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海の女王と陸の花  作者: 天谷あきの


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38/43

裏切り

 少しの間、コンスタンスはそのままそこに座り込んでいた。


 コンスタンスが落ち着いたのを見て取ったのか、鴉がまたすり寄ってきた。そのすべすべした羽根を撫でながら、コンスタンスは考える。望んだわけではなかったけれど、パトリシアの存在が、今までずっとコンスタンスを守ってきた。今日まで、コンスタンスはエスメラルダのこの大きな問題を全く知らずに来たのだ。そのせいで、大勢の人が被害を被った。マイラもエリックも。父も母もその被害者に入るのだろう。それからたぶん、〈兄〉も。


 ――何か大きな役目を背負った。

 ――せめてもの(はなむけ)に、姫は彼に“シャトー”を贈った。


 コンスタンスは今、大勢の人々の犠牲の上に生きている。


 マイラのお母様が亡くなった――たぶん――のも、その犠牲に含まれる。エリックの変節も、きっと、パトリシアが偽物であると知った絶望によるのだろう。パトリシアが嘘を付き続けるのもコンスタンスの身代わりを務めなければならないせいだ。そう考えてコンスタンスは身震いをした。


 なんて罪深いのだろう。


 〈本物〉のエルカテルミナが、エスメラルダで育てられていたら、パトリシアのように育っていたのだろうか。【最後の娘】の制止に耳を貸さず、〈扉〉を開くよう強要し続け、国民を〈毒の世界〉に通わせて、いつか破滅を呼び込むようになる――そんな事態が〈本物〉によって引き起こされる事態だけは避けようと考えた、苦肉の策だったのだろうか。


「……でも、こんなの間違ってるわ」


 コンスタンスは今は何も映さない〈水鏡〉を見つめて呟いた。

 誰も傷つけない善良な嘘ならば別だが、この嘘はあまりに重すぎて、色々な人を飲み込みすぎた。刻一刻と事態を悪化させていく嘘は、できるだけ早いうちに暴かれ、糺されるべきだ。今まで何も知らずにその嘘によって守られてきた自分に、逃げる権利などあるわけがない。


 ――この嘘が、マイラまで飲み込んでしまう前に。


 ずっと秘密を守ってきた重圧が、彼女を圧し拉ごうとしている。あの子に責任なんてあるわけないのに。生まれる前から存在していた大きな嘘に、否応なしに荷担させられただけなのに。


「でも、今のところは大丈夫よ。……まだ」


 あの頼もしい無鉄砲な王子様が、マイラをパトリシアから引き離してくれた。〈信者〉たちに危機を告げたから、それでも逃げなかったのならマイラにはもうどうしようもない。フェルディナントとマイラはきっと次の場所に危険を伝えに行ったはず。


 眉を顰めて思案する。ならば、次にできることは何だろう?


「……ティティさんは、今何してるのかしら」

 呟いた瞬間、〈水鏡〉が揺らいだ。





 美しい珊瑚礁でできた迷路を、ものすごい速度で泳いでいる。四肢を委ねた瞬間に《《私》》は思わず歓声を上げそうになった。うっとりするような美しい景色の中をなめらかに滑っていくのはとても劇的な体験だった。


 ――おや。


 ティティさんは人魚だからなのか、本来の〈水鏡〉の持ち主だからなのか、初めから私が〈やってきた〉ことに気づいた。面白そうな思考の色。


 ――これは不思議。貴女、〈水鏡〉の中に入っておるのか。

(そうみたいなんです。どうやってるのかはわかりませんが……これが普通じゃないんですか?)


 ――いや、聞いたことがないな。まあよい。今は取り込み中ゆえ少し待ちやれ。


 言ってティティさんは、再び移動に専念した。私はティティさんに身を委ね、めまぐるしく流れていく色とりどりの珊瑚礁に見とれた。フェルディナントの背中に乗って走った時とは違い、水の流れに一体化している実感があって、恐怖もなくただただ爽快だ。


 どこに向かってるんだろう。

 呟きが聞こえたらしい。ティティさんは短く答えた。


 ――姐様を追跡中じゃ。

(ウェルダ、という名の――)


 ――違う。もうひとりの方じゃ。

 もうひとり?


 疑問に思った瞬間、視界が開けた。


 少し先を泳いでいた人魚が振り返り、声にならない悲鳴を上げる。ティティさんはあっという間に距離を詰め、「姐様――!」人魚に掴みかかった。人魚は手にしていた小さな袋をティティさんに投げつけ、逃げようとした。ティティさんは袋を払いのけ、彼女の行く手を阻もうと水流を起こした。水流に巻き込まれて人魚が悲鳴を上げる。


「ティティ、……ティティ! やめぬか!」

「やめませぬ!」


 姐様は水流を退けようとしたが、ティティさんの方が強かった。水たちはどちらに与するべきか少しだけ迷って、ティティさんの命令に従うことを決めた。姐様はじたばたし、暴れ、振り回した手がティティさんの頬を引っぱたいた。長い爪先がティティさんの頬を浅く切り、ついで美しい髪を掴んだが、それでもティティさんはたじろがなかった。水流を操って姐様を押さえつけ、髪を掴んだ姐様の腕を掴み返す。姉様の方がティティさんより大きいのだが、存在の強さはティティさんの圧勝だ。


 まるで女王と小間使いのように、立ち居振る舞いからしてぜんぜん違う。周囲にかしずく水たちも同意見のようで、ティティさんの命令に喜々として従う。


 ティティさんは姐様を押さえ込み、宣言した。


「……姐様。儂の考えを言わせてもらう」

「聞きとうないわ、この裏切り者!」


「裏切ってなどおらぬ。姐様もおわかりのはずじゃ。姐様方のしていることこそ、世界全てに対する裏切り行為ではないか」


「銀狼は生きておるのじゃ……!」


 姐様は必死でティティさんの手をふりほどこうとしているが、ティティさんはびくともしない。暴れて、掴んで、引っかくたびに、ティティさんの傷が増えていくが、ティティさんは全くひるまなかった。


「銀狼は生きておる! 呼びつけてやるのじゃ、それのなにが悪い!?」

「姐様。銀狼を呼びたければまず謝罪が先では」


 姐様は激高した。「謝罪じゃと!?」


「そうじゃ。銀狼を呼びたくば、まず儂らが折れねば。儂らが匿うておるあの子供たちを全て〈外〉に追いやり、もう二度と匿うたりはせぬと誓い、それをもって膝を屈すれば、銀狼は――生きておれば――戻ってこよう。姐様。それができるか」


「できるわけっ」


「そうじゃ。できぬのじゃ」ティティさんはひどく哀しげに言った。「……儂にもできぬ。あの小さな気の毒な仔らを、無垢な小さな生き物を、あの過酷な〈外〉に追い出し、〈毒〉にまみれ、飢えて渇いて満たされることを知らぬままさまよい続ける境遇にすることなど、儂には絶対にできぬ。……じゃから仕方がない。銀狼と儂らはどうしてもその一点で歩み寄ることができなんだ。じゃとすれば、もう一度会って何とする。もう一度物別れになると解りきっているのに」


「和解の必要はない。人間に懸想した銀狼がおるのじゃ」


 姐様は、もしかしたら、そう言えばティティさんがひるむだろうと思ったのかもしれない。勿体ぶった、切り札を出すときのような言い方だった。

 でもティティさんは軽く頷いた。


「それが?」

「そ――それがじゃと!? ティシティアリナフェイミス、そなた悔しくはないのか! 人間じゃぞ!? 儂らが劣化版に過ぎぬ貧相な小娘など――じゃから奪ってやるのじゃ、それのどこが悪い!?」


「どこが、と聞かれたから答えるが、姐様、儂には悪い点しか思い浮かばぬ。奪ってどうするのじゃ。人間を伴侶と定めた銀狼を、例え人間から奪うことができたとして……心までは奪えぬ、姐様はそれで良いのか」

「かまわぬ!」


 悲鳴のような声で姐様は言った。泣き笑いのような声だった。


「かまわぬ、かまわぬかまわぬ! 人間ごときに懸想した銀狼などの心など、そもそもが禄なものではないわ! じゃからどう扱こうてもかまわぬ、そうではないかえ。水の中なら儂らが勝ちじゃ。捕まえて、閉じこめて、牙と爪を抜き、好きなときに好きなだけ愛でられる愛玩動物にして飼ってやるのじゃ。どうじゃ、これならば人間を引き裂かずとも子孫を――」


「……姐様。牙も爪も抜かれて閉じこめられた銀狼は、もはや銀狼とはいえぬ」


「人間に懸想した時点でもはや銀狼の資格などないわ。邪魔するでない。これ以上我を張ると、銀狼を捕らえた後にどんなに泣いても触らせてやらぬぞ」


「そんなことのために世界すべてを危険にさらすというのか。姐様、誉れ高き麗しの姫に顔向けができるか! そのような愚かな策に賛同する人魚など――」


「おや。そなたの自慢の妹は大喜びで従ったぞえ」


 姐様の言葉に、ティティさんが愕然とした。

 一瞬腕がゆるんだ隙に、姐様は手をふりほどいて距離をとった。なぶるような、残忍な笑み。


「そなた、リエルダに言い含めて、ルファ・ルダの周囲を取り囲む〈人魚の骨〉を回収させたそうじゃな。四つのうちの二つ……それを儂が持っているのはなぜじゃと思う」


 ティティさんはまだ驚きから立ち直っていなかった。血の気の失せた唇から、うめき声がこぼれ落ちた。


「……リエルダが。まさか」

「リエルダは聞き分けのよい子じゃもの。銀狼を捕らえ儂らが飼えば、あの子もようやく愛を知る。泣いて喜んで、それ、そなたを裏切り儂にその〈骨〉を届けにきたのじゃ。ルファ・ルダの周囲に穴が開いていなくば破滅を完全には呼び込めず、銀狼をおびき出せぬかもしれぬからの」


 くくく。笑って、人魚は少しティティさんから距離をとった。ティティさんは追わなかった。さっき人魚が投げ、ティティさんが払いのけた小さな袋が、珊瑚礁の隙間に落ちている。


 ティティさんはそれをじっと見ている。

 リエルダ――私を鴉に変えフェルディナントを銀狼に変えた、あの底意地の悪い人魚の名だ。


 ――儂にはリエルダ以外、信頼できる相手がおらぬのじゃ。


 ティティさんは確かにそう言っていた。リエルダのへそ曲がりを詫びながら、それでも、フェルディナントを銀狼に変えた手並みに感心し、成長を喜んだのは明らかだった。


 ――その唯一の相手が、裏切った。


 と、それがふわりと浮いた。人魚が操った水流が、その袋を人魚のところに運んでいく。


「邪魔をするな。リエルダにも、小さな子たちにも愛を教えてやれ。それが人魚の、ひいては世界のためにもなるはずじゃ」

「……そんなもの」


 ティティさんがさっと動いて、その袋に飛びついた。人魚があわてて取り戻そうとするが、ティティさんは寸前で飛び退いた。その手に、しっかりと袋が握られている。


「そんなもの愛とは言わぬ。あの誇り高き銀狼を閉じこめて愛玩するなど絶対にさせぬ……!」

「自慢の妹にさえ裏切られたくせに! たった一人で何ができる!」

「恥を知れ! もはや貴女――そなたは我が姐ではない! 二度と儂が前に姿を見せるな!!」


 ティティさんは泣いていた。袋を握りしめてそこから逃げ出した。泳ぎながら袋の口をくつろげると、確かに、マイラがあのとき回収していたものと似た装置が二つ、縮められて入っていた。


 なんてこと、と、私は思う。

 リエルダは確かに底意地の悪い人魚だった。私たちに意地悪を言い、フェルディナントには呪いまでかけた。でも。


 ティティさんの教えを裏切り、ティティさんに命じられた〈窓〉を、あの人魚に届けに行ったなんて。


「……儂が愚かであった」


 かすれた声でティティさんが言う。マイラの時とは違い、ティティさんの心と同化しておらず、それが本当にありがたかった。慰める言葉も見つからない。


「コンスタンス。みっともないところを見せてしもうた。……儂は恥ずかしい。我が一族があんな――あそこまで墜ちていたとは。銀狼を……あの銀狼を閉じこめて飼うなど……そうまでして温もりが欲しいか。なんて浅ましい」


 若い人魚を育て、責務を投げ出さず放り出さず、人間に協力する心をはぐくんでいく――ティティさんはそれを自らに科した人魚だ。人間など、と蔑む姐様たちを宥めて、愛を知らない小さな子たちを、それでも自棄にならないようにと育ててきた、はずだ。


 その大切な妹であるはずのリエルダの裏切りは、ティティさんにとって余りに酷だ。


 人魚が追ってこないのを確かめて、ティティさんは珊瑚礁の陰に身を潜め、尾鰭を抱えてうずくまった。叩かれても引っかかれても、凛として顔を上げ、女王のような威厳に満ちていた先ほどの姿が、嘘のような、幼子のような寄る辺ない姿だった。


 この人を暖めてあげたいと、心底思った。

 どうして銀狼しか、この人に温もりを与えてあげられないのだろう。


(……私、まだ、〈兄〉の名前も顔も、思い出せていないんです)


 言うとティティさんは、くすん、と鼻を鳴らした。


「そうか。……貴女の根幹をなすもっとも強い感情が動力になったからこそ、未来に飛び込むなどと言う前代未聞の出来事を起こせたのじゃろうな」


(ええ……でも、少しは覚えてる。優しくて……とても素敵な人。あの人だからこんなに愛してる。記憶がないのに、それでも、感情は変わらないの。名前なんてどうでもいい。身分だってどうでもいい……シャトーじゃなくなっても、ちっとも構わない。私があの人に望んでいることは、とても簡単なこと。自分の思うとおりに幸せに生きてほしくて、できればその隣に私もいたいと思う。だから)


「……」


(……だからこそあの人の心を蔑ろにして、どこにも行けないようにして、私の都合のためだけに閉じこめておくなんて絶対にできない。他の誰にだって、そんな仕打ちを許したくない。ティティさん、貴女のお気持ちは、とてもよくわかります。それが誇りと言うものよ、そうでしょう? 貴女のような方が人魚の中にいるから、私はやっぱり、人魚は素敵な種族だと思うわ)


「……そんなこと」


 ティティさんはぐいっと頬をこすった。


「貴女に言われずとも百も承知じゃ、馬鹿者」

(あら、それは失礼いたしました)


 冗談めかして言って、私は笑った。ティティさんも笑った。人魚はやはり追いかけてきておらず、珊瑚礁の中は穏やかな静けさに包まれている。


 ティティさんは今も銀狼を愛しているのだと、私は思った。

 それはなんて、悲しいことなのだろう。


「……さておき、次の手を考えねば。先ほどちらりと見えたのじゃが、姐……ウェルダはのう、人間の男を連れ帰ったようじゃ。顔も姿もよく見えなんだが、腕の立つ……かなり強い力を持つ男。どうやら毒によって命を奪われかけたところをウェルダが助けた。今、治療中じゃ」

(人間の男……)


 腕の立つ、かなり強い力を持つ男、と聞いて、真っ先に浮かんだのはエリックだ。エリックはエスティエルティナに楯突いた。周囲の若者たちは、彼へ反感を抱いたようだった。それが行き過ぎて、誰かが毒を盛ったのだろうか。


 私の思い浮かべたエリックの形相をティティさんも見て、首を傾げる。


「この男かもしれぬ。誰じゃ」

(マイラのお兄様です。パトリシア……ええ、その、エスメラルダで今、エルカテルミナと崇められている女性の恋人だそうで……)


 私はかいつまんでエリックについて説明した。といっても、私が知っていることはそう多くはない。マイラが美しい宝剣を抜いて、説明しろと迫った。周囲の反応からして、あの行動はかなり決定的なものであったはずだ。なのにエリックはそれを無視した。挙げ句、マイラを殺そうとまでした。


 昨夜は和解するつもりだった。でも、今朝になって変貌した。それはたぶん、愛するパトリシアが〈偽物〉だったと知ったから――という私の説明に、ティティさんは軽く頷いた。


「わかった。とにかくその男は自棄になっており、ウェルダら人魚の手駒になりそうじゃな。……のう、コンスタンス。人間が手に入れておる〈人魚の骨〉――あなた方の〈窓〉と呼んでおったものは、数はどれくらいあるのじゃろうか」


(マイラが回収した〈窓〉自体は、そうね、数は二十かそこらだったと思います。今、ロビンソン商店というお店で、細かく分けていると思います。できるだけ大勢の人を外に逃がさなければなりませんから……)


「ふむ……細かく分けておるとな」

(ええ、ひとりひとりに配って、外に出られるようにしてあげなければならないでしょ?)


 ティティさんはしばらく考えていた。

 ややして、頭を整理するように口に出した。


「細かく分けておるなら、ひとつひとつはそれほどの脅威ではないのじゃ。……わかるかえ。〈歪み〉は、それぞれくっつきあおうとする性質を持っておるゆえ、人ひとりが通り過ぎるくらいの隙間ならすぐにふさがるものなのじゃ」

(そうなのですか)


「そうじゃ。じゃから……〈窓〉の残りは儂が全部持っておるし、細かく分けられた〈骨〉を無視してよいとすれば、残る脅威は既に回収され、かつ、まだ細かくされておらぬ〈窓〉。それから」


 ティティさんは顔を上げて私を見た。


「細かく分けられた〈骨〉を元通り繋ぎあわせることができる、職人じゃ」

(職人……?)


「〈人魚の骨〉は扱いが難しい。素養も必要じゃし、技術も要ろう。職人の数はそれほど多くないはずじゃが、一人でも捕らえられ脅迫でもされ、〈骨〉を加工するようなことがあってはならぬ。……貴女は体にお戻り」


 ティティさんが言った瞬間、浮遊感が私を包んだ。すうっと浮いて、ティティさんから離れていく。

(あっ)


「職人は儂に任しやれ。エリックが治ればきっと〈窓〉か〈職人〉を奪いに行くはずじゃ。……銀狼を呼ぶためには世界が危機にさらされねばならぬ。残っておった四つの〈窓〉は儂がすべて手に入れたが、他の〈窓〉をもう一度、〈壁〉のどこかに設置されれば、そこから破滅が漏れる。……のう、コンスタンス」


 遠ざかっていくティティさんは、優しい笑みを浮かべていた。


「見ておるしかできぬと嘆いておったが……自分が今、いかに重要な役目を担っておるか、理解した方が良いぞ」


 ティティさんはもう、幼子のようには見えなかった。目元が少し赤いけれど、微笑みはとても強くて、美しかった。


「愛しい花よ。貴女がこの世を愛しておれば、この上ない福音じゃ」


 その言葉を最後に、ティティさんが見えなくなった。

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