祝福と絶望
メイド・アマコは神星眼を開眼した。
神星眼は九尾の力を完全に支配することが出来るようになる九尾専用の瞳力。
本来目には見えない魔力の流れや相手の魔力量なども目で捉えることが出来る。
身体能力、主に動体視力が向上して、全雷狐も隙がなくなった。
他にも色んな魔法を応用して作り出すことも出来る。おそらく神星眼も母の血の影響か魔法に関することはほぼ全て可能になっている。
神星眼改とか神星眼V2とか神星眼G2と言ったところ。いや、名前が超次元すぎるか。
暴走もせず、力を全開にしても意識が乗っ取られない。
我にとって神星眼の開眼は嬉しい限りだった。
今は命を狙われることはなくなり、今まで以上にアースランド様と一緒にいれることが出来る時間が増えた気がする。それでも寝るのは別々で、時々一緒に寝るくらい。
だけど、アースランド様の身体には刻印が刻まれた。
我の一時的な死によって、世界に祝福されてしまった。ふざけやがって。
タイムリミットが来るまでになんとかしないといけない、絶対に。
でも、なにも手掛かりが見つからない。
刻、一刻と時間は過ぎていく。
あとひと月でヤマタドナが目覚めることになるまでになってしまった。
もしかしたらヤマタドナに聞いたら解決出来たり、しないかな…。
ヤマタドナ暗殺計画も我が防衛に加わり鉄壁になった。
龍の島にいるのは分身だけど、他の龍とは打ち解け、今では仲が良い。
「ここが龍のいる島」
「ほう、お前が九尾か。今までとは違うな。」
「エルフとの混血でね、ちょっと特殊なんだ。」
「…お前、クウコとセレスティアの子どもか?」
「うん、そうだけど。母さん達の知り合い?」
「ああ、たまに飯に行く仲だった。」
「そっか、色々話聞かせてよ。」
「いいだろう。」
この国もここ数年は戦争はなくなっている。
アースランド様のお陰でもある。
けれど、いつまでこの幸せが続くんだろう。
我はアースランド様の居ない世界に、魅力を感じない。
だって、ここまで生きて来られたのはあの人のお陰なんだから。
あれから背は伸びて15歳になった。
今では身長が160cmまで伸びた。それでもちっちゃいか…。
アースランド様は我より10cm以上大きいし。
まだ八尾の力は解放してないから父さんと会うのは少し先。まだ完璧じゃないから、もう少し九尾の力を扱えるようになりたい。
「アースランド様、成人おめでとうございます。」
「ありがとう、アマコちゃん。」
アースランド様が20歳を迎えた、寿命はあと3年と少し。
「これ、プレゼントです。」
「プレゼント?」
青色の魔石の指輪を左手の薬指に嵌める。
「綺麗…。」
「我の魔力が込められていて、ピンチの際はいつでも駆けつけられます。」
魔石にマーキングしていて、神星眼のと合わせて瞬間移動が可能になる。これでいつでも飛んで行ける。
「そっか、ありがとう!」
「どういたしまして。」
「でも私も強いからあんまり使わないかもよ?」
「アースランド様は強いので、そんなに心配してないですよ。」
今この国で勝てるのは我と龍くらいだ。
「そっか、でも、ありがとう。」
「はい、それとお時間ありますか?」
「あるけど、どうしたの?」
「今から、お出かけしませんか?」
「いいよ、今日は休みだからね。」
「ありがとうございます。」
「ううん、今日は特別だから…。」
「おめでたい日ですからね。」
「うん、準備して行こっか。」
「はい。」
二人は手をつないで街へ出掛ける。
「お昼、なににする?」
「それならカフェ行きたいです。色々食べたいなって。」
「うん、そこの店でいい?」
アースランド様が指をさす方向には見たことないお店があった。
「この店は?」
「この前出来た新しいお店、美味しいんだって。」
「そうなんですか、…よし、行きましょう。」
「早く食べたいんだ?」
「…はい。」
「あーんしてあげるね?」
「じ、自分で食べられますよ…。」
「ふふ、照れちゃって可愛い。」
「ここで頭は撫でなくていいですから!?」
二人は目の前のカフェに入り、メニューを開く。
「…すごく色々ありますね。」
「なんかパフェだけでも沢山あるよ…。」
イチゴパフェにバナナパフェ、ジャンボミックスパフェ。
もちろんメロンパフェもお忘れなく存在している。
「んー、我はピザリピエーナ食べてみたいです。アースランド様はどうします?」
「それなら私もピザにしようかな?私はマルゲリータでお願い。」
「はい、それでは注文しますね。」
「ありがと♪」
二人はメニューを注文し、到着を待つ。
厨房の奥ではJammo Ja!と謎の声が聞こえる。
「なんて、言ってるんだろう…。」
「…流石に私もわからないかな。」
しばらくするとピザが届く。
美味しそう、これがピザ…。
サンドされてるピザ…?
「vai vai!」
「いや、何語!?」
謎の言葉に翻弄されながらもカフェを楽しんだ。
「ふー、美味しかったね。」
「はい、かなり美味しかったです。」
「3枚くらい食べてたもんね。」
「…美味しくてつい。」
なんか、めっちゃあーんしてもらってて恥ずかしい、個室だから良かったけど。
「このあとはどうする?」
「この後は服を買いに行きましょう。」
「服?なんか、珍しいね。」
「最近私服のサイズがなくなってきて、買いに行きたいなって。」
「だったら選んであげるよ。」
「ありがとうございます、もちろんアースランド様の服は我が選びますね。」
「私も買うの!?」
「アースランド様はズボンばっかりなのでたまにはスカート姿が見たいです。」
そう、ミニスカート姿を拝みたい。
「え、わ、私に似合うかなぁ?」
「似合いますよ、ほらほら行きましょう。」
「えー、そんなぁ。」
それから二人は服を見に行き、日が暮れるまでおでかけを楽しんだ。
「ミニスカートだなんて…。」
「どうかしましたか?」
「…えっち。」
「はい、我はえっちです。」
「自覚した!?」
帰宅後の夜、アースランド様に部屋に呼ばれる。
「どうしましたか?」
「今日は、一緒に寝たいなって。」
「珍しいですね。」
「うん、たまには甘えたいかなって。」
「どうぞ、何時も我が甘えてばっかりなので。」
両手を広げておいでする。
「ふふ、ありがとう。」
我の胸のなかに飛び込んでくる。
たまには甘やかすのも悪くない…。
「ねぇ…。」
「はい。」
「…アマコちゃんは私がいなくなっても平気?」
「…平気なわけ、ないですよ。」
「そう、だよね。」
「我が必ず刻印をどうにかしますから、まだ諦めないでください…。」
我も覚悟を決めないと…。
一緒にいられる時間はもう、少ないんだ。
大人しく腹をくくれ、いつまでもこんな関係じゃ駄目だ。
「…うん、ごめんね。ありがとう。」
「…。」
「…アースランド。」
…覚悟を決めろ、俺。
「アマコちゃん…?」
「…目、閉じてください。」
時間がないんだ。
「んっ!?」
目を閉じると唇を奪って押し倒す。ここまで健全な付き合いしかしたことがなく、ちゃんと告白したことなんてなかった。
「ぷはぁっ…。アマコちゃ!?」
「んっ。」 「ん!?」
再び唇を奪い、主導権を完全にこちらの者にする。
もう、ここまで来たんだ。全部想いをぶつけろ。
「アマコちゃん、どうしたの…?」
「…我は、アースランド様のことが好きです。」
「…。」
「生まれたときから、ずっと。」
「ありがとう、でも私は…。」
「…もし仮に、最後までどうすることが出来なくても、我は死ぬまで貴女の隣にいます。」
「…。」
「我は貴女の護衛であり、今はもう騎士です。この国を守るよりも、貴女一人の命のほうが我にとっては重い。」
「それはちょっと、重いかな…?」
「…あくまで比喩表現です。」
「そっか。」
「だから、えっと。その、愛してます。」
「…ありがとう、アマコちゃん。私も貴方の事が好きです。だから、これからも一緒に居てください。」
「…ありがとうございます。アースランド様。」
二人は始めて想いを口にして、再び唇を重ねあった。
えっちなことしたんですね?




