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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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205/220

第205話:マダイさんの子煩悩


「で、スターガーリー51の内情を探れと」


 今ここにいるのは俺と、それから父者の佐倉マダイ。あとはサヨリ姉だけ。


「内情というか」


 既にスマホでは話しているが、説明責任を持ちだされ、仕方ないので俺は佐倉コーポレーションの本社ビルに顔を出していた。マダイの仕事部屋には余計なモノが一切なく、ただ接客用にあるソファに俺とサヨリ姉が座って。そうして三人でコーヒーを飲んでいた。コーヒーを淹れてくれた秘書さんは席を外している。さすがに聞かせるわけにはいかないのは三人の共通の意識だ。


「ホシガリの星空野シータが……ねぇ」


 コーヒーを飲みながら、サヨリ姉がホケッという。ここで動揺していないのは、事態を軽んじているというより、俺への信頼だろう。ルイとタマモと付き合っている俺が、いくらトップスターとはいえ星空野シータに手を出すことはないという。まぁそうじゃないと佐倉コーポレーションの信用問題になるから当然ではあるかもしれないが。


「御父上はどう思っていらっしゃって?」


「少なくともスターガーリー51の星空野シータが理由もなくマアジに近づく……というのは考えられんな」


「でもマアジちゃんイケメンだし。一目惚れならあり得るのでは?」


「プロ意識を持ったトップスターがか?」


 問題はそこだ。俺と芸能生命を秤にかけて、全社に傾くことがあり得ない。そんな人間であればとっくに星空野シータは破滅している。だがそれをわかった上で俺にコナをかけてきている。そのことが不可思議でしょうがない。そこは皮肉にもこの三人が共通して持っている考えだ。いくら俺がどういう男でも、仕事上、そういうことをするはずが星空野シータにはない。皮肉にもその信頼を星空野シータは俺たち三人から勝ち得ているのだ。


「恋……じゃないとすると」


「何かの不都合を狙っている。話はそうなるな」


 サヨリ姉と父者の結論はそうなる。


「とは言っても芸能人生命を失ってまで何をしたいのか」


 俺が頭をかく。そこが意味不明にもほどがあるのだ。


「ホシガリの事務所公認か?」


「それこそありえないだろ。数十億円を棒にふる様な真似をプロダクションが許可するか?」


 そこも御尤もな意見だろう。言っている俺が言わなくても分かることを言っているという意味で不毛だ。


「とすると……」


「事務所じゃない……」


 じゃあなんだって話になると。


「スポンサーの意向か?」


 マダイがそう推測する。あながち間違ってもいないが、そのためにホシガリのシータちゃんを使い潰すとするとどういう理由が?


「あー」


 サヨリ姉が納得したようにうなずいた。ちなみに俺にはわからない。


「ってことは」


「だろうな」


 あのー。二人だけで納得しないで。


「事務所のスポンサーが坐古乃コンツェルンなのよ」


 ……………………。


 そこで坐古乃キヤラという人物が出てくる。俺の童貞を笑っていた遊び人。


「マアジと星空野シータを寝せて、スキャンダルを……ってところか?」


「そうなるのかな? マアジちゃんが乗るわけないとは思うけど。やり様は幾らでもあるし」


 つまり競合による工作。そのために星空野シータというジョーカーを切ってきたわけだ。そういや星空野モトネも妹を抱かせるのどうの言っていたな。


「それをシータも了解しているのか?」


「さすがに拒否は出来ないんじゃない。所詮アイドルだし」


 スポンサーは絶対……か。世知辛い世の中だ。


「とすれば、たしかにホシガリの内情を探るのは必定だな」


「こういうことに長けているのって」


「セインボーン・サーキュラーにでも頼むか」


「イリーガルな手段に抵抗がなくなることに、ちょっと懸念はあるけどねー」


「というわけで、マアジ。星空野からアプローチがあっても乗るなよ」


「まぁそうだよな」


 俺としても見え見えのハニートラップにかかるわけにもいかないし。というか童貞を消費するわけにもいかないし。


「マアジちゃんの童貞はお姉ちゃんのモノだしね♪」


 いえ。違いますよ?


「まぁ逆らう奴は毒殺すればいいし」


 どうしよう。下手をするとアユ並みに厄介だ。


「にしても坐古乃コンツェルンね」


「実際どれくらいの規模なんだ? なんかこの前のホテルの出資はうちの十倍とか御曹司が自慢していたが」


「まぁ佐倉コーポレーションにとっては雑魚かなぁ」


 あ、やっぱりそうなのね。


「取締役とは仲良くしているけど、こういうことがあるとちょっと対応考えちゃうよね」


 サヨリ姉も結構苦労しているしな。


「じゃ、まずは星空野の事情を洗うか」


「セインボーンならいくらでも非合法の手段使えるしね」


 っていうか傭兵会社に探偵の仕事できるの?


「情報収集って意味でなら探偵よりえげつないわよ?」


 それもそれでどうよ。


「ま、別に叩いてホコリが出なかったなら、その時はその時で」


「まぁ確実に出るだろうな」


「よねー」


「マアジとしては星空野には何とも思っていないのだな?」


「まぁ恋人いるし。シータちゃんより可愛いし」


「それもそれでどうかとは思うが」


 既に勝手知ったるマダイさん。だがそこは俺の恋愛を否定するほど厳しいことを言えないのだろう。こういうところは子煩悩。


「じゃ、内情についてはこっちに任せろ。マアジは適当に星空野を躱せよ」


「さっさーい」


 それくらいは余裕だ。むしろ簡単すぎて安請け合いしてしまう。


「っていうか、それをするとしても、鬼札を切るか? 普通」


 結局佐倉コーポレーションを貶めたいなら、ホシガリのアイドルでも売れてない奴を生贄にした方がコスパいいと思うんだが。


「話題性じゃない?」


 まぁ星空野シータはトップオブトップではあるが。


「何か。まだ見逃していることがあるような……」


「そこを調べると言っているのだ」


 マダイが断じるようにそういう。


「じゃあお願いしますね。父者」


「任せろ」


 それで話は終わり。


「マ~ア~ジ~ちゃ~ん?」


 猫なで声でサヨリ姉が俺の顎に手を添える。


「何でしょうか。お姉さん」


「お姉ちゃんと夕餉しない?」


「そのつもりで予定は空けてあるぞ」


 言われずともその程度は予想して然るべき。ルイとタマモには勝手に食えと言ってある。


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