時に行うものだと推測している。ちょうど今いくつかの所で戦闘が観測された。」

ヤマタドナの復活まであと2年もない。

他国が一斉攻撃を開始したの?


「そうですか。」

「ああ、だから二手に別れて片方はここに残る。俺が指揮を執って戦場へ向かう。教官はここに残って守りに徹底してくれ。」

「…それは無理だ、逆にしよう。」


領主様の提案に教官はそれを拒否する。

「教官?」

「お前はこの街の領主だ、トップが死ぬのはよくないぜ。」

「しかし…。」

「俺とアマコ、その他の騎士で行く。アースランドも残ってくれ。」


「わかり、ました。」

アースランド様も納得はしてない様子。


「領主、心配するな。これでも元王の剣だ。早々簡単には死なん。」

「わかった、気をつけろ。」

「ああ。」

「アマコ、いいな?」


「…わかった、先に魔封印だけ解除してもいい?」

「まだしなくていい、本当にやばかったら解除しろ。タイミングは任せる。」

「わかった。」

「これは戦争だが、お前に本当の戦闘を知ってもらう意味もある。」

「うん。」

今から敵を殺さなきゃならない…。あまりいい気分じゃない。


「行くぞ!」

「「「「「おお!」」」」」

こうして初陣が始まることになる。


ステラ領はヒィスト王国の南側にあり、他国との境界線がある。そこに敵が潜んでいるとの連絡。

教官組はそこへ向かって戦闘になる。


途中までは車で移動して、そこから徒歩に切り替える。

車で戦場に向かうとたまに魔力感知できないことがあって、そのまま棺桶になってしまう可能性がある。生贄として車で突っ込み自爆もあるとは聞いたことはあるけど。流石にしないよね?


「教官、敵多数です。強いのが1人。恐らく吸血鬼かと…。」

感知班が教官へトランシーバーで連絡をする。


「わかった、奇襲を開始する。」

無言で教官が手を挙げ合図をする。こちらとしては誰一人死なせるつもりがないための襲撃。意識の外から攻撃出来れば相手は何も出来ずに死ぬ。


教官が手を振り下ろすと同時に騎士たちが無言で音を立てずに一斉に敵へ向かう。


「フッ!」

バタり。隙をついて敵を殺す。


「…敵だ!ヒィスト王国の奴らだ!」

騎士たちは敵を見事に倒している、奇襲は成功した。


「殺したくないんだが、こっちも命かけてるんでな!」

「クソぉ!」


戦況は有利に進んでいき、敵戦力は低下してきている。けれどこちらもノーダメではいけず、死者を出してしまっている。


戦意の喪失したものは捕縛、最期まで抗うものには死を与えてやるしか出来ない。これが戦争…。


「アマコ、どうだ?」

「…いい気分ではないです。」

想像以上に死体を見るのがキツイ、味方も敵も倒れていっている。ちょっと吐きそう。 これが、戦争。

「…これが現実だ。受け入れろ。」

「…うん。」

「俺たちも戦闘に参加する、いいな?」

「…はい、教官。」


「じゃあ敵のど真ん中に突っ込んで戦況をかき乱してこい。」

「えっ、ど、どどど真ん中!?」

は!?!?教官、狂ったの???

「ああ、今のところ吸血鬼はそこにいない。叩くなら今だ。」

「でも、なんで我???」

「今のお前ならここにいるステラ領の騎士より強い。」

「…そうかな。」

「心配するな、お前の力は俺が保証する。」

「…ありがとう、教官。」


「アドバイスだ、躊躇はするな。それと捕縛は禁止だ。こちらが殺されることになるからな。」

「…はい。」

戦争なんだ、殺さなきゃだめなんだ。覚悟を決めろ、アースランド様を守る為だ…。守る為…。


「俺はお前の近くの戦場に行く、そのあと合流だ。」

「…了解です、行ってきます。」

「ああ。」


教官と二手に分かれる、ここからが我の出番…。

「…集中しなきゃ。…全雷狐!」

全身から雷が溢れ出し、身に纏う。そして敵陣のど真ん中へと、突っ込んでいく。


「なんだこいつ!?」「獣人か!?」

瞬間移動に近い形で移動して、直ぐ様目の前の敵から倒していく。


「雷狐!」

グシャッ。

会話は要らない、そんなことをすればもっと殺しづらくなる。


「…おぇっ。」

手が相手の心臓を貫いて、腕に大量の血がかかる。

これが命を奪うということ…。最悪な気分だ。


「クソっ!こいつ!」

「…ごめん。」

「ガハッ。」

手を心臓から抜き取り、一人、また一人と、地面に倒していく。


(…この国の未来の為なんだ。)

順調に数を減らして行くことに成功した。

他の部隊も教官達が壊滅させており、ここでの戦闘の勝利は確定した。


「そろそろ退散しないと…。」

感知班曰く、問題は吸血鬼だ、日の当たる時間に活動出来るということは上位存在の血皇(けっこう)吸血鬼。刻印持ちに対抗できる存在で、今の我では勝てない。

だけど何処にいる?戦闘が始まってから何処にいるのかわからない。とりあえず指示を貰わなければ、我にはどうすればいいかわからない。


「…全雷狐!」

再び雷を全身に纏い、教官の元へ戻る。


「!アマコか。」

「教官、…終わりました。」

「あぁ、ご苦労だった。これで一旦、終わりだ。」

「…そっか、疲れた。」

安堵すると同時に力が抜けていく。そのまま地面に座り込む。

「…あれ、立てない。」

「疲れたんだろ、ほら。」

「教官?」

「初陣ではよくある事だ、気にするな。」

「ありが、とう…。」

「…よくやったさ。」

「…うん。」

教官におんぶされて、戦場を去る。

精神的疲れから、そのまま眠ってしまった。


目が覚めると領地に戻っていて、アースランド様達がいた。

「…んっ。」

「! アマコちゃん、大丈夫…?」

心配そうに覗き込んでくる。

「…うん。」

「そっか…。」


「よく頑張ったな、アマコ。」

「領主様、でも最後の方は疲れちゃって寝てたので…。」

「お前のおかげで、あの戦場では勝利することが出来た。」

「…ありがとう、ございます。」

「敵を殺すのは辛いか?」

「最悪な気分です、でもこうでもしないと味方が死んでしまう。それも嫌です…。」

「そうだな。」


「正直悪かったと思っている。」

「教官?」

「お前はまだ子どもだ、その子どもに俺たちは殺しを強要させた。」

「…それでも、行くと決めたのは我です。全てはアースランド様を守る為ですから。」

「アマコちゃん…。」


「すまない。」

「謝らないでください。いつかはこうしなきゃいけなかったんです、戦争がなくならない限りは…。」


「ヤマタドナが目覚めるまで後2年は切っている、辛抱してくれ、皆。そうすればきっと、戦争は終わる…。」


この国は強い、だけどそれは龍がいてくれるお陰なんだ。いつか龍を必要としないくらい強くならなきゃ…。


「「「「「はい。」」」」」

あと2年の辛抱なんだ、頑張らないと…。


夜になり、自身の部屋のベッドで仰向けになる。

「眠れない…。」

戦場で敵を殺したことが、頭から離れない。

何人の心臓を貫いたんだろう…。

捕縛するべきだとは思ったけど、今の我にはどうすればいいかわからなかった。もし敵が捕縛から逃げたりでもすれば…。


考えているとコンコンとドアから音がする。

「アマコちゃん、居る?」

「…はい、居ます。」

ドアを空けるとアースランド様が居る。


「どうしましたか?もう12時を過ぎてますよ。」

時計は日を跨いでいて次の日を指している。


「ちょっと、話したくてね。」

「…大丈夫ですよ、お茶入れますね。」

「ありがとう。」


部屋に招き入れ、隣になるように座る。

「戦闘お疲れ様、疲れたでしょ?」

「はい、でもさっき寝ちゃってて眠れないです。」

「…そっか。」

「はい…。」


「…アースランド様は、どうしたら戦争ってなくななると思いますか?」

「え?」

「始めて戦場になって、敵を殺して。正直、吐きそうでした。覚悟は決めたはずなのに…。」

「…。」

「でもやらなきゃこっちが死ぬ、仲間が死ぬ、それがアースランド様が死ぬことに繋がる…。」

「そう、だね。」

「頭から離れないです、敵を殺したとき。最期に相手が命乞いをするような表情が…。」


「私だって慣れないよ、でもこれが戦争だって割り切ってる。私の力じゃ全ては救えないからね。」

「...。」

「だからせめて、自分の国くらいは守りたい。私はヒィスト王国の騎士、この国の為なら死ねる。」

「…アースランド様は強いですね。」


「そうしないと、自分を正当化出来ないからね。命を奪うということは相手の人生を奪うことだからね。」

「はい…。」

我の覚悟は口先だけのものなのかな…。



「…今日はもう遅いから、一緒に寝よっか。」

「ありがとう、ございます。」


二人一緒に毛布に包まり、目を閉じる。

アースランド様が一緒なら眠れそう。

「おやすみ。」

「おやすみなさい…。」


ドカーーーン!!!

突如、深夜の屋敷に鈍い爆発音が響き渡り始めた。

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