もしも冬の童話祭2024のテーマが「帰り道」だったら 【題名】:帰り道、新たな世界での仕事のために
春のチャレンジ企画2026(テーマ:仕事)と、私のチャレンジ企画の作品です。
2023年度の企画のテーマをシャッフルしています。
ジャンルは「童話」、テーマは「帰り道」です。
1
ある病院。
いえ、厳密には病院ではありません。
そこは重病を抱えた子供たちが住む「こどもホスピス」と呼ばれる施設です。
そこに小学3年生くらいの男の子が暮らしていました。
この男の子は小児がんという重病を抱えているのですが、すごく前向きで体調がすぐれているときは元気に遊びまわっています。
また、他の入居している子供たちに冗談を言って笑わせたりしているムードメーカーです。
「オレは病気なんかに負けない! 将来はここのホスピスの人たちのような『やさしい人』になるんだ!」
男の子はいつもそう言っていました。
こどもホスピスにはみんなで遊べる広い部屋、みんなで学ぶ教室もあり、男の子は同じ年くらいの子供たちと、学校の勉強をしたり、遊んだりしています。
ですが、この男の子を初め、みんな介護が必要だったり、病状が悪化して部屋から出れず、併設された病院のお医者さんがやってきて、子供たちの病状を診ていることもあります。
男の子もときどき何週間も部屋の中で治療のために閉じこもったまま。
そういったことがあるので、通院でも一時的な入院でもなく、このようなホスピスで暮らしているのです。
2
ある日。
この日は男の子が前から楽しみにしていた日。
男の子の両親がやってきて、家族三人で男の子が大好きなサッカーの試合を観戦して、ホスピスへの帰りには両親は三日間泊まるのです。
このように入居している患者の家族はもちろん、お友達も泊まれることができるのがホスピスなのです。
両親がやってきて男の子は大好きな選手がいるチームのホームスタジアムへ。
その選手は小児がんを患っている男の子のことを知っていたので、定期的にホスピスを訪れていました。
試合はなんとその選手がハットトリックをして勝利!
試合後にその選手は男の子にサイン入りのユニフォームを渡しました。
「すっげ~! ユニフォームありがとうございます!」
「また、機会があったら行くからな!」
試合後スタンドに近づいたその選手は、男の子と約束をします。
こうして一家はスタジアムを後にして、ホスピスへの「帰り道」へ。
3
ホスピスに到着すると、男の子はある老人がたたずんでいるのに気づきます。
この老人。
白いスーツ姿。長い白髪はきれいに後ろに束ねられ、同じく長く白い口髭とあげ髭。
手には杖を持っていますが、背筋がピンとし、歩行に問題はないようです。
老人が男の子に声を掛けます。
「キミは『やさしい人』に感謝をしているんだね。『やさしい人』探しの『仕事』とか興味がないか?」
「うん。だってそうじゃないとオレもう生きていけないもん! その『仕事』おもしろそうですね」
「そうか。いい子だ」
そこで両親が男の子を呼ぶ声がします。
どうやら両親にはこの不思議な老人に気づいていないようです。
「……かわいそうに、あの子の命はあと半年ほどか。望めばワシの世界で『仕事』をしてもらおう」
老人はホスピスへ戻る男の子の後ろ姿を見て、そう呟くのでした。
4
この出来事から半年後。
男の子の病状は悪化し、男の子は意識を失い、ベッドに横たわったまま。
男の子にはいろいろな医療器具がつけられ、お医者さんや看護師さんが付きっきりです。
男の子の両親も呼ばれ、両親はお医者さんから「最善はつくしますが、覚悟のほどを」と告げます。
男の子につけられた医療器具。
脳波と呼吸をしめす数字はどんどん低くなります。
そして、ついにどちらも「ピー」と鳴り、お医者さんが男の子の心音と脈と瞳孔を確認します。
「死去が確認されました」
男の子の両親は泣き崩れます。
◇ ◆ ◇ ◆
ここはどこでしょう?
魔界でしょうか? 妖精界とも、もののけが住むところといっていいかもしれません。
ようするに私たち人間が、踏み入れることができない異世界だと思ってください。
この世界へ、あの男の子が現れました。
「では、改めて聞くが、『やさしい人』探しの『仕事』をする気はないか?」
「あれ? あなたはいつかのおじいさん?」
「ここでは『お館様』と呼ばれておる」
以前のスーツ姿でなく、白いローブをはおり、長い白髪は下ろされ、手にした杖は巨大で先端が独特な形状です。
「はいっ! オレ『やさしい人』探しの『仕事』がしたいです!」
「ではついてくるがよい」
こうしてお館様と呼ばれる老人についていく男の子の姿は変化していきます。
灰色の肌。濃い灰色の服。頭から二本の黒い角。
「やさしい人」探しの世界への「帰り道」。
その世界への「帰り道」を進む男の子は、人間だった時の記憶を徐々に忘れていきます。
この異世界に来た男の子は、その見た目から周囲の仲間たちから「チビ」と呼ばれるようになりました。
彼らは「クネヒト」とよばれる、サンタクロースの使い魔たちです。
サンタさんである「お館様」がクネヒトが紹介する、その年でいちばんのやさしい人にプレゼントを与えるのです。
それがクネヒトとなった「チビ」の「仕事」なのです。
もしも冬の童話祭2024のテーマが「帰り道」だったら 【題名】:帰り道、新たな世界での仕事のために 了
春夏秋冬の公式企画のテーマを入れ替えて作品を作ってみた(2023年版:パターン6) 完結
という訳で最後の童話は私の「チビとネコ(とでかゴリラ)」シリーズのチビがクネヒトになった経緯を書きました。
(ネコがクネヒトになったのがこのシリーズの一番最初の話です)
まさかこの春のチャレンジ企画で、私のチャレンジ企画をまたやるとは思いませんでした。(「チャレンジ」がかぶってわかりにくいですね!)
どれもテーマが二重でジャンル縛りをしたので、苦戦しましたが、個人的には「よくこんなの思いつくよな~」と自分で自分に感心です。(何、この自己満足)
まぁ、さすがに3話目の歴史(テーマ:仕事+隣人)はちょっと無理やりな感がありますが……。
あと1話目の「夢野兄妹」シリーズは個人的に書いてて一番楽しいです。(次が「チビとネコ」シリーズです)
1話目のあとがきにも書きましたが、奈歌の復活話をそろそろやろうかな、と思っています。
ここまでのお付き合いありがとうございました!m(__)m
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