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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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208/220

第208話:お仕事とお仕事と個人的な事情


「じゃ、行くかー」


 俺はルイとタマモと一緒にワゴンに乗って、今日のレッスン場へと出向くことになった。


「マアジ。シータちゃんだけど……」


「…………大丈夫でした?」


 どこまでを持って大丈夫と言えるのかも中々な。


「ストレスをため過ぎなんだよ。そんなこったから調子を崩すんだ」


「とか言いつつ心配してるぞ」


「…………まぁ許可したのはあたしたちですけど」


「もう二回ほど見舞い行ってるぞ?」


「桃缶を届けるだけの簡単なお仕事」


「…………とにかく今日は歌のレッスンです」


 そうしてレッスンに向かう。


「――――♪ ――――♪ ――――♪」


 そうしてレッスンは始まり、七人が同時に唄う。さすがに歌が上手い。七人とも仕上がっている。とすると、俺に出来ることはそう無く。


「――――♪ ――――♪ ――――♪」


 高温に淀みがない声で、七人が歌いきる。


「おー」


 パチパチと拍手する。そうしてオメガターカイトのレッスンを見ていた俺は、そのままメンバーをねぎらう。


「ねえ。佐倉くん。ちょっと出ない?」


「いいが。どうかしたか杏子?」


「ちょっと元気ほしいかなって」


 まぁ俺と話すことで元気が出るならそれもいいが。


「マアジ♪」


 で、レッスンステージから少し離れて、それから杏子は俺に抱き着いてきた。ちなみに他のメンバーは休憩している。俺と杏子をストーキングする気は無いらしい。


「どうだった? 私のパフォーマンス」


「素人目に分かるわけないだろ」


「でもさぁ。そこはやっぱり正当な評価が欲しいわけで」


「まぁよくやってる方じゃねーの」


「もっとパッションありきで褒めてよー」


「準最高でした」


「最高は?」


「ルイかなー」


 歌に関して言えば図抜けている。俺の推しでもあるし。ルイのアイドルに対する意識ってあまりに高すぎてなんだか鬼気迫るものを感じる。ソレをどうにかするのもマネージャーの使命なんだろうけど。俺としては、最も評価が高いのはルイに相違ない。


「佐倉くんの浮気者……」


「はっはっは。残念だったな」


 皮肉で俺が煽ると。


「ん♡」


 杏子はキスをしてきた。不意打ちで俺の対処は不可能。というか、可能だったとしても彼女のキスを拒絶することが出来ただろうか。俺は缶コーヒーを買って杏子に放り投げる。


「後半のレッスンも頑張れよ」


「まっかせて! 誰よりも上手くなるから」


「それができれば今頃センターだろ」


「ルイはズルいよ。あんなに可愛くておっぱい大きいのに、歌もダンスも超一流」


「だからオメガターカイトのファンの三割五分はルイ推しだしな」


「佐倉くんも?」


「俺は箱推し~」


「前みたいに私を推してよ」


「お断り申し上げます」


 そこだけは譲れない。


「身体を捧げるから」


「いりません♪」


「そんなんだから佐倉くんは童貞なんだよー」


「うるっせえなー。童貞で何が悪い」


 責められるべきことでもないだろ。俺が童貞なのは事実だが。ま、だからってソレをコンプレックスに思ったりもしないんだが。


「ほら、レッスンに戻れ」


「絶対私に振り向かせてあげるんだから」


「頑張れよ」


 まったく心のこもっていない声で俺は言った。実際に興味も無いし。そうして休憩時間が追わり、オメガターカイトのレッスンが始まる。


『今何してるー?』


 で、俺のスマホにメッセージが届く。病院に入院している星空野シータだ。


『オメガターカイトのレッスンを見ている』


『さすがマネージャーさん』


『回復は順調か?』


『そこそこかなーって感じ。マネージャーさんがお見舞いに来てくれると体調の回復が早まるんだけど』


『つまり俺が見舞いに行かなければホシガリは衰退すると』


『そうなるねー』


 たまに思うが星空野シータって大物だ。


『じゃあ勝手に空中分解してくれ』


『そこを何とかー』


 じゃあ桃缶でも見舞いの品に持っていくか。既に二回持っていってるし。


『桃缶は却下だよ?』


 じゃあミカンの缶詰だな。


『たまに思うけど、マネージャーさんってゲイじゃないよね?』


『多様性の時代だし、別に否定はしないが俺の性癖では無いな』


『BL同人誌買ってるのに?』


 くそぅ。ルイが余計なことをバラすから。


『ま、マネージャーさんが腐男子でも私は何とも思わないから』


『それは重畳』


『で、結局マネージャーさんはオメガターカイトの何がいいの?』


『可愛いところ』


『私より?』


『比べるべくも無いな』


『そこはさぁ。私の顔を立てるとところじゃない?』


『ああ、嘘ついたことないからさ。俺』


『そんなことを平然と言うよね。マネージャーさん』


 悪癖だな。そうしてオメガターカイトの歌のレッスンを聞く。誰もが上手くて俺の耳が幸せ。星空野シータとイランをしながら、オメガターカイトを愛でることも忘れない。そうしてレッスンが終わって、そのまま帰宅。俺はルイとタマモと帰ることになった。杏子はこの際放置。


「じゃあお茶しようよ」


「…………あたしもお茶したいです」


「じゃあ麦田珈琲店に寄るか」


「いいね。ゆっくりお茶しようだぞ」


「…………シータちゃんはどうですか?」


「良くもなく悪くもなく」


 そもそも俺と接触させていいのか?


「良くは無いけどさー」


「…………シータちゃんの気持ちも分かりますし」


 そんなもんかねえ。


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