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生まれてきてくれてありがとう。

アマコの両親のプロローグ的なお話の続きです。


「助けて…。」

「何してる、やめろ!!!」

グシャっ。


最悪な状況になった、結界内に侵入者が現れた。

認証されたのか、どうやったのか、侵入経路は不明だが結界内に侵入された。

敵は想像よりは強く、結界外の見張りも全て殺されていた。


「こいつを殺されたくなかったら、大人しくそこのガキを寄越せ。」

助産師が殺され、セレスティアに剣が向けられる。


「セレスティア!」

「大丈夫よ、あなた。これくらい。」

「結構、肝が据わってるんだな。」

「慣れてるわ、それでアマコになにするつもり?」

「九尾の力は厄介だ、だから殺す。」

「…させるか!!」


セレスティアが敵と会話して油断させ、クウコは間髪入れず自身の尾を伸ばし侵入者の首を掴む。


「ぐっ、貴様ぁ。」

「こう見えて八尾だからね、お前程度なら負けない。」


そしてそのまま首を圧し折り殺す。


「あなた、ここから出て里の方へ!!!」

「その前に治癒魔法をかけさせてくれ、そうしないと君の体力が持たない!」

「運びながらできる!?それで問題ないわ!」

「わかった!」


妻のセレスティアは出産直後でまともに動けない。

現在は連絡手段が取れない、まずは2人の安全を確保することが最優先。

動けるのは俺だけ、屋敷どころか里まで離れていて増援も望めない。


一体、いつからだ???

俺達のこどもが九尾だとわかった???

今回の騒動も仕組まれていた…?


どうする…。

落ち着け、先に二人を連れて避難させなければ。


魔法でセレスティアとアマコを運び、道中敵を蹴散らしていく。

「数が多い…!」


敵は1000人、数は多いが大した奴らではない。

減らしてはきているがまだまだ里には遠い。

なにより二人を守りながらはきつい。


「流石に遠すぎたか…!?」

残りは100人くらいだが、気を抜けば2人が死ぬ。


「なんの魔力だ…!?」

突如異質で強力な魔力を感じる。

こいつはもしかして…!?


「へぇ、強いね。君。」

「貴方!後ろ!」


!!!

セレスティアの声を認識できるも反応出来ず、吹っ飛んでしまう。


「がはぁっ。」

背中に激痛が走る。…なにされた!?

「さすがに死なないか。」

「くそっ、お前は、刻印持ちか…!?」

「御明察、君たちの子どもを殺しに来た。」

「ちっ。」

一人か、それだけならなんとか…。

すぐさま体制を立て直し、的に向かう直前。

「しかしこちらはかなり数を減らされたようだな。流石八尾と言ったところか。」

「!!!」

もう一人の刻印持ちが後ろから姿を表す。

「刻印持ちが、2人もいるのか…。」


目の前には身体に黒い模様を纏った敵が2人。

一人だけならまだしも、二人はまずい。


「一人だと逃げられるからな。ここまで頑張ったことは褒めてやるよ。」


「あなた!!!」

なんとかセレスティアは駆けつけるも既に敵に囲まれる。 絶体絶命だろうか…。 


「セレス、無事か!?」

「ええ、アマコも無事よ。」

「よかった…。」


「…おぎゃあ!おぎゃあ!!」

アマコの目が覚め泣き出してしまう。

「あらあら、ごめんねアマコ。起こしちゃって…。」

「よしよし。」

セレスティアのおかげですぐ眠りについてくれる。

聞き分けのいい子だ。

「…すぅすぅ。」


「元気のいい声、そいつが九尾のガキか、渡してくれればお前たちは殺さないんだがな。」

「俺達のこどもだ、渡す理由がないだろう!!!」 

「だろうな。」


3人を敵が囲う。そのうち2人は刻印持ち。逃げ場がない。

どうする…!?!?!?


「あなた。」

「セレス??」

「…もう、あれをやるしかないわ。」

「なにを…。」

「はああああ!!!」

セレスティアがその場の全員を動けなくする。何も見えず、まるで何かに拘束されたように。


「う、動けない。」「こいつは魔法なのか…?」


「おっと、で、手応えは?」

しかし発動が少し遅れたか刻印持ちの一人の投げた剣が内蔵にめり込む。


「おぇっ。はぁ…はぁ…。」

口と腹から出血が止まらない。


「いいやられ具合だね。」


「セレス!!!」

剣を抜き治癒魔法を掛ける。

「…あなた、私を置いてアマコと逃げれる???」

「なに言ってる!!!置いていくわけないだろ!!!」

「拘束は、長くは持たないわ…。私はこのまま彼奴等を纏めて吹き飛ばす…。」

「それをしたらセレスが…。」

「刻印持ちからは全員は逃げられない。それに、まだ、私はやることがあるわ…。」

「…。」 

「大丈夫、無様に死ぬようなことはしないわ。」

「…それはわかってるけど…。」

「クウコ、お願い…。」

悲しそうな表情をしないでくれ、それに俺は君を一人には決してしない。


「…だったら俺も覚悟を決めるよ。」

「……あなた?」

「……天遷送還(てんせんそうかん)を使ってアマコに全ての力を譲渡する。転移魔法は生物を送るのに適してないからね。」

「なんで!?今のうちに早く逃げて!貴方まで死ぬことないじゃない!!!」

「アマコを抱きながらだと、必ずどこかで追いつかれてしまう。だからこの子に、全てを託す。」

「でも、せめて、あなただけには生きてほしいの!!!アマコの隣で、見守っててほしいの!!!」

「…駄目だ、今はヤマタドナや他龍の力は借りられないんだ、だからアマコが一番生き延びれることを前提にしよう。」

「…。」

「本来君も一緒に天遷送還するべきだが、間接的に敵と触れててそれができない。」

「それは、わかってるわ…。」

「この子の未来の為だ、命を二度と狙われないようありったけの力を渡すしかない。平和に行きてほしいからね。」

「でも九尾に八尾の力まで与えるの…?そんなことしたらアマコの身体は…。」

「大丈夫、八尾の力は封印しておく。いつか使うときが来たら自分で解くよ。」

「…そう、ね。」

「あとは領主様やアースランド様たちに任せよう。きっと大切にしてくれるよ。」

「…わかったわ。私の魔力も少しあげて、きっと守ってあげられるから。」

「…ああ、準備はいいね?」

「ええ。」


揺り籠を出して、そこへアマコを乗せる。

最期だから安らかに寝てる顔を目に焼き付ける。


「結構、というかほぼあなた似ね。」

「そう、だな…。でも目元はセレスに似てるな。」

「ふふ、そうね。でも、もっと、もっと、一緒にいたかったわ。まだ生まれて一時間よ?」

「そう、だね。」

「初めて歩くところ、見たかったわ。」

「初めて話すところも。」

「成長した顔も見たかったわ。」

「まだ何も、親らしいことしてあげられていない…。」

「アマコ、ちゃんとご飯食べて寝て大きくなってね。」

「はは、全然言い足りないや。でも、もう、時間だ…。」

「そうね、うるさくて騒がしい親でごめんね。」


「「生まれてきてくれてありがとう、アマコ。」」


「…クウコ。」

「ああ、またね。…天遷送還。」


クウコが展開した魔法陣が空を彩る。

狐族の瞬間転移魔法 。

対象物を選択し任意の場所に飛ばすことが出来る。

通常の転移魔法ではなく、生物も転移可能になる。なにより自身の力を譲渡することを同時に行うのがこの魔法の神髄。だけど使用者の生命を代償にする。


同時期

「領主様!赤ちゃんが転移してきました!!!」

「何!?!?!?」

(クソ、何があった。クウコ!セレスティア!)

「厳戒態勢に移行する!総員集合!」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

領主はすぐに指示を出し九尾を守る指示を出す。


「お父さん、どうしたの?」

屋敷が慌ただしくなりアースランドが部屋に訪ねてくる。

「アースランド、少しうるさくなりそうでごめんな。」

「ううん、なにがあったの?」

「ちょっと、な。」

父の目線の先には狐耳の赤ちゃんを抱いた看護師がいる。

「その子ってクウコ様の…?」

「知っていたのか…?」

「この前会って、赤ちゃん生まれるって聞いて。」 

「そうか。」

「少し、顔をご覧になりますか?」

看護師がしゃがみ込んで顔を覗き込む。

「うん、この子がアマコ…?随分可愛いね。」

「アマコ?」

「クウコ様から息子の名前はアマコって聞いて…。」

「そうか…。」

「確か、天に恵まれて愛される幸せな狐になるようにって。」

「…。」

「お父さん?」

父の手が強く握り締めている。

「…いや、なんでもないさ。」

「…わかった。」

「よろしくね、アマコちゃん。お姉ちゃんとして頑張るから。」

軽く頭を撫でてあげ、アマコは幸せそうに眠っていた。


転移は成功し、クウコの意識が遠くなっていく。


「はぁ、はぁ。アマコ、元気に生きてくれ…。」

「…ごめんね、あなた。」

「大丈夫だよ、まだ残ってる魔力を君に渡す。あとは、頼んだよ…。」

「ううん、ありがとう。愛してる、クウコ。」

「ああ、愛してる。セレスティア。」

クウコは静かに目を閉じて、地面に力なく倒れる。

(これが走馬灯ってやつか、楽しかったな。あとは頼んだよ。セレスティア…。)


「ちっ、失敗したか…。」

「…残念だったわね、この子は殺させないわ。」

「しくじったのは仕方ない、拘束が解かれたらまた殺せばいいだけ。お前の命もないと思え。」

「残念、それは出来ないわよ。」

セレスティアのいる地面から極大魔法陣が浮かび上がる。

拘束は今も続いており、誰一人動けない。


「貴様!!!」「やばっ、なにするつもりだ!!!」


「私たちのありったけをくれてやるわ、有り難く思いなさい。」

「防御魔法を展開しろ!」

「無駄よ、私に拘束された時点で魔法は使えないはず。それにこの魔法は全てを破壊するからね。感謝しなさい、刻印持ち共。」


「チッ!」「クソっ!」

(ほんと、油断してて有難いわ。

でも、私もそっちに行くから、すぐ会えるよ。クウコ。待っててね。)


神愛崩壊(しんあいほうかい)

セレスティアの生命と魔力を使い、辺り一帯を消滅させる極大魔法。クウコの遺体も刻印持ちも、何もかも残らず全てが塵になって消えていった。

クウコとセレスティアのメイン話はこれで終わりになります。

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