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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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第188話:何かを悩むということ


「ドキドキ! クイズコーナー!」


 番組収録に出向いたのはいいんだが、俺は何で此処にいるのか真剣に考えているようないないような。番組の収録を生で見れるのはオメガターカイトのファンとしてとても感動だが、ネット番組で視聴する楽しみが減るという意味では少し残念。まぁここで楽しめばいいか。


『今日もデートしようねー』


 で、ピロンとスマホが鳴って、メッセージが送られてくる。相手はもちろん星空野シータ。


『無理』


 俺の返事は二文字で終わった。


『あれ? 何か機嫌損ねた?』


『そういうわけじゃなくて、既に学校にいないから校門で待ち伏せしてもくたびれもうけだぞ』


『ああ、マネージャー』


 さいです。というわけで、俺としては目の前のクイズ番組の収録を見ているのだが、一番トンチンカンな回答をしているのはアワセだった。番組的には正解なんだろうが、素でぼけているのは中々できることではない。


『ちなみにスタジオどこ?』


『教えるわけないだろ』


 突撃隣の番組されても迷惑がかかるだけだ。実際にテレビ局は星空野シータなら顔パスだろうし。俺から言うことは無い。


『むー。私の扱いがぞんざいだよー』


『無下に扱うことにかけて俺より上はそういないぞ』


『腐男子なのに生意気だ』


 ちげーよ。あくまで俺の推している同人作家がBLを描いているだけだ。そうして後は未読スルーでスマホを収め。諦めることを真摯に願っていた。今回は三本取りするらしく、番組はカメラの前で進んでいる。まぁ俺は別にだが、番組を三本も撮ると疲労もバカにならず。


「ほい。スポドリ」


 全員分のスポドリを用意して、休憩の合間に渡していた。っていうかスタジオの休憩所にある自販機だが。


「マネージャーに心砕きが嬉しいぞ」


「…………ですね。……ありがとうございますマネージャーさん」


 ルイとタマモはニッコリ笑顔。


「佐倉くん。ちょっと時間ある?」


「無いのでまた今度な」


 いやーな予感がして、俺はあっさり回避。


「そんなこと言わずに~。マネージャー~」


「言いたいことはここで言え。言えないのなら臓腑に収めろ」


「佐倉くんと仲良くしたいの」


「そりゃ御光栄なことで」


 ほい、とスポドリを渡す。


「大事に飲むね」


「遠慮なく飲め」


「これを佐倉くんの何かだと思って?」


 汗だよな? スポドリで補給する液体って。


「マネージャーさん。今日のサヤポンどうだったにゃ?」


「何か意外と真面目に回答していて意外だった」


 まぁクイズ番組は死ぬほど見てきたのでサヤカが結構良識を持っているのは既知だが。ただ外見のロリ度合いと、口癖の「ニャ」から、おバカキャラのオーラが漂っているんだが。


「失礼なマネージャーさんだにゃ~」


「マネージャーさん。お疲れ様デス」


 イユリは、まぁオメガターカイトに囲まれて幸せだろう。そもそもアイドルとお近づきになりたくてアイドルになったと言ってのけているので、同僚と仕事するのは彼女の幸福。やっすい幸福かもしれないが、それは決して批難には値しない。


「お前的に今のトレンドは?」


「タマモちゃんデス。またおっぱいが大きくなったようで……もう!」


 いやんいやん、と首を振って恥じらうのはいいんだが、コイツのガチさ加減はまぁ毎度のことで。男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛をすべきという標榜はある意味最も世界の終焉に近い。


『こらー! 無視するなー!』


 さっきから星空野シータから鬼コメント投下が行われているが、相手をするのも面倒だ。既読だけつけてスルー。業界人ではありえないが、俺は業界人じゃないし。


「マネージャーさん。わたくしはどうでしたの?」


「頭悪いんだなって」


「むぅ。問題が難しいだけですわ」


 いや、難易度で言えば中学生レベルだぞ。お前いいとこのお嬢様だろうが。


「お見合いの件は……」


「黙っていてください。お願いですから」


「お父様から何としても堕とせとせっつかれているんですけど」


 まぁ頑張る分には応援するが、応援がいつの時代も無責任というのは変わらぬ真理であって。


「マネージャー。俺には何かないのか?」


「安定感があるよなー。リンゴって。タレントとしては強みだと思うぞ」


 中二病はリンゴの特色だが、別にそれだけじゃない。地が愛らしいし、声を可愛い。アイドルをやっているのだ。そこは外さない。あくまで中二病はオーバリストの名残であって、彼女の愛らしさと可憐さは、それとは別の問題。あと頭もいいし。


「マネージャー的にはオッケーか?」


「よく頑張りました」


 偉い偉いと頭を撫でる。それから次の番組収録。三本取りだ。まだ先は長い。まぁ一本一時間としても、準備諸々合わせて四時間から五時間はかかるだろうな。だから俺たちは学校を昼で切り上げてスタジオに来たのだから。何で俺まで巻き込まれているのかは世界の不思議だということで。


「次は企業案件で……」


 収録に際して番組のコンセプトも説明され。そういうところでも時間は取られる。タブーの発言をしたら撮り直しにもなるし、中々難しい世の中だ。センシティブという言葉が氾濫しているので、エンタメ側も慎重になるのが最近の傾向。


「…………」


 一人缶コーヒーを飲みながら、俺は番組の進行を見ていた。他のマネージャーは現場監督やディレクターの御機嫌取り。大変な仕事と分かっているが、まぁ俺にそういうのを求めるのは間違っていて。そもそも大株主の佐倉コーポレーションが送り込んだ不条理な人事だ。社長が一番給料を払いたくないのは俺だろう。総括マネージャーという実体のない役職について営業もしないマネージャーなのに給料だけは貰っているという。まぁ無償奉仕でもいいのだが、中々そう言うことも難しい話らしい。そもそも株主が子会社に役員を送り込むのは自然だし、俺がマネージャーで済んでいるのもある意味では良心の現れ。それこそ社外取締役とか意味のない天下りみたいな役職で、好き勝手無責任に業務に口だけで介入して困らせながら高給を取られるよりかは遥かにマシだろう。そう言うことがないとは言わないが、ウチの姉貴は結構そこら辺はちゃんとしていて。俺を総括マネージャーにしているのも、あくまで俺への善意である。それが俺にとってプラスかは、まぁ別の議論として。


「それじゃあこの栄養価は……」


 企業案件の番組撮りは順調に進んで、そのまま眺めていると、原因に対して結果に繋がる。そうして全部取り終わって、お疲れ様。俺も疲れたし、このまま休みたい。そう思っていたのだが。


「やっほー」


 スタジオを出ると星空野シータが待っていた。ああ、神様。そんなに俺が嫌いですか。


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