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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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211/220

第211話:全てを知って


「以上が星空野シータを取り巻く環境だ」


 …………。


 何を言えと?


「あやー。まさに芸能界の闇だねー」


 サヨリ姉は気楽そうに笑っているが、多分笑い飛ばしたいのだろう。そこら辺は長い付き合いだ。サヨリ姉も盛大に引いている。星空野シータのカバンと部屋に盗聴器を仕掛け、スマホの会話も記録して、得られた情報を整理すると。


「枕営業でセンター取ったモトネが、その結果人気に火がついたシータの破滅と、スポンサーの坐古乃コンツェルンの指示で、俺と寝て佐倉コーポレーションの株価を下落させろと強要されているわけだ」


「そういうことになるな」


 もはやマジで何をか言わんや……だ。


「さて、それでだ」


「坐古乃コンツェルンを潰すか?」


「企業として出来んでもないが、そんなことに金を使うと株主に怒られる」


「だよなー」


 それはまったく俺も同意だ。坐古乃コンツェルンを潰すにしても火種と火薬がいる。ついでに盗聴で得た情報に証拠能力は無い。さて、そうすると。


「まずはお前の意見を聞きたい。どうしたい?」


 父者、マダイは俺を見て言う。どうしたいって言われてもな。助けたい気持ちはあるが、俺が介入していいのかも意味不明だ。これで余計なことになったら、最悪星空野シータは首を吊るだろう。そこまで彼女を追い詰めると、俺は責任がとれん。死ぬまで後悔することに手をツッコむほど、俺は不幸な人生は歩んでいない。楽しく、健やかに、お気楽に。


「星空野シータを助けたいという思いは、お前が一番持っているだろう。そのお前が首を突っ込まないのなら私から言えることはそう無いぞ」


 その場合は、話はここで立ち消えて、佐倉コーポレーション……というか佐倉財閥は静観の姿勢を崩さないのだろう。俺もそれが最も賢いと思っている……んだが。


「助けたい」


 ブスッとして、不機嫌そうに俺は言った。別に人道上とか、博愛主義とか、そういう話じゃない。溺れる奴の藁になれればそれでいいんじゃないか。その程度だ。


「覚悟はあるか?」


「あるか。そんなもん」


 そもそも助ける算段も無いのだ。先に覚悟が決まるはずもない。


「くくっ……」


 俺が溜息をついて落胆していると、面白そうに父者が笑った。


「何か面白い事でも言ったか?」


「私はマアジのそういうところを買っているんだよ」


「何も決断できず、女子が困っているのに自分の打算を考えている俺をか?」


「ああ、変に凝り固まった思想を持っていられるよりよほどいい」


 そりゃどうも。っていうかモトネが坐古乃キヤラと枕営業ね。そういやホテルのパーティーの時は俺に媚びを売っていたな。妹を抱かせるというのもこのためか。


「つっても助けるってもどうするんだ? 星空野シータを買い取るのか?」


「無論。そのつもりだ」


 あっさりと父者マダイは言ってのけたが、それはそれで馬鹿げた話だ。トップスターの移籍金となれば億の金が動く。人気絶頂の星空野シータの移籍金となれば十億要求されてもおかしくない。


「で、だ。その大物を安く買いたたくにはどうすればいいと思う?」


「えーと……」


 俺は助けを求めてサヨリ姉に視線を送る。


「……ニコニコ」


 笑顔満面で俺の答えを待っているサヨリ姉。こりゃ期待薄だな。


「教えてくれ。俺は何をすればいい?」


 両手を上げてサレンダー。そもそも経済的な知識と応用では、この二人に勝てるはずもなく。そうして、星空野シータを助けて、佐倉コーポレーションのためにもなり、ついでに坐古乃コンツェルンを叩きのめす。その最適解をマダイとサヨリ姉は説明した。


「いや、あの、それを……俺がするので?」


「お前以外に出来んだろう」


 そりゃそうだが。社会の批難が俺に集中するんだが。スキャンダルどころの話じゃなくなるぞ。


「だからその後――――」


 いや、それ違法だろ。


「無理を通せば?」


「…………道理が引っ込む」


「よくできました」


 パチパチとサヨリ姉が拍手する。コイツ等。マジだ。俺の事情なんて勘案……していないわけじゃないが、使い潰せるものはミカンでも搾り取る。まぁそれでもこの前のアユがしようとした俺ごと特攻させる作戦でないだけまだ良心的ではあるが、それにしてもと言ったところ。


「そもそも、マアジちゃんはモトネが許せる?」


「…………」


 沈黙は図星の証だ。痛いところを突かれたのは、俺にとっての真実。


「というわけでぇ……」


「その前に」


「もちろんルイちゃんとタマモちゃんには説明が必要よねー」


 全部わかっている……か。まぁそれくらいはサヨリ姉も読めるよな。


「というわけでどうか説明の義理を果たしたく」


「もちろんいいぞ」


「いいですとも」


 父者もサヨリ姉も笑顔で頷いた。もちろん説得の材料は持たせた上で。どこまでも優しいルイとタマモだが、俺にだって彼女らの彼氏として仁義を通す必要がある。とは言ってもこの盗聴記録を聞いて、ルイとタマモが思うことなんて、俺には手に取るように。


「じゃあ今日のところは失礼して」


「こっちにも準備は諸々あるから。あとスマホは覗くけどいいよね」


「構わんよ」


 どうせ見られて困るものはエッチな奴以外は入ってないし。それもルイとタマモの管理下にあるので今更だし。


「じゃ、行こっか。マアジちゃん」


「サヨリ姉も付いてくる気か?」


「んにゃ? マアジちゃんのマンションまで送るだけ」


「さいですかー」


 まぁサヨリ姉にとっては俺はハグできる唯一の人物だし、その意味で俺は彼女の唯一無二だと知ってはいるんだが。


「じゃあマダイパパ~。あとよろしく~」


「任せなさい」


 サヤカの時といい、本当に甘いよなー。まぁその寛容さがあるが故に、今の佐倉コーポレーションがあるんだろうけど。ロシアンマフィアの脅しにも屈さない社員が働いているというのは、ウチの強みでもある。


 佐倉財閥に恩義を感じ、そのためなら命も賭けられるビジネスマン。空恐ろしいにもほどがある。


「さて、じゃあマアジちゃんのアパートへレッツゴー」


「サヨリ姉もいい人見つけろよ」


「そだねー。他にもエルフがいればいいんだけど」


 中々そう上手くも行かないのが世の中というもので。


「しっかし。マジでどうしたものか……」


 父者とサヨリ姉の言っていることを分かった上で、俺にとっては針の筵だ。社会的に制裁されて、そのままケロッとできるほど俺は人格者じゃない。ネットの誹謗中傷なんて受けたことないが、聞くにかなり辛いらしい。ソースは有名なアイドルアニメ。


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