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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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200/220

第200話:柳に釘【星空野シータ視点】


「マネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさんマネージャーさん」


 スマホを片手に連打でコメントを打つ。とにかくマネージャーさんをどうにかして堕とさないと。姉さんが私のスキャンダルを望んでいる。そしてその姉さんが枕営業をしている坐古乃コンツェルンが佐倉コーポレーションのスキャンダルを望んでいる。だから私はマネージャーさんと寝ないといけない。アイドルとして破滅して、姉さんを満足させて、ついでにスポンサーにも利益を出す。


『マネージャーさん。奢りますからデートしましょ?』


『いい天気ですね。お出かけしませんか?』


『ちょっとでいいので顔が見たいです』


 毎日毎日会う約束を取り付けようとするんだけど、そのどれもが叶わない。すでにマネージャーさんも私が自分を性的に見ていると認識しているのだろう。そんな爆弾みたいな人間に逢う理由が無いし、応答する理由がない。マネージャーさんは既読スルーこそしないけど、デートの予約はあっさりと回避して、今日のマンガの感想戦を開いていた。彼が腐男子であることは知っているんだけど、それにしても理解が難しい。


『お願いします。マネージャーさん。私と会ってください』


 祈るような気持ちで私はコメントを打った。彼を堕としてホテルに入る写真を撮られる。そこまでして、姉さんの私への復讐は終わるのだ。


『会ってどうしたいのよ?』


 さっきまでの私を無視したマンガの感想戦じゃない。私の意見を聞いてくれている。


『好きです。会いたいです。もうマネージャーさんしか見えません』


 虚偽の発言だ。けれども他に言い様がない。坐古乃キヤラはマネージャーさんが邪魔で、姉さんは私が邪魔。だから二人そろって落ちぶれよう?


『残念ながら俺はお前に興味がない』


『お願いです。チャンスをください。私のこと好きにさせてみせますから』


『逆に言えばこのままチャンスをやらなければ、お前の思惑は完成しないわけだろ』


 そうだけど。でも姉さんが望んでいるのだ。私の最低最悪のスキャンダルを。姉さんを足蹴にしてトップアイドルになった私は、どうにかして姉さんに報いなければならない。だったら誰でもいい。適当にファンを捕まえて、そのまま寝てしまえばいい。けれども、スポンサーの意向を軽視するわけにもいかず。トップスターの立場を利用して、私はマネージャーさんを篭絡する。


『すまんが会うことは出来ん。お前も忙しいだろ。スケジュールは知らんが、分刻みだろうに』


『マネージャーさんのためなら時間空けるから』


『遠慮する。ご自愛しろ』


『お願いします』


 お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。


 どうかお願いします。私を抱いてください。疵物にしてください。処女を奪って、最低のアイドルに堕落させてください。


『ちなみに、マジでやっていいのか?』


『はい。マネージャーさんが初めての相手なら私は後悔しません』


 代わりにマネージャーさんが後悔することになるけど。速攻で返信メールを打って、それから沈黙が落ちた。既読はついたが、コメントの返信が全く来ない。


『マネージャーさん?』


 何を考えているのだろうか。私じゃダメ? スターガーリー51のセンターアイドルを抱けるなら、男なら幾らでも金を出すだろうに。その夢のような一夜にマネージャーさんは食いつかない。そんなに魅力がないだろうか。私はとてもそのことが怖い。


『じゃ、今度会うか』


『本当ですか!?』


『いや嘘。誤返信。別に奴に打つコメントをお前に送っただけ』


『誰ですか?』


『学校の友人だよ。別にお前に会いたいわけじゃない』


 う。あ。


 そんなこと言わないで。私を見て。私を抱いて。私を犯して。私を。私を。


『お願いします。お金なら払います。だから私と恋人になってください』


『金なら持ってるから要らない』


 まぁ佐倉コーポレーションの業務委託マネージャーならそりゃ金は持っているだろうけども。


『なんで私じゃダメなんですか!』


『理由はこっちが聞きてえわ』


 食指が動かない、とマネージャーさんは言う。なんでよぉ。私はあの星空野シータだよ? 男だったら一夜のために全財産を擲ってもおかしくない女だ。


『ってわけで、諦めろ』


『絶対あきらめないから。マネージャーさんの学校にも行くからね』


『そこまで暇じゃないだろ。お前』


 コマーシャルの仕事もあるし、ネット動画の撮影もある。ドラマの配役も決まっているし、写真集も出す予定だ。私のスケジュールはカツカツ。以前マネージャーさんの学校に校門で待ち伏せしたのも奇跡的に時間が出来たからではあるんだけど。


『じゃあマネージャーさんがマネージメントしてよ』


『生憎と俺はオメガターカイトの箱推しだ』


『ホシガリの方が上だし!』


『関係ないね』


 あっさりとした答えが返ってきた。なんでよぅ。いいじゃん。この星空野シータがデートしてあげるって言ってるんだから。


『既読スルーしてもいいんだぞ』


『嫌だ。止めて。それだけは』


 ただでさえスケジュールが合わないのだ。この上SNSも通用しなくなったら本当にマネージャーさんとの接点が無くなる。


『お願いします。何でもしますから。接点だけは』


『わかったよ』


 同情で気を引く。そのことだけは成功したらしい。とは言っても、それ以外は何一つ成功していないんだけど。スターガーリー51の星空野シータの熱愛スキャンダル。それから佐倉コーポレーションの社員さんの枕営業。その二つを成立させるために、私はどこまでも好きでもない男に媚びを売るしかなくなった。


「でもしょうがないじゃん。姉さんがそうしろっていうんだから」


 私より先にセンターになって、そのあと落ちぶれた姉さん。私が全てを奪って、今トップスターの地位にいる。その懺悔のために、私は地獄を見たってかまわない。それだけのことを私はしたのだ。マネージャーさんを一緒に地獄に堕とすのは気が引けるけど、姉さんの言葉は私の全て。姉さんが私に地獄に落ちろと言うなら、私には落ちる義務がある。


「あ……あぁ……」


 誰か助けて。なんで私はこんな辛い環境で、それでもカメラの前で笑っているんだろう。こんなにも辛いのに、私の気持ちを知らないファンは私に笑いかけているのだろう。応援してくれて、それで私が嬉しがるとでも? こんな地獄にいる私に、さも売れているアイドルが幸せの絶頂だと信じ切っているのか。


「嫌だよ……誰か助けて……」


 スマホにマネージャーからスケジュールの連絡が来る。コマーシャルの撮影の予定と、その後の写真集の撮影について。仕事なんて腐るほどある。けれどそのどれをも受けないとウチのプロダクションは納得しない。社長なんて地位は私より上なのに、私が仕事を断ろうとすると揉み手でゴマを擦って機嫌を取ってくる。これは光栄なことだ。アイドルとして売れるのは幸せなことだ。みんなが君を待っている。でも、みんなって……誰?


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