ずっと愛してる。
アマコの両親のプロローグ的なお話です。
「ねぇ、貴方。愛してるわ。」
「俺も君のこと、愛してる。」
ああ、このままずっと、貴方と幸せに暮らしていけたら…。
「おめでとうございます。」
「えっ。」
こどもが出来た。
私とクウコの間に。
医者に懐妊祝いの言葉を貰い、半信半疑にながらも家路につく。
帰宅後、旦那の冥途空狐に報告すると
「え!?本当に!?!?!?」
とても嬉しそうな表情と何処か少し不安な表情が見て取れる。
そこも愛おしいと感じる。
「そっか俺たちは、親になるのか。」
「ええ、とても嬉しいわ。」
「そう、だね。」
クウコの返事は少しだけ戸惑っていた。
「不安?」
「少しね。」
「大丈夫よ、あなたのお父さんだって子育て出来たんだから。」
「うーん、それもそうかも?」
目を瞑り、少し首を傾げながら返事をしてる。
結構ガサツで色々と適当な人だけど、クウコを立派に育てたんだから丈夫よ。
「そうそう、心配しないで。」
私たちはエルフ族と狐族であり、種族は違うけど幼馴染。
家が隣同士で両親も仲が良かった。
だから生まれたときから一緒に育って遊んで、辛いときも楽しいときも喧嘩したときも、23年間ずっと一緒に居た。
何時しか自然と恋仲関係になって、去年結婚した。
「セレスティア、俺と、結婚、して、ください。」
「はい…!喜んで!」
プロポーズされた時はとても嬉しかった。
顔が真っ赤になりながら言葉も噛み噛みで、だけどクウコの一生懸命な気持ちが嬉しかった。
ずっと好きで隣に居てくれた人に愛を伝えられて、一緒に住むことができて。
結婚式では皆祝ってくれて嬉しかった。
お父さん、号泣してたっけ。クウコも同じように。
そうして順調に人生を歩んでいき、そして私たちの愛が形になって嬉しかった。
「ねぇ、名前なんにする?」
赤ちゃんの名前を決めないとね。
「名前?」
「そ、赤ちゃんの。」
「そうだなぁ、セスティラとかは?」
「…適当に考えた?」
「少しだけ…。」
「もー。」
「ごめん、ごめん。」
「…私はいいけど、貴方の要素はほとんどないわよ?」
「あまり狐族は名前を重視しないからなぁ、よくわからないんだよ。エルフはしっかり名づけするだろう?」
「そうね。でもせっかくだからちゃんとした意味のいある名前を決めて起きたいわ。」
「だったら男の子と女の子、両方の名前も決めておこうか。頑張るよ。」
「そうね、時間はあるわ。のんびり決めましょう。」
「そうだな。」
お腹の中の子どもは順調に育っていき、私も体調を崩すことが増えてきた。
「この子が九尾…!?」
しかし妊娠8ヶ月に子どもが九尾であることが判明した。
「九尾の尻尾は確認できません。ですが機械は九尾のオスだと認識しています。」
医者は九尾だと伝えるけど、狐族にそこまで詳しくないから私には少し理解ができない。
「どういうこと???」
「まず種族が違います。」
「天種と狐種か?」
クウコが口をはさんでくれた。
「はい。狐種の場合は一般的に人や他の種族とも魔力回路は一つと変わらないんですが、天種は通常の魔力回路だけではなく九尾固有の魔力回路があるんです。」
「天種?」
「狐族の一から八尾は狐種、九尾は天種になるんだよ。実は根本的に種族が違うんだ。」
「初耳だわ、でもなんで九尾なのに尻尾がないの?」
「エルフの血が混ざっているので尻尾がないんだと思われます。ですが前例がないので正直何とも言えません。」
「そっか。」
基本的には同じ種族同士で結婚することが多く、エルフと狐の組み合わせは稀にはあるが九尾に関しては例にない。
「そっか、でもなんか不思議な感じ。」
「ああ、まさか息子が九尾だなんて…。」
九尾の誕生は国にとっては嬉しい事だが同時に緊張が走る。
この事は出産後までは秘匿しないといけない。
なぜなら九尾は吉兆と恐怖の象徴であり、自国からは吉兆、他国からは恐怖であり、戦力の均衡が崩れるからだ。だから見つかったらお腹の中の子どもごと、私の命が狙われる。
それだけはなんとしてでも避けなくてはならない。
「このことは領主様に伝えておきます、どうかくれぐれも内密に…。」
「はい。」「ああ。」
家路につき、その後クウコが領主から呼び出されることになった。
「久しぶりだな、クウコ。」
「お久しぶりです、領主様。」
「クウコ、俺とお前の仲なんだ、堅苦しい言葉使いはやめてくれ。」
「今は領主と一国民ですので。」
「…そーかい、それで例の話か…?」
むすっと少し不満そうな顔をする領主。
「ええ、息子が九尾と判定されました。」
「だが尻尾はないんだろう?」
「ええ、エルフの血の影響らしいですが、正直例にないもので…。」
「どうだろうな、元来九尾は純潔の狐族からしか生まれないと思ってたんだが…。」
「八尾とエルフとの組み合わせだからでしょうか?」
「どうだろうな、俺にもさっぱりだ。九尾は突然変異体、一尾からでも生まれてくることはある。」
「確かに。」
「…しかし、問題は出産場所だ。子どもが襲われて街のど真ん中で戦闘されたら死者が出すぎてしまう。九尾はいつも狙われるからな。」
「出産に関しては人里離れた狐族所有の所で行いたいと思います。」
「なんだ、そんなところがあるのか。」
「はい、秘密の場所です。」
「わかった、騎士と特殊部隊もつける。当日でいいから場所を教えてくれ。」
「ありがとうございます。」
結界と騎士と特殊部隊がいるなら安全だろう。
「そうだ、ヤマタドナが刻印の継承者になり、今は休眠中だ。力は望めないで大変だが、頑張ってくれ。」
「そうですか、他の龍の手は借りられませんか?」
「駄目だ、ヤマタドナ含め他の二匹とも今はこの国にはいない。連絡は出しておこう。」
「わかりました、ありがとうございます。」
「気をつけろよ、クウコ。だからといってお前は八尾だ、あまり心配してないがな。」
「もし何かあったら赤ちゃんとセレスティアをここに飛ばすので、準備だけしておいてください。」
「…わかった、準備をしておこう。」
帰宅したクウコは少しだけ疲れていた表情をしていた。
「お帰りなさい、疲れた???」
「少しね。」
ハグをすると軽くクウコが甘えてくる。
頭を撫でてあげると尻尾をぶんぶん振ってくるのが可愛い。
「やっぱり甘えん坊ね。」
「大丈夫。赤ちゃんが生まれるまで頑張るさ!」
「ふふ、少しは父親っぽくなってきたんじゃない?」
「そうかな?それは嬉しいな。」
「ふふ、どういたしまして。ご飯はできてるわ、食べましょう。」
「ありがとう、だけど無理はしないでくれよ。」
「わかってるわ。」
「「いただきます。」」
今日のご飯はクウコの好きな唐揚げ定食、喜んで食べてくれた。
「ご馳走様でした。」
「お粗末様。」
食後にクウコが食器を片付けてくれて今日の家事はすべて終わった。
「ねえ、あなた。」
「どうした?」
「赤ちゃんの名前なんだけど、天狐にしない?」
「天狐?」
「天に恵まれて愛されて幸せな狐であるようにって。」
「…。」
「あなた?」
「セレスティアの要素はどうしたの??」
「見た目はほぼクウコでしょ?私に似てたらセスティラかなって。」
「そっか、いいんじゃないか?俺も賛成だ!」
「よかったわ、アマコに会える日が楽しみ。」
「そうだな、あと少し頑張ろう。」
「ええ。」
「クウコ様?」
「! アースランド様、こんにちは。」
数日後、たまたま屋敷の近くを歩いていると領主様の娘、ステラ・アースランドとばったり会った。
「こんにちは、どうしたのですか?」
「妻の出産でお父さんに用があったんだよ。」
「え、子どもが生まれるんですか!?」
「ああ、生まれたら息子と仲良くしてほしいな。」
「もちろんです!おめでとうございます!」
頭をペコリと下げてくる。礼儀がしっかりしてる、本当に5歳なんだろうか。
「ありがとう。」
「名前は、決まったんですか?」
「うん、アマコって名前だ。」
「アマコ?」
「天に恵まれて愛される幸せな狐になるようにって。」
「いい名前ですね。」
「セレスティアが名付けてくれたんだ。」
「流石、セレスティア様ですね。」
「ああ。でも子どもが生まれることは内緒にしておいてくれ。」
「わかりました、では私はこれで。」
「うん、またね。」
それから二か月後。
出産時期が近づき、2人は狐族が住んでいる村へ帰っていった。
「ここが出産場所?」
人里離れた場所に、特殊な結界が張られた部屋の中に入る。
認証された人しか入れない部屋。
「ああ、結界を張って外には騎士と特殊部隊がいる。俺も立ち会うから心配しないで。」
「そっか、それなら安心だね。アマコに会えるよう頑張るよ!」
「…ああ!」
出産は無事におわり、元気な男の子が生まれた。
「おぎゃあ!おぎゃあ!」
「よく、頑張ったね、セレス。」
「ええ、疲れたわ。」
「ほら、赤ちゃんですよ。」
アマコを渡されしっかりと抱く。
「かわいいお顔、見てクウコ。」
「ああ、かわいいな。俺たちの子供は…。」
「ふふ、これからいっぱい頑張りましょうね。」
「ああ、あとは街に帰るだけだな。」
「ええ。」
この時まで、皆無事に終わると思っていた。




