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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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213/220

第213話:ラブホテルとは魔境である


「…………どもっす」


 とある日のとある時間。まぁとは言っても朝の十時なのだが。まだ春休みで、学業からは解放されているので俺としても暇ではある。ただ相手の方が暇と言っていい時間があるとは思えなかったが、それでもスケジュールをねじ込んで、今日という時間を作った。


「ふーん?」


 艶やかな黒髪。モデルにぴったりの体系。愛嬌のある顔だが、とある都合でサングラスをして顔を隠している。そのサングラスを少しだけ下にずらして俺をねめつける様に見て、そうして言う。


「八十五点」


「それは高得点と思っていいのか?」


「まぁ八十五点満点だしね」


 何ソレ。と思いつつ、プッと吹き出す。彼女がジョークを言っているのだから、笑わなければ失礼だ。


「っていうか仕事はいいのか?」


「今日のことがあるから全部オンスケしてきたよ」


 そりゃご苦労なこって。そんなわけで俺と駅で待ち合わせをしているのは、国民的トップスター。ドルオタじゃなくても名前と顔を知っている超有名人。言わずともわかるだろうが星空野シータだ。


『デートしないか?』


 と釣り針を放り投げてフィッシュを待っていたら、まんまと釣り上がった。


『デートしてくれるの!? 行く行く! じゃあスケジュール決まったら連絡するね!』


 というわけで、乗り気で仕事をオンスケして、星空野シータは俺とのデートの一日の時間を獲得したわけだ。まぁ俺には……というか佐倉財閥には別の思惑があるのだが、ソレをここで言っても意味無いしな。そうしてまたサングラスをかけて一般人のフリをして、星空野シータは俺の腕に抱き着いた。


「じゃ。デート楽しもうね!」


 晴れやかにそう言ってくれるのは嬉しいのだが、何と申していいものか。


「はー。美味しい」


 で、最初に行ったのは今流行りのパフェ専門店で、彼女は先着順の特製パフェを食べていた。俺はケーキセット。昼飯前にそんなバカデカいパフェが食えるか。こっちの胃袋は通常営業なんだよ。


「美味しいか?」


 胸やけのする光景だが、彼女は平然とパクついていた。


「大丈夫大丈夫。腹二部」


 マジで? どうなってんの? お前の胃袋。


「太っても知らんぞ」


「ああ、体質的に太らないから」


「ああ、そ」


 ルイ辺りが聞いたら刃傷沙汰になりそうな発言だった。ルイはマジで摂取カロリーを消費するためにアニメを見ながら一日二十キロはエアロバイクを漕いで、一時間くらいランニングしている。プロ意識が高いのはいい事だが、そこまでしてあの身体だ。目の前で特製パフェ食いながら細い腰をしている星空野シータを見れば斬首刑でもおかしくない。俺はケーキを食べながら、目の前の大きなパフェに架空の胸やけを覚えていた。見るだけで食い気が衰退する情景だ。まぁいいけど。


「さて、そうすると」


「次は昼御飯?」


「そうだな。そうするか。何かリクエストは?」


「肉!」


 マジで女性の敵だな。お前。


「じゃあ……」


 サヨリ姉に助言を頼む。美味しい肉が食える場所をシミュレートしてくれ。と願い出るとネットで噂のハンバーグ屋を教えてくれる。


「ハンバーグでいいか?」


「構わないよー。大好きだし」


 もういっそ星空野シータを太らせるための政治的理由で飯を奢っていると考えた方が精神的にも健全かもしれない。


「うーん。美味しい」


 パフェを食べた後、速攻でハンバーグ屋に行ったのは正解だった。時間的に開店の十分前。それでも列ができていたので諦観も覚えたが、そもそも時間なんて一日あるかと考え直し、三十分ほど待って入店。俺は百五十グラムのハンバーグ定食。シータは三百グラム。マジかお前、と思った俺を責める人間はいないだろう。あれだけのパフェ食った後で時間差なく三百グラムのハンバーグは体積の問題として有り得ない気がするが。


「大丈夫大丈夫。全部食べるから」


「まぁお前がいいならいいんだがな」


 そうしてマジでハンバーグを食べ終えて、俺が会計。今日のデート代は全部俺が出す。その様に事前に星空野シータには言ってあった。


「ゴチでした」


「ああ、まぁお小遣いは結構貰ってるからな」


「さすが佐倉コーポレーションのマネージャーさんですね!」


「だよなー」


 そこは俺にも否定できなくて。このままどこに行こうかと思っていると、マンガ喫茶を提案された。


「マンガ読むのか?」


「時間があるときは読むようにしてるよ? 特に人気タイトルはねー」


 テレビで話題作りでもあるのだろう。


「そう言えば、マアジって腐男子だったよね? この作品は知ってる?」


「無論。神×蔵推しだ」


 ここら辺の話の合わせは心得ている。というかイユリと一緒にBL同人誌買ったし。あくまでサークル推しでな! そうして三時間ほどマンガを読んで。その間にシータはベタベタ俺に引っ付いてきて。


「ね~ぇ。このマンガ面白いね?」

「ちょっとエッチだけどドキドキするね?」

「マネージャーさんの好みのヒロインは?」

「この子ちょっと私に似てない?」


 あれやこれやで堕としにかかっている。別に付き合ってもいいのだが、相手の事情を鑑みるとなんだかなぁ。


「さて、それじゃあ。解散するか」


「その前にちょっと寄りたいところがあるんだけど……」


「どこだ?」


 言われて、そのままタクシーを呼び止めるシータ。


「あ、タクシー代は私が出すから気にしなくていいよー」


 そうしてタクシーが発進して、そのまま駅近くのちょっとだけ離れた場所にあるラブホ。


「お前……」


「いいでしょ? 今日付き合ってくれたお礼♡」


「そういう問題でもないんだが」


 ラブホテルに星空野シータと一緒に入る。そのことに何も思わないのは無理というもので。ついでに彼女が何に突き動かされてこんな真似をしているのかも知っている。今ならまだバカなことを止めろとチョップしてジョークで終わらせられる。だがそれも虚しいだけだろう。このまま首を吊られても面倒だ。


「じゃあ一回だけな」


 はーあ、とため息をついて俺は頭をガシガシと掻いた。あくまで相手が誘ったから俺が乗った。そう言う体裁を整えなければならない。とは言ってもここまでも計画の内なので、まぁどうにでもなれという気もしないではないのだが。


「言っとくけど、俺のアレは大きくないぞ」


「私の処女だから試行錯誤だね!」


 フンス、と鼻息荒く覚悟を決める星空野シータ。マジで俺がこのままやっちゃったら、最後まで行っちゃうのだろう。もちろんそのつもりは俺には無いが。童貞はルイとタマモに捧げるつもりだし。これから行うことは高度に政治的な何か。政治関係ないけど。ま、でもこのスキャンダルで星空野シータの値段が下がるのなら願ったりではあるんだが。


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