ヤマタドナ
大切なもの。
確かに我には屋敷や騎士の皆がいる。
それでも、アースランド様の存在は我の中では特別…。
心の穴はそう簡単には埋まらない…。
「それでここまで来たってわけか?」
ヤマタドナが居る島へ訪れる。
領主様には強くなって大切な者を守れと。
我にはこれしかない。
「ったく、しょうがねぇな。」
「ごめん、どうすればいいか、我にはわからなくて。」
「別にもう強いじゃねぇか。私の次くらいには。」
「じゃあどうすればいい?」
「アースランドの変わりを見つけるとかか?」
「そんな簡単にできるわけないだろ…。」
「じゃあ、どうするんだ…?」
「いや、我が聞きたいんだけど…。」
「だってよ、私には恋人とか居たことねぇから、わかんねーんだよな。」
「…聞いた我が馬鹿だった、ごめん。」
「私は寿命がねぇからいつも置いてきぼりだから、基本的になにも感じねーからな。なんか死んだって感じ。」
「…人の心とかないのおおおおおお。」
「クウコ達が死んだときはちょい悲しかったけどな。」
「人の心あるのののの。」
「お前のなかでアースランドがどのくらい重いかは私にはわからねぇ。だけど世界一好きだったたのはわかるぜ。」
「なんだ、ちゃんとわかってるじゃん。」
「違う、ピント来ねぇんだ。」
「…帰る。」
「わかった、わかった!ちょっと待て!」
「なに…?」
「私が、お前の恋人になる!!」
「はぁ!?」
唐突過ぎて頭からずっコケる。
「頭、大丈夫?」
「大丈夫だ、私も恋を知る時が来たってことだ。」
「いや、なんで…?」
「お前と私は寿命がない、つまり番にはぴったりってわけ。」
「我にはアースランド様がいるんだけど。」
「アースランドはもういないじゃない。」
やっぱり、ヤマタドナは人の心がない気がする。
「…いや、あのさ。そうじゃ、なくてさ。」
「わかってる、アースランドの分も私が受けとめる。」
なんか、色々と合ってるようなズレているような気がする。
「心配すんな、私が幸せにしてやる。」
「丁重にお断りするぜ。」
「は?んなことさせねーよ。」
「いや、拒否権は?」
「ない、拒否したら私はこの国を滅ぼす。」
「え、嘘でしょ!?」
「心配すんな、力は完全に取り戻したからもう誰にも止められん。」
本来の我ですら勝てない存在。
暴れられたら本当に終わる。
「わかった、わかったから。」
「じゃあ、よろしくな。旦那。」
「…いきなり旦那は違うくない?」
「それは本当です?」
「そかもな!」
アースランド様の変わりにはなれないけど、誰かが隣にいてくれるのは少しだけ嬉しかった。
「それで?なにするんだ?子作り?」
「…いきなりそれは駄目でしょ。」
「いつもはなにしてんだ?」
「え。」
これ、話さなきゃ駄目なの?
「だからいつもどんなことしてんだ?」
「デートしたり、ご飯食べたり、一緒に寝たり、お風呂入ったり?でもずっと一緒にいたから家族って感じ?」
「あー、そういう感じね。」
「どういう感じ…。」
「要するにイチャイチャなパラダイスするってことだろ?」
「まぁ、そんな感じ…。」
…滅茶苦茶恥ずかしいんだけど。
「じゃあやるか。」
「ムードもなにもないじゃん、ナシで。」
「んなぁ!?」
「こういうのは自然にするものなの!ちょっとは考えて!」
「…す、すまん。」
少しションボリしている。龍の貫禄がない…。
「いや、ごめん、我も言い過ぎた。とりあえず、暫くここに住むから色々と教えて。」
「そうか、一緒に住むのか。悪くない。」
「じゃあ、よろしく。」
「ああ、よろしく。」
こうして奇妙な生活が始まった。
「それで、食事とかどうしてるの?」
「え、食わなくても生きられるからしてねーぞ。空気中にある魔力を取り込むだけ。」
「食べないの?」
「お前は食べるのか?」
「食べるけど。」
「なんで?」
え、なんで??どういうこと?
「食べるのが好きだから?」
「ほーん?そういうもんか?」
「そういうもんだよ。」
「なら、食いに行くか。」
「作らないの?」
「作れると思うか?」
そーでした、すみません。
「…そうだね、街に食べに行こう。」
「行くか。」
「でも金は?」
「ない。」
ない!?
「お前は?」
「ない、ATMに置いてる。」
「じゃあ取り行くか。」
「…そう、だね。」
我の金なんですけど…。
お金を引き出して街へ向かう。今はステラ領ではなく他のところへ来ている。
「おいちゃん、そこの牛の串焼き2つ。」
「はいよ!」
やってることは食べ歩き。
しかしヤマタドナは涙を流しながら食べている…。
「食べ物って、こんなに美味しいのか☆ミ」
「泣くほどなの?」
「生まれて始めて食べ物を口にした。」
まじ、なんなの、赤ちゃんなの…?
「…赤ん坊のときはどうしてた?」
「私は卵から生まれたときからこの姿だ、ある程度育ってから生まれる。」
「そう、なんだ?」
龍ってそういう生き物なの???
知らなかった。
「じゃあなんで今まで食べなかったの?」
疑問でしかない。
「そりゃ、興味なかったからな。」
「まじか。」
「マジだ。」
「じゃあ、今日はいっぱい食べよう。」
「お、いいな!」
二人はお腹いっぱいになるまで沢山の物を食べた。
「お会計、20万円です。」
20万!?我には大金すぎるんだけど!?
給料手取りで25万ですよ!?
アースランド様の指輪代で貯金全部ふっ飛んでるから痛すぎる。
「ぁあ、ク、クレジットカードで…。」
「どうした、顔色悪ぃぞ?」
「…いゃ、なんでもない。」
「そうか、なら明日も食べに行くか!」
「…ごめん、マジ勘弁して。もうお金ない。」
「す、すまん。」
来月の引き落とし、怖いな。
みんな、お金の使いすぎには気をつけよう…。
詰んだ、明日からご飯どうしよう。屋敷には暫く帰りたくない。
「なら、明日から飯は調達して作るか。」
「…そう、しよう。」
「とりあえず今日は寝ようぜ。」
「風呂は?」
「入らねぇけど。」
無言でヤマタドナを抱えて風呂場に連れて行く。
「ちょ、おい、どこ連れて行く!」
「いや、風呂入ってよ。汚い。」
「…くそ、仕方ねぇ。お前も入れ。」
「いや、一人で入ってよ。」
「恋人だろ?一緒に入るんじゃねぇのか?」
「それはある程度仲良くなってから、だから一人で入ってくれ…。」
「しゃーねぇ、今日は一人で入ってやるよ。」
「ほっ。」
「でも明日は一緒に入ってもらうからな。」
「いやおかしいでしょ!?」
「大体私は気にしねーよ。」
「我が気にするの!!!」
「ったく、細かい奴だな。」
「ヤマタドナが大雑把すぎるんだよ。」
無茶苦茶な1日だったけど、悪くはなかった。
アースランド様、これから我はどうなるんですか…。




