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アマコの九尾

朝が迎え、いつもと違う部屋で起床する。

以前と同じように身支度をすると、アースランド様の部屋に訪ねる。


「起きてください、アースランド様。」

「…うーん、まだあと5分。」

「お体に障りますよ?」

「…。」

「…無視しないでください。」

体を揺するが動こうともしない。

「うーん…。」


別々に寝ることになっても朝は弱いまま。我はもう身支度は済んでいてベッドに潜ることもできないので心を鬼にして布団を引き剥がす。


「起きてくださいっ!」

「寒い…。」


まだ少し寝ぼけている姿もまた可愛い。

でも、やっぱり一緒に寝たいし甘えたいと感じてしまう。


「おはようございます。アースランド様。」

「…おはよう、アマコちゃん。」

なぜかじっと見られている。何かしたかな???

「えっと、なんでしょうか?」

「私に何かしようとした?」

「…いえ、別に。」

「えっち。」

「…我は先に訓練場行っておきますね。」

「えっち。」

「2回も言わないでいいですから…。」


訓練場に着くと騎士のルージェスがいた。

「おはよう、アマコ。今日は速いな。」

「おはよう、ルージェス。昨日は一人で寝たからね。」 

「そうか、もう添い寝は卒業したのか?」

「我が一人で寝るって提案すると思う?」

「すまんすまん、まだ子どもだもんな。甘えたいんだろ。」

「…まーね、でもどっかで卒業しなきゃなとは思ってる。」

「気にすんなよ、大体今の歳でここに来るのは早すぎる。もっと人生楽しめよ。」

「でも学校いけないし、同年代の友達は居ないんだよ。」

「お前が早く九尾の力を制御出来るようになったら学校行けるかもな?」

「!そっか、それは頑張らなきゃ。」 

「そうだな、今日も頑張るぞ!」

「うん!」


暫く雑談をしていると他の騎士やアースランド様が到着する。


「「「おはようございます、アースランド様!」」」

「おはようみんな、今日もがんばろうね!」

「「「はい!」」」


「アマコちゃん。」

アースランド様に呼び止められる。

「はい。」

「アマコちゃんって意外とむっつり?」

「えぇ!?」

唐突すぎる質問に驚いてしまう。

「え、なんでそうなるんですか?」

「私に変なことしようとしたから?」

「あれは言葉の綾です、別にやましい気持ちはないですから。」

「本当に?」

「…だったら早く起きてくださいよ、結構大変なんですよ?」

「それは、頑張るけどさ〜。」

「それに今まで一緒に寝てて変なことは一度もなかったじゃないですか。」

「…。」

無言で顔を逸らしてくる。顔赤くしないでください。えっ、本当になにかしてたの???

「えっ、なんで黙るんですか!?!?」

「…。」

「ちょ、無視しないでくださいよ!!!」

「…えっちな弟くん。」

「アースランド様!?!?!?」

なんか、穴があったら入りたい。


いつの間にか時間になり、訓練を開始する。


いつも腕立てや腹筋、スクワット、走り込みなど基礎的なことを行う。筋トレでは魔力を使うのは禁止になっている、そうしないと訓練にならないからだ。


「アマコ!腕下がってないぞ!」

「はい…!」

「そこ!腰が高いんじゃないか!」

「はい…!」


教官がみっちり指導してくる。

きついが自分の力になっていると感じる。

筋トレ以外にも剣の持ち方やその他武器の扱い方まで教えてもらう。実際に扱うだけじゃなく、座学もやってくれるのでわかりやすい。

この国の教育水準や技術力は高く、小国ながらも強い力を持っている。


他には龍という世界最強種が存在していることも関係する。

見たことはないがなんかもうめっちゃ強いらしい。


しかし他の国には黒文様(こくもんよう)という身体に黒い文様を持つ戦士が存在する。

皆はこれを刻印持ちと呼んでいる。


黒文様というものは感情を力に変えて扱うものであり、世界に十人までしか存在出来ない世界のシステムとされている。世界のシステムはよくわからないがそういうもんだと皆思っている。

しかし莫大な力の影響の為、刻印持ちの寿命は残り5年となる。


実際に見たことはないが、過去には前の九尾や八尾までも殺されたこともあるらしい。

それほど刻印持ちは強く、出会ったら逃げなきゃならない。龍ですら同時に5人以上は相手にするのは厳しいとされている。

4人までなら平気なのは化け物だとは思うけど。


しかし刻印持ちは皆が同じ国に居るとは限らない。

ただし他にも吸血鬼やフェンリル、ハイエルフなど刻印持ちに対応出来る存在もいるため、油断は消して出来ない。


この世界は国によっての特徴はなく、種族はバラけていて偏りがあまりないのが特徴。強いて言うなら南に進むほど力のある国が多い。我の国は北側の外れだ。おかけで龍が住み着いてくれている。


国同士の争いは今でも存在する。

もちろん我の国も戦うことはあり、頻繁ではないがそれでも戦争は避けられない。資源や技術を狙って仕掛けてくる国はいる。龍も気まぐれで手伝ってくれるかはわからない。

この国の目的としては龍に頼らなくていいくらい強くなるのが最優先だと思う。


基礎練習を2時間くらいしたらようやく魔力の解禁になる。

実戦形式で戦い、死なないようにする。

我は当然出禁で座禅を組んで精神統一を行う。

身体の中で九尾の魔力回路を使い、力を制御することが最優先。力を完璧に使えないため、戦場に出向くと格好の餌食になるからだ。

今は3本の尾を出すのが限界でそれ以上は暴走する。


訓練はこれだけではあるが我にとっては日々強くなるための準備。

もしもアースランド様になにかあったらいけないため、真面目に行う。


しかし歴代の九尾は最初から九本の尾が出ていて、神星眼も開眼している。なんで我は使えないんだろう。


「訓練は順調か、アマコ。」


領主様が訓練場に現れた。ここに来ることは珍しく、ここでは初めて会うことになった。


「こんにちは領主様、今のところは大丈夫です。」

「そうか、お前の九尾の力は特殊で制御するのが難しいからな。頑張れよ。」

「え、特殊なんですか?」

「ああ、お前には母親のエルフの血が流れているからだ。」

「それは、初耳なんですけど。」

親がエルフってこと???でももう片方は狐だよね???


「言うタイミングがなかったからな、悪い。」

「…いえ、大丈夫です。」

「だが俺もこれが答えとはまだわかっていない。」

「と、いいますと?」

「元来九尾は純血の狐族からしか生まれないとは思ってたんだが、お前のようなケースは初めてなんだ。」

「そうなんですか?」

「ああ、お前はエルフの影響で尻尾がない。しかし魔力量や魔力適性が歴代の九尾に比べて恐ろしく異常に高い。だから制御するのが難しいのかもしれない。」

「うーん…。」

「恐らく神星眼を開眼しないのもエルフの影響なんだろうな。」

合点が行く、だから制御するのに時間がかかるんだ。

「えっと、ありがとうございます。」

「気にするな、両親について聞きたければいつでも来い。」

初めてそんなこと言われた。今まではなぜか教えてくれなかったのに…。

「わかりました、今度聞きに行きますね。」 

「ああ。」


両親のことや自分の九尾のことで疑問はまだ残っているけど、今日の訓練は終了した。

風呂を済ませて自分の部屋に戻り、ベッドに横たわる。


我の両親ってどんな人なんだろう?

領主様が母親がエルフって言っていたけどじゃあ父親は狐族になるんだろうか。何尾だったんだろう。


他にも気になることはある。性格は?見た目は?好きな食べ物は?いつも何してたのかな?もし我に親がいたらどんな風な人生になってたんだろう?

今より幸せなのかな?今でも幸せだから想像つかないや。


我に会わないということは既にもう死んでいて、命が今まで狙われなかったのはきっと両親のおかげなんだろう。感謝しなきゃ、ありがとう。


けれどエルフが混ざっていて、神星眼を開眼しないのは驚いた。


神星眼は魔力の流れを見ることか出来て、緻密な魔力操作を可能にする事が出来る。恐らく九尾の力を制御するためにある能力。他にも色々と出来る便利な眼らしいけど、我には使えないからなんとかしなきゃいけない。


全てはアースランド様を守るために。

赤ちゃんの頃から今までずっとお世話になった我にとって一番大切な存在なんだ。

我にはそれしかできない。今はアースランド様の方が強くてもいつかは追い越すことになる。その時しっかり動けるように訓練、もっと頑張らなきゃ。


誰にも負けないくらい、最強にならなきゃ。

もうそろそろ13歳なんだ、甘えも卒業しないといけない…。

…そしたら腕枕とかナデナデがなくなるの???

また一緒に寝ることも???

というより、我、寝てるとき本当になにかしてたの???

意識ないからわかんない…。

もしかしてそれで一緒に寝るの禁止になった???


でもやっぱり、甘えられないのは無理かも。

耐えられない。


「エーウ。」

なんとも情けない独り言を呟きながらも眠りにつくのであった。

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