第196話:春休みの一日
『マネージャーさん。デートしない?』
『しません』
そんなわけで春休みに突入したわけだが、やることはさほど変わらず。まぁ課題もないし。適当にマネージャーの仕事をしながらあっさりと春休みを過ごそう。そう思っているところにこれだ。星空野シータからデートの誘い。ついでに桃野さんからも似たようなお誘いが来ている。いいんだけどさ。特に応対する理由もないし。
『じゃあせめて住所教えてよ。遊びに行くから』
却下だこの野郎。俺は朝飯を作りながら、今日はルイとタマモとイユリの朝飯も一緒に作っていた。そうして今日は何をするかなーと思っていたのだが。
「マアジ。デートしない?」
「ルイとか?」
「そそ。今日はオフだし」
「まぁするのはいいんだが」
お茶するくらいなら問題ないだろうし。
「おねーさまー……」
「イユリはまた今度な」
「また今度ということはワンチャン」
「まぁ付き合う程度はしてやるよ」
「えへへぇ。お姉様♪」
「タマモはどうだ?」
「…………今日は撮影がありますので」
だったな。じゃあルイと一対一のデートか。
「じゃ、今日はシクヨロ!」
あーはいはい。
「さて、そうするとどういう服装で行くべきか」
女装は前提条件。その上で愛らしい服装というと。
「じゃ、行きますか」
今日はとある学校(ただし現実には無い)の女子制服を着て、女装メイクをしてルイとデートすることにした。ルイの方も帽子を被ってパンクに被れ、サングラスで変装している。
「えへへ。マアジとデート♡」
「嬉しいか?」
「そりゃもう。嬉しくないわけが無く」
女子二人(誤表記アリ)で腕を組んでデートを開始する。既に注目は集めている。
「あの二人可愛くない?」
「女子二人でデート? 百合?」
「尊い~~」
そんなわけで俺とルイのデートは予想だにしない注目を集めていた。まぁさすがに黒岩ルイだとはバレていないが、それでもサングラス越しにも美少女であることは悟れるのだろう。俺としては好きにしてくれだ。
「まずはどこに行く?」
「喫茶店でいいだろ。お茶を飲みたい」
「星空野シータともしていたしねー」
「悪かったって。無視も能わぬ存在だからな」
「食べられちゃダメだよ?」
「安心しろ。俺はルイ一択だ」
「本当? たまに不安になるんだけど……」
仕方ないのでキスをする。唇を重ねる。
「お前がいないと……俺はダメだ。」
「もう。マアジのジゴロ♡」
「お前とタマモにだけだぞ」
「それでも嬉しいの♡」
「さいですかー」
他に言い様もなく俺はそう言った。
「コーヒーとスコーンを」
「ボクのも同じで」
そうしてイギリス式のティータイムを過ごす俺とルイ。コーヒーはともあれ。
「マアジって女装すると超かわいいよね」
「否定も難しいな」
「何でそんなに可愛いの?」
「さて、な」
おかげで堂々とルイとデートできるわけだが。
「マジでアイドルやっても問題ないスペックだと思うんだけど」
冗談じゃないね。別に俺はアイドルに幻想を持っていない。オメガターカイトさえ応援できれば、それ以上は求めない。
「でもマアジ可愛いし」
「誉め言葉と受け取っておこう」
「本当に褒めてるんだよ? マアジなら……」
「総括マネージャーで精いっぱいだ」
「仕事してないくせに」
「高校生に何を求めているんだ?」
俺としては総括マネージャーなる立場だけでも意味不明なんだが。
コーヒーを飲んで、スコーンを食べる。こういう時は紅茶なのだろうが、今の俺はコーヒーを呑みたい気分だったのだ。
「マアジってそういうところがダメなんだよ?」
「否定されるのは慣れているが、別に俺に関わることでもないだろ」
「まぁそうなんだけどーだぞ」
そうしてティータイムを終え、そのまま今度はウィンドウショッピング。アレが欲しい。コレが欲しい。目をキラキラさせながら、ルイは購入欲を高めたが。
「ホントに買わなくていいのか?」
結局何も買わなかった。
「マアジとの思い出はプライスレスだから♪」
そういう風に使う言葉だったか? それって。
「知らないけど。でもマロンがあれば万事オーケー」
ロマンな。
「あのね。本当に怖いの」
ルイは俺をギュッと抱きしめて、震えていた。
「オメガターカイトのメンバーもそうだけど。ヲヒメちゃんに星空野シータ。みんなみんな……マアジが好き」
「だよなー。なんでこんなにモテてんだ?」
「それがマアジだから」
どういう理屈?
「だから繋ぎ止めるためなら何でもするよ」
「何でも……って何でもか?」
「マアジのしたいこと全部してあげる。だから私の傍を離れないで」
「じゃあまずはその依存癖をどうにかしないとな」
「マアジぃ♡ 大好き」
俺も好きではあるんだが……。
「ホテル行く?」
「ノーセンキュー」
「もう。本当にマアジはもう」
「見限られるのは損が大だが、お前を疵物にするつもりもないぞ」
「アイドル止めたら?」
「悪夢だな」
「じゃあ続けないとね」
ニヘラ、と笑って、ルイは嬉しそうにする。俺の言うことを聞いていたか。そこから疑問なのだが。でもいつかはアイドルだって卒業が来るんだよなー。無念なりし。




