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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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202/220

第202話: 毒島さんは気になる


「へっへっへ。コイツは上玉だぜ」


「くっ! 殺せ!」


 姫騎士リンゴが俺を睨みつける。


「殺すわけないだろ。こんないい女。たっぷり楽しんでやるから覚悟しろよ?」


「やめろ! お前に犯されるくらいなら! あぁ!」


 云々。目覚めはどんよりしているが、まぁ楽しんだか楽しんでいないかで言えば楽しんでしまったのだが。リンゴがくっころを好むというのは知っているが、屈辱を与えられるのを性癖にしているのか。俺ともちょっと性癖が合う。いやSではないつもりなんだけど。


 事後の処理は、まぁいつも通り。そうして家を出て、学校へ。今日の予定をスマホで見て、それから杏子とリンゴの仕事が入っていることを確認して、そのまま了解の返事。仕事は昼からなので、午前中が暇をしている。俺はスーツを着たまま近場の図書館に向かった。さすがにオメガターカイトと一緒に行動するほど馬鹿じゃない。


「佐倉?」


 で、図書館で優雅に時間を過ごそうと思っていると、知り合いに遭った。誤字で無いのであしからず。


「何してんの?」


「読書以外に何かあるか?」


 俺は流行りのライトノベルを手に取りながら、毒島さんにそう応答していた。そうして「じゃあな」と手を振って、ライトノベルを読もうとしたのだが。


「ちょっと待ちなさいよ」


 その俺をどう思ったのか。グイと俺の襟を引っ張る毒島さん。


「聞きたいことがあるの」


「五秒でまとめてくれ」


「あの女何?」


「あの女?」


 どれのことだ?


「春休み前に校門であんたを待っていた女」


「あー」


 説明できるか。変装した星空野シータとか。そもそもトップスターが俺を学校の校門で待っているとか、どうやったら角が立たずに説明できる?


「もしかしていかがわしい関係?」


「んにゃ? どこまで行っても他人」


 それだけは間違いない。


「で、誰?」


「山田花子さんと申しまして」


「そんなバレバレの偽名で誤魔化そうっての?」


「説明が難しいんだよ。ネタバレ無しで話すわけにもいかないし」


「ネタバレ無しで話しなさい」


「お断りします」


 さすがに星空野シータはビッグネーム過ぎる。


「彼女?」


「滅相もない」


 そんな悪夢があってたまるか。


「さてそうすると」


「お茶くらい付き合いなさいよ」


 図書館の内部に喫茶店がある。そこに連れていかれた。


「毒島さんは何がしたいわけ?」


「自分にもわからない」


「そりゃ災難なことで」


 へッと、俺は嘲笑った。そうしてコーヒーを頼んで、ソレを飲む。


「たまにあんたがわかんなくなるわ」


「ここにいるだろ。質量としては存在してるぞ」


「フェルミ粒子だしね」


 案外科学知識もあるらしい。


「そもそも何? あんた彼女とかいるの?」


「いるぞー」


「誰?」


「黙秘」


「角夢?」


「冗談じゃねーな」


 冗談程度なら、まぁまだ理解はできるんだが。


「誰よ?」


「誰だろうなー」


「…………ボソボソ(あたしに十倍返ししたくせに)」


「何か言ったか?」


「何も」


 ブスッとして毒島さんは視線を逸らした。


「で、俺の恋人を聞きたくてお茶に誘ったのか?」


「そんなところね」


「別にいてもいいだろ?」


「…………ボソボソ(あたしをその気にさせておきながら)」


「うん。ここのコーヒーも美味いな」


 俺は借りたラノベを読みながらコーヒーを飲む。そもそもここは図書館。本を読む場所だ。コーヒーで一息つきながら流行りのラノベを読むのは心が癒される。


「あんたね。そうやって女にいい顔をしてるの?」


「していないといえばウソになるがな」


 女性によく見られたいのは男子の本能だろ。


「誰にでもいい顔してるんでしょ?」


「まぁ」


 だから何だとしか言えないわけで。


「彼女がいるのに?」


「人に優しくされると自分の気持ちが安らぐだろ」


「そんなこと言われても……」


「毒島さんにはそういう人がいないと」


「いるけど」


 へー。そりゃまた面倒そうな相手がいたもので。


「じゃあこの前の変人は恋人じゃないのね?」


「他にいるしな」


「満足してる?」


「そりゃもう」


「チッ」


 舌打ちしたか? 今。


「なんでじゃあ……」


 じゃあ? じゃあ何だ?


「……………………別に何でもない」


 お前がそう言うなら、俺から言うこともないのだが。コーヒーを飲んで、読書に戻る。


「ホント。アンタって奴は……」


 呆れたように毒島さんがそう言って、彼女も読書に戻る。そうして二人で会話を交わすこともなくコーヒーを飲みながら読書をして、そのまま解散。俺は即日本を返して、家に持って帰ることをしない。借りてもいいんだけど、我が家では本を借りるとソレを忘れ去ってしまう程度には忙しい。


「…………」


 だから図書館に行っても、本を読むだけで持ち帰ることはしないのだ。


「さて、時間だな」


「予定でもあんの?」


「ま、バイト感覚だけどな」


 毒島さんの疑問にそう答え、俺は肩をすくめた。


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