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日常と絶望の始まり。

「元気に生きてくれ…。」

「生まれてきてくれてありがとう。」


夢の中で誰かが我に語りかけてくる。

たまに見る、誰かの話。

姿形もわからないが、我に温かい声をかけてくれる。

嬉しいけど、何処か寂しいと感じる。

気がつけば朝になり、夢のことは何も覚えていない。

そしていつもの日常が始まっていく。


日が昇り、カーテンの隙間から光が入ってくる。

暗かった部屋が太陽の光で少しずつ明るくなっていく。


ジリリリリリ

時刻は七時、アラームとともにメイド・アマコは目を覚ます。


「…もう朝、うるさっ。」

アラームを止め、目の前に眠っている少女ステラ・アースランドを起こす。


「…起きてください、アースランド様。」

アースランド様の身体を揺さぶる。

しかし当の本人は何も反応せず、時間が過ぎていく。

いつも朝は弱く仕方ないので、我もそのまま腕枕を堪能する。起きれないものは仕方ない。

アースランド様の腕の中は相変わらずいい匂いがして温かい。抱きしめられるこの感じも気持ちいい。


しかし、ズルズル時間が経つと我が離れたくなくなるから布団を剥いで無理やり起こす。

これが毎日のルーティンだ。


「寒い…。」

「流石に起きましょう、もう15分経ってます。」

「もっと寝たい…。」

我ももっと寝たい。

「早く起きないと訓練遅刻しますよ。」

「わかったよぉ。」

アースランド様は身体を起こして目を擦る。


「おはようございます、アースランド様。」

「おはよう、アマコちゃん。」


こうして我の1日が始まっていく。


現在はステラ家所属の屋敷に住んでおり家が職場な状態だ。だから正直寝坊しても誰かが起こしてくれるがアースランド様と寝てるため誰も入っとこない。


洗面所に向かい顔を洗って爆発した寝癖を治すして食堂へ向かう。


「おはよう、アマコ。今日は寝癖直してきたか。」

「おはよう、ルージェス。まぁ、流石にね。」


食堂には騎士のルージェスがいて、雑談しながら朝食を取る。我は騎士ではないけどいつか戦うこともあるので騎士の人たちとはよく話す。信頼関係を築いてないといざとなったときに連携が取れない、これも仕事のうち。


育ち盛りなのかいっぱい食べないと身体が動かない。

だからかよく食堂のおばちゃんに「ほらもっと食べろ!」っていっぱいご飯作ってくれる。

栄養も考えられていて美味しくて朝から満腹になる。


食後は執事服に着替えて掃除を行う。

使用人として働いているが料理は担当せず主に掃除、洗濯、買い出し等行なっている。

最初はよく怒られていた。


「キャベツ買ってきました!」

「ありがとう。…アマコ。」

「はい?」

「これ、レタスよ?」

「それは本当です…?」

「うん、まさか間違えてくるとわ…。」

「ご、ごめんなさい。」

が、1年もすれば慣れてきた。 流石に今ではキャベツとレタスを間違うことはなくなった。


今は12歳で本来は学校に行かないと駄目だけど九尾だからか我は行けない。命を狙われいる立場でもあるから学校で戦闘になると他の子どもたちが死ぬことになる。


それに我も力を上手く使えていないから下手に使うと暴走してしまう。九尾の力とはそれほどまでに危険。


だから力を使うのはやばいと思った時のみ。それでも使える尾は3本が限界。

尾の数が増えるほど制御は困難になり我自身も意識を乗っ取られる。

だから使用人だけではなく、アースランド様の護衛としても騎士団と一緒に訓練もする。

戦場自体にはまだ行ったことはない。


まだ身体が出来ていないから毎日してるわけではなく、1週間に2.3回だけ。だがそれでもスパルタで厳しい。基本的に魔力を使うのが禁止だからついていくのに必死になる。


アースランド様を守るために我は強くならないといけないし、我がいつまでも守られてちゃ護衛としての意味が成さない。


それでも毎日楽しく過ごしている。今日も掃除から頑張ろう。


屋敷はかなり広く訓練場や病院、役所としての役割もある。そのためかなり広く、ペイ〇イドームくらいの広さだ。


もちろん屋敷で働いている人も掃除をするが圧倒的に数が足りないため我も掃除をする。


「よし、やるか、狐影(こえい。)」

百人くらいに分身して掃除に取り掛かる。本当はもっと分身したいが、掃除道具が足りなくなる。


 「ここ、埃がある。」「汚ねぇ。」「花火にしてやる。」


色んなところに我が現れるからか最初は皆驚いていた。

「なんか、いっぱいいる。」「なにあれ?」「いや、そこまでいるか…?」


全てを掃除するわけではないが窓や床、屋根、庭、訓練場まで掃除するので3時間はかかる。


これで1つ目の仕事が終わった。今度全自動で床を掃除してくれるロボットいるから領主様の頼んでみようかな?常に動いてくれるなら我も床掃除しなくていいし。楽したい。


掃除が終わると洗濯を回してその間に昼食を取る。

最近は予め洗剤を入れておけば回ってくれて乾燥までしてくれる。

技術の進化が凄く、畳むだけなのは楽ちんだ。

もちろん乾燥が駄目なものは自然乾燥で別の洗濯機を使っている。


残りは買い出しで、頼まれた物を町に買いに行く。

買うのは主に食料や日用品なのだが、最近は遠隔で買うことができ、家まで届けてくれる。


なんかもう、我必要ないんじゃないかと思う。


余った時間は勉強や訓練をする。頭が悪いと話についていけないし、恥をかく。戦術を覚えることも大事で間違って仲間に攻撃したら元も子もない。だから必要最低限な教養は家庭教師に任せている。家庭教師曰く今のところは問題ないらしい。


それに我はアースランド様に頭悪いと言われたくない。言われたら多分、いや絶対泣く。だから勉強する、嫌いだけど。あと頑張ったら頭撫でてくれるのが嬉しい。


勉強も終わると夕食を取りお風呂にはいる。

お風呂は大好きで毎日1時間くらいは長湯している。

屋敷の大浴場は広く足が伸ばせてリラックス出来る。


「うわぁあああああ!!」「なんで男湯にいるんだ!」

ただ見た目のせいか女の子に間違われることもたまにあり叫んだりする人がいてこっちが焦ってしまう。


相手も慣れてはきているが、それでもなんか「ちょっと、なぁ。」「気を使ってしまう。」みたいに言われることがあるので、最近のお風呂は人がいない時間に入って極力一人で済ますことが多い。


お風呂を上がって部屋に戻るとアースランド様がいる。  

なぜアースランド様と一緒の部屋かというと我のわがままである。


ある日眠れないときにアースランドに事情を話したら一緒に寝てくれるようになった。もちろん自分の部屋はある。

このままだと駄目だと思っているが何も言ってこないのでずっと甘えている状況だ。


けれど男として見られてないんだろうなという感情がある、そうでなきゃ毎日一緒に寝てくれないし無防備な姿を我に見せない。


「あ、アマコちゃんおかえり!」

「ただいま戻りました、アースランド様。」


髪を乾かしてもらって、今日あった出来事を互いに話す。毎日同じ仕事なので内容は変わらない、仕事話はそれくらいしか話すことがない。それでもこの人と一緒にいられるだけで幸せだ。

にこにこして聞く姿が今日も可愛い。


「アマコちゃん、明日の訓練参加するよね?」

「はい、明日はトレーニングです!アースランド様をしっかり守れるように頑張ります!」

「ふふ、頼もしい護衛さん。」

頭を撫でてくれる。

「へへ。」


「…アマコちゃんは戦うのは楽しい?」

「はい、自分がどれくらい強くなったのかわかりやすいので!」

「そっか…。」

「でもまだ戦場には立ったことがないのでわからないですがちゃんと守れるか不安です。」

「大丈夫、心配しないで。こう見えて私は強いからね。」

「確かに我もまだ一度も勝ったことないです…。」

護衛なのに情けない…。

尻尾2本じゃ我が勝てないくらいアースランド様は強く、若くしてこの国の希望だ。


就寝時間になり、ベッドに入ろうとするがアースランド様に声をかけられる。


「そうだ、アマコちゃん。」

「なんでしょうか?」

「今日から一人で寝てもらってもいい…?」

「えっ。」

突然の死刑宣告により、頭が真っ白になる。

まるで今からアマコ、自害しろ。みたいな感じ。


「アマコちゃん、そろそろ13歳だしもう大丈夫かなって。」

確かにいつまで経っても一緒に寝る方が問題だ。逆に1年間よく一緒に寝てもらって感謝しかない。


「…承知しました、今日から一人で寝ます。」

嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!

もっと腕枕してほしいし、甘えたい。

我は親がいないし、唯一甘えられる存在だから余計に寂しい。

我儘を言いそうだったが感情を押し殺して部屋から出る。


「おやすみなさい、アースランド様。また明日起こしに来ますね。」

「ごめんね、おやすみ。アマコちゃん。」


久しぶりに自分の部屋に戻ってベッドに寝転ぶ。

「広い…。」

ベッドってこんなに広かったっけ。

温もりが欲しい…。


「でもなんで急に一人で寝るんだろう。…でも女の子は大変ってメイドさん言ってたし。我にはわかんないや。」

原因を考えても仕方がないので眠ることにする。

…寝坊しないよう、気をつけよう。

また明日も会えるんだ、頑張ろう。

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