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春夏秋冬の公式企画のテーマを入れ替えて作品を作ってみた(2023年版:パターン6)  作者: 大野 錦


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もしも秋の歴史2023のテーマが「隣人」だったら  【題名】:隣人を救うために

春のチャレンジ企画2026(テーマ:仕事)と、私のチャレンジ企画の作品です。

2023年度の企画のテーマをシャッフルしています。

ジャンルは「歴史」、テーマは「隣人」です。


「なぜ私がこのように地獄に落とされているのですか!? 私は何も悪いことをしていません!」


「そなたの書いた物語が問題視されているのだ」


「そんな! 私の書いた物語が問題?」


「だから、そなたはそのように一部のものから、猥雑なものを書いた、と誹謗を受けているのだ」


「ですが、私としては趣味でコツコツと書き上げたものですのに……」


 ある男と女が対話をしている。

 女は地獄に落とされていた。


 男は厳格な裁判官のような感じ。

 女は知的な学者肌な感じ。


 女はある物語を書き上げたのだが、後世の一部から「人の欲をあおる罪深い書物」とみなされ、女は地獄に落ちた、と断言されていて、実際に地獄にいる。


 男はこの女を救済するために「移された」のだ。

 

 何故なら、大半の人々は女の書物を素晴らしいものとし、地獄に落ちた女やこの書物の主人公たちを救おう、とする風潮が出てくる。


 男が「移された」のもその一部だ。


 男がその女の書いた物語を精査すると、そこまで非難される理由は見出しえなかった。


 男は冥界で冥官の仕事をしている。

 彼は、仕える閻魔大王に、女には何の罪も無いと説明する。


「お前の言うことは尤もである。その女とそしてその物語に出ている者たち全てを地獄から救おう」


 閻魔大王が決定した。



 冥界で冥官の仕事をしているのは小野(おのの)(たかむら)

 生年は802年で没年は853年。

 平安初期に生きた人物。


 政務能力に優れ、それだけでなく、当代において漢詩や書において右に出る者はない、とされている。


 特に著名な逸話は、昼間は朝廷で官吏として仕事をし、夜間は冥府において閻魔大王のもとで裁判の補佐の仕事をしていたという伝説だ。


 京都市東山区の六道珍皇寺に「冥土通いの井戸」、その旧境内に「黄泉がえりの井戸」がある。

 篁は閻魔大王からお呼びがかかると、「冥土通いの井戸」で冥府に赴き、冥府での仕事が終わると「黄泉がえりの井戸」で現世に戻っていた。


 冥府で仕事をするようになった理由が面白い。

 少年時の篁は帝の庭園で釣りをして、その池の主の龍神を怒らせ、地獄に落とされた。

 閻魔大王がその理由を問うと、篁少年はこう答えた。


「今、干ばつで人々は苦しんでいます。ですので私はわざと龍神を怒らせ、大雨を降らせるようにしたのです」


 これに感心した閻魔大王は自身の手伝いをしている僧が、引退を願い出ていたので、こう答え彼を現世に戻した。


「お前が成人したら、次の冥官に任ずる」


 こうして成人した小野篁は、今風に言えば冥官を副業として行うことになる。



 その小野篁が地獄より救ったのが紫式部。

 説明するまでもなく、『源氏物語』の作者である。

 生年は970年(978年?)で没年は1014年(1031年?)

 平安中期に生きた人物。


 彼女の正式な仕事は藤原彰子(ふじわらのしょうし)(あきこ、988年~1074年)の女房。

 つまり家庭教師。

 彼女もまた漢学に秀でていたことで有名。

 彰子の父親は藤原道長(ふじわらのみちなが)(966年~1028年)である。


 小野篁と紫式部は同じ平安時代の人物だが、約一世紀半の隔たりがある。

 それでは、なぜ両者の逸話があるのか?


 何と両者の墓は隣り合っているのである。

 

 紫式部が地獄に落ちた、と信じた後世の人々が、冥府の冥官をしている小野篁に彼女を救ってもらおうと、小野篁の墓を紫式部の墓の隣に移した、という説がある。


「ありがとうございます。あなたのおかげで私は救われました」


「いやいや、そなたの書いた物語は不朽の名作として、世界の文学史上に名を残しますぞ」


 この両者の隣り合った墓は、京都市北区堀川北大路の交差点の近くにある。



もしも秋の歴史2023のテーマが「隣人」だったら  【題名】:隣人を救うために 了

次はジャンルが「童話」、テーマが「帰り道」です。

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【短編、その他】

【春夏秋冬の公式企画集】

【大海の騎兵隊(本編と外伝)】

【江戸怪奇譚集】
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