龍の目覚め
ヤマタドナに刻印が継承されてから15年。
この国最強の生物がついに目覚めた。
だけど案外あっさり起き上がって拍子抜けした。
「ふぁ〜、よく寝たぜ…。」
ゆっくりとベッドから身体を起こして欠伸をしてる。
命を狙われてたとはいえ、随分とお気楽そうだ。
こっちの身にもなってよね、まじで。
男勝りで雑な口調だが、見た目は人型の女の子。
いわゆる高身長女子と言われるくらいの身長でスラッとした綺麗なスタイルをしている。
角だけ確認できるが尻尾とドラゴンの羽根は見当たらない。
「あ、起きた。」
「…誰だ?」
「あんたが目覚めるまでの護衛してた者だよ。」
「お前、クウコか? ハッ! お前まさか夜這いか!?」
「誰がそんなことするか!」
「なんだ、しないのか。」
「…それに我は父じゃない。」
ヤマタドナのこと知ってるってことは父さんは顔広かったのかな…?
「父?お前はクウコのガキか?」
「うん。」
「クウコが、親!?いつの間に…!?」
「…いや、なにに驚いてんの?」
「あの甘えん坊がだぞ?」
「…いや、そんなこと我は知らないけど。」
「それで、お前は?」
「我はアマコだけど。」
「それでクウコは何処にいる?久しぶりに会いたいもんだぜ。」
どうしよう、なんて話せばいいのか。
「おい、どうした?」
「クウコ、父さんはもうここにはいない、我を生んですぐ死んだ…。」
「そうだったのか。」
「母親の方は?」
「母さんも死んだ、我が生まれた15年前に。」
「…母親の名前は?」
「セレスティア。」
「そうか、二人とも死んだのか…。」
「...うん、ヤマタドナが眠っている時だって。」
「タイミング悪ぃな…。」
少し寂しそうな表情してる、友達だったのかな。
「…我の両親と、どういう関係?」
「師匠と弟子だな。」
「そうなの?」
「ああ、ビシバシ鍛えてやったぞ。」
「そうなんだ。」
「二人ともセンスはよかったぞ、だから王の剣とやらの奴らよりも強かった。」
王の剣よりも?でもそっか、龍が直々に指導だなんて。そういえば領主様も強いって言ってたね。
「じゃあなんで二人は王の剣に入らなかったの?」
「なんか知らねーけどセレスティアが王の剣に入れなくてクウコも入らないって言ってたっけ。」
「それって雌は禁止ってやつじゃない?」
王の剣は確か雄しか入れないってやつだった気がする。
「それだ!それでクウコがセレスティアと一緒にいれないのはヤダ!ヤダ!ヤダ!って駄々捏ねてた。国王と貴族と国民と私の前で。」
「…我が話振っておいてなんだけどこの話やめにしない???」
父親の黒歴史なんて知りたくなかった。
「それでしょうがなくステラ領に戻らせた、まぁ、元々強い奴らの集まりだから国王も気にしてなかったけどな、ドン引きはしてたぜ。」
「続くんかい。」
「でもこれくらいだぜ?」
「そっか、なんかありがとう。」
「まー、でも弟子が私より先に逝くのは悲しいぜ。いつもの事なんだがよ。」
「他にも弟子居るの?」
「居たっけ?」
「適当すぎる…。」
「いっつも師匠師匠言ってて可愛かったんだけどな。」
「…そっか、色々教えてくれてありがとう。」
「気まぐれでとった弟子だ。他にも聞きたいことがあるなら教えてやるぜ、特別にな。」
「じゃあ教えて、刻印の消し方か寿命の解決方法。」
「え、ない。」
一言でバッサリ切られた。
「…ない?」
「ない」
「龍には寿命がないよね…?」
「教えといてやるが、元々刻印は龍のものだ。それをどこぞの馬鹿龍が私たち以外につけやがった。だからそいつらは力に耐えきれずに基本的に5年以内に死ぬ。1年で死ぬやつもいれば10年くらい生きてる奴もいる。」
「そう、なの…?」
「ああ、と言うかぶっちゃけ私も知らん。」
「ええ…。」
なんか聞いていた話と違う、でももし、アースランド様が5年以上生きられるなら希望があるかもしれない!!
「見てもらいたい人がいる、ヤマタドナなら寿命とかわかる??」
「んー、お前の寿命は私同様永遠だけど見たところ九尾の分身か。本体は私並みの魔力があるな?」
いや、本体見てないのにわかるもんなの?
「え、我寿命ないの!?」
「さぁ、本体呼べ。そしたらわかる。」
「そうなんだ。」
「ああ、だから呼べ。」
「今?」
「今。」
「え、嫌だけど。」
「なんでだよ!?」
「今、夜中の2時だよ!?寝てるに決まってるでしょ!?」
現在外は真っ暗です。
「ちっ、睡眠必要な身体なんかよ。まだまだだな。」
「てか我じゃなくて見てもらいたい人は別なの!」
「なんだよ、早くそれ言え。」
「いや、言ったじゃん。」
「…しゃーねぇ、朝まで待つか。」
「我寝るけどどうするの?」
「寝るけど。」
「寝るなら先に風呂入ってきて、臭い。」
「…お前、以外と失礼な奴だな。」
「それでこの子がヤマタドナ?」
「はい、見てもらおうかと思って。」
朝が来てアースランド様を朝イチに連れてきた。
「おい、随分と私と態度がちげーじゃねーか?」
「我はアースランド様以外には基本的にはこんな感じだけど?」
「ほーん。」
「我は女性には優しいからね。」
「私のこと臭いって言ったじゃねーか!?」
「アマコちゃん、流石に臭いとか言っちゃ駄目だよ。」
「すみません、気をつけます。」
「…それで、見てほしいのはこいつか?」
「うん、アースランド様。」
「わかった。」
アースランドは刻印を出すとヤマタドナはマジマジと観察する。
「へー、ほーん?んー?」
「どうしたの?」
「あとひと月だな、寿命。」
「は…?」
頭をバットでフルスイングされた気分だ。
「いや、なんで…!?」
「わりぃが諦めろ。龍以外の使う刻印とはそういうもんだ。」
「どうにもできないの!?」
つい肩を掴んでしまう。
最後の希望が失われた。
「…できねーよ。」
「クソッ…。」
本当にあと残り一ヶ月なのか…?
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「刻印を他人に与えることは出来るが、与えた側は死ぬからどうしようもねーな。」
あとひと月で終わり…?
我が一度死んだから…?
どうすればいい???
「アマコちゃん、心配しないで。こうなる覚悟出来てたから、私は大丈夫。」
「でも…。」
貴女が大丈夫でも、我は大丈夫じゃない…。
「最後に思い残さないようにしろよ、こればっかりは私にもどうにもできねー。」
クソッ…、クソッ…!!
「私も終わりなんだ…。」
「恐らく刻印の使いすぎだな、龍以外は使うと黒文様が広がってく、だいぶ広まってるだろ?」
「そっか、てっきり5年は大丈夫だと思ってたから…。」
「これ以上は使うなよ。」
「…わかった。」
「我はどうしたらいい…?」
「…アマコちゃん、私まだ、やりたいことあるから付き合ってくれる?」
「…。」
「アマコちゃん…?」
「やだ…。」
ギュアッ。
時空間の歪みが現れる。
「ったく、って、おい!どこ行く!」
「アマコちゃん!!」
無意識に時空間魔法を使ってしまう。
今は誰もいないところに逃げたい。
もう何もかも嫌になってこの先の未来を見据えることが出来ない。
アースランドが死んだあともずっと生き続ける地獄を味わうならいっそ死んだほうがマシだ。
ひと月しかないのはわかって、隣にいてあげるべきなのもわかってる。でも、やっぱり怖い。
目の前で死ぬあの人を想像したら暴走するかもしれない、いっそそれならもう会わずにアースランドが死ぬまで待つべきなんだろうか。
目を閉じて眠りにつく。暫くこうしていたい。
「んなとこに逃げんなよ。」
「ぇ。」
目の前にヤマタドナとアースランド様がいる。
一瞬で追いつかれた。おそらくこいつからは逃げられない。
「なんでここが…?」
「んなもん魔力を感知してたどるだけだ。」
「そう…。」
「アマコちゃん…。」
「…逃げて、ごめんなさい。アースランド様が一番辛いはずなのに。」
「ううん、ずっと探してたんだよね。刻印の消し方。」
「何も見つけられなくて、ごめんなさい…。」
「大丈夫だから、最期まで一緒に居て?」
「はい…。」
とりあえず領地に戻ることになった。
(こういうシリアスなの苦手なんだよなー。)
ヤマタドナは重い空気が苦手で少し存在感を消していた。




