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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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第218話:星空野シータの移籍


「は? なんと?」


 相手の事務所の社長が自分の耳を疑っていた。気持ちはわかる。俺がそう提案されても、自分の耳を疑うだろう。エンタメプロが最大手のプロダクションに星空野シータの移籍を提案されたのだから。


「我が社のドル箱を買いたいと仰る?」


「ええ。是非に」


 ニコリと笑顔でサヨリ姉はそう答えた。さすがに胃腸の弱いエンタメプロの社長がトップスターを大手事務所から買いたいなどと申し出るのは苦行というか、胃腸のさらなる悪化を懸念されるので、代わりにサヨリ姉が来ていた。


「困りますよ。エンタメプロさん。あの娘は我が社の宝だ」


「に、しては雑に扱っているようですが?」


「昨今の社会への影響は痛恨でした。けれども既にスキャンダルは払拭されていますし、これからも我が社で稼いでもらうことになっています」


「契約の満了が近づいているとか。このまま契約を星空野シータさんが継続されると仰られますか?」


「そこは星空野と我が社のことですので。エンタメプロさんには関係ないでしょう」


「そうですね。では精神神経科に通って仕事に復帰できない星空野シータさんが契約満了が来るのを待とうと思います。御社との契約が切れれば、我が社としても大手を振ってスカウトできるというものですしね」


「絶対に契約は継続させます。残念でしたな。御社の思う通りには行かせませんよ」


「ええ、頑張ってください」


 ニコニコ笑顔でサヨリ姉はそう言った。俺はお茶を飲んでいるだけ。なんで俺が大手事務所の社長室にいるのかも、自分ではよくわかっていないのだ。


「わかりました。では頑張ってください。マアジちゃん。帰りましょう?」


「マジで何しに来たんだ」


「ま、シータちゃんを保護できればなって思ったけど。相手が頑ななら交渉する理由も無いし」


 別にエンタメプロも星空野シータがどこの事務所に所属していようと関係ないのは事実だが。


「ちなみに移籍金は幾らを想定されていますか?」


 相手の社長が聞いてきた。


「即金で一億。他にはありません」


「話になりませんな。星空野シータはいるだけで十数億稼ぐアイドルです。移籍金が一億円だけなど、どの会社も納得しないでしょう」


「そうですね。なので契約満了を待ちます。その後だったら移籍金もなくスカウトできますし」


 不条理な事実をサヨリ姉はあっさりと言った。たしかにこのまま星空野シータが相手の事務所と契約を継続することはあり得ないだろう。その意味で、移籍金の話をしているだけサヨリ姉は相手に譲歩している。精神的に追い詰められている星空野シータに仕事を強要できるわけもなく。そのまま契約が切れれば仕事の契約金以外は残らないで、ハイ終了。


「即金で十億。それなら交渉の余地がありますよ?」


 相手の社長が、そう提示した。


「いえ、却下です。そもそも一億以上動かせないので。そっちと値段交渉する気はありません。私どもは一億以上出す気は無いのです」


「ではお話は終わりですね」


「ええ、お時間を取らせてすみませんでした。それでは」


 あっさりとソファからサヨリ姉は立ち上がる。相手の社長は顔色を変えず、だが交渉を終わらせる気は無いらしい。


「即金で七億。これが限界です」


「それでは同業同士。頑張っていきましょう。今日はありがとうございました」


 あっさりと立ち上がって、サヨリ姉はコートを持って部屋を出ようとする。俺もそれに従った。


「七億ですよ? この後星空野シータが十四億稼げば、御社に七億の利益が出る」


「ではー」


 聞く気が無い。というかそもそも話にならないのか。社長室を出ていくサヨリ姉と俺。総括マネージャーとはいえだ。そもそも俺がここにいるのも変な話。一応エンタメプロの社員がいた方が話もスムーズだという思惑なのだろうけど。


「はー。無駄な時間だった」


 事務所を出て、車を回してもらう。そうして駐車場で待機していたドライバーに車を回してもらう。


「本気で一億で交渉する気だったのか?」


 俺が聞くと、


「もちろん」


 とサヨリ姉は笑顔になった。


「エンタメプロに移籍すればここよりは経済規模が小さくなるし。一億以上は出せないわよ」


 まぁ話は分からんじゃないが。


「それにシータちゃん。もう契約を継続する気ないみたいだし。後でゆっくり話し合いましょう」


 そうすればタダ同然で星空野シータが手に入るわけだ。


「すみません。社長がお呼びです」


 秘書の方が、事務所の前で送迎車を待っていたサヨリ姉を呼びとめる。


「いえ、交渉する気は無いので。一億で移籍させる気が起きたら、その時にお願いします」


 今星空野シータは精神的に追い詰められていて、通院をしている。仕事も一切ストップ。事務所としても頭の痛いところだろう。星空野モトネにいたっては何をかいわんやだ。既にアイドルを止めており、ネットではモトネに対する悪辣な非難が轟々と荒れ狂っている。首吊ってなきゃいいけど。


「社長が五億ならいいと」


「それでは今日はお時間を取らせてすみませんでしたね」


 営業スマイルで秘書の方に微笑みかけて、サヨリ姉は送迎車に乗る。もちろん俺も。本気で交渉しないらしい。一億以上出す気が無いのだろう。そうして、そのまま車で去っていって。サヨリ姉はスマホを弄っていた。俺は疲労を覚えて、溜息。そもそも高校生にアイドルの移籍交渉に召喚するなという話だが。


『私はエンタメプロに行きたい』


 星空野シータからコメントはそんな感じ。だからサヨリ姉も大手事務所からシータを買い上げようとしたわけだ。結果は不成立でフィニッシュだったが。


『契約が切れるのもそう遠い話じゃないだろ』


『ま、ね』


『その後で社長がスカウトするから』


『マアジ。ありがとね♡』


 それを俺に言われても。対応したのは父者とサヨリ姉だし。俺は何もしてない。


「ドライバーさん。申し訳ないんですけど。また戻ってくださる?」


 サヨリ姉が運転手にそう言う。


「相手が折れたか?」


「ええ、一億で移籍させてくれるって」


 まさかサヨリ姉が本当に帰るとは思わなかったのだろう。もはやその時点で交渉の余地なし。星空野シータという企業財産で最大の利益を得るにはエンタメプロに一億で移籍させるのが最も効率がいい。とはいえだ。相手側からしたら足元を見られた交渉だと思われるだろう。まぁ実際にその通りではあるのだが。


「さて、じゃあ契約に行きましょう」


 星空野シータがエンタメプロに、か。


「いっそオメガターカイトに所属させる?」


「それもいいかもな」


 そうすると性癖が真っ当なアイドルがオメガターカイトに入るわけだが。いやしかし星空野シータがオメガターカイトに加入すると、センター争いが起きないか? 俺としてはルイの継続的にセンターをして欲しいのだが。とはいえホシガリのセンターであった星空野シータが格下アイドルグループで端っこ扱いもそれはそれで炎上しそう……。


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