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推しのアイドルが所属しているグループのメンバーが俺の家に入り浸る  作者: 揚羽常時


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185/220

第185話:使徒


「でさー。メンバー内でもちょっとギスギスがー」


 先ほどから続いて喫茶店。既に俺は二杯目のコーヒーを頼んでおり、それは星空野も同じだ。ただ相手は普通にケーキを頼んでおり。まぁ別にコイツの奢りだし俺としてはどうでもいい。聞きたくもない楽屋の話をされてガンガンアイドル家業の闇深さを語られている。彼女の不満について俺から言えることはないが、それはそれとして誰かに話すことで得られる栄養というものもあるのだろう。まさかメンバー内に愚痴を吐くわけにもいくまい。一瞬で相手に伝わる。その点で言えば、俺は適合しているというか気軽に話せるというか。王様の耳はロバの耳と叫ぶのにも場所を考える必要があるわけで。


「聞いてる? マネージャーさん?」


「ああ、聞いてる。今期のガンアダムの映画が最高って話だろ?」


「聞いてないじゃん!」


 むー、と唸る星空野。


「聞いてるよ。(※自主規制)さんの態度が露骨で不満があるって話だろ」


「えへー。ちゃんと聞いてくれてる」


 そりゃここまで言われるとな。


「スターガーリー51に不満があるわけか?」


 だったら俺から言えることはそう無いぞ。


「まぁそれもあるけど」


 あるんかい。


「そもそもなんで私がセンターなの?」


「可愛くて歌が上手くてトークが上手いからだろ」


「え、ちょ…………口説いてる?」


「耳鼻科に行け」


 俺はあっさりとそう言った。


「マネージャーさんってそういうところあるよねー」


「だろ?」


「褒めてないんだけど」


 もちろん知ってる。


「で、結局俺に愚痴って何がしたいのよ」


「それだけマネージャーさんを信用してるってこと」


「SNSでも上げればいいのか?」


「脅し?」


「いや。ブラックジョーク」


「だからさぁ。ウチのプロダクションも経営的にもうちょっとこうメンバー内の内輪もめに感情を注いでだねー」


 とは言っても、俺も納得せざるを得なかった。ころころと話題は変わるが、星空野の話は尽きることがない。おそらく地頭がいいのだろう。会話のセンスが計り知れない。そりゃ番組でレギュラーとっているだけあって、会話スキルも相当なものだ。俺との会話でグループの愚痴を語っているのは、おそらく必要事項だろう。俺としてもそこまでアレなら言うことはないが。


「アイドルを止めようとは思わないか」


「ちょっと社長に匂わせたことはあるけど……」


 ああ、その光景が目に浮かぶようだ。


「全力で止められただろ」


「分かる?」


「俺でもそうする」


 将来的に稼ぐ星空野シータの市場規模は十億円を軽く超える。今辞められるのは、その十億円超を泡にするような展開だ。


「いいじゃんねー。別にやめたって」


「まったく良くはないと思うが」


 億円だぞ。財閥令息の俺が言える金額でもないが。


「マネージャーさんが養うとか」


「絶対ごめんだ」


「ケチー」


 そういう問題でもないような?


「だからさー。マネージャーさん。私とホテルにグエェ……」


 アイドルが出しちゃいけない声を出しながら、呼吸を押さえられる星空野。見れば繊維が星空野さんの首に巻きついて、呼吸を妨げていた。さすがに窒息死を誘発するわけもなく。あくまで脅しだ。


「来てたのか」


「まぁな」


 フード付きのコート。ついでに仮面。聞こえる声は中性的だけど、俺には女の子の声に聞こえる。というか、俺が事情を説明したのだが。もちろんスマホでな。


「誰? 何?」


 首に巻きついた繊維をどうにかしようとして、しかしどうにもならず。一メートルで数トンを支える強靭な繊維だ。アイドルの腕力で千切れるはずもなく。仮面の少女はビシッとポーズを決めた。


「アイドル恋愛粛清仮面……御法度リリン!」


 なんか毎度の如く聞いている気もする。


「推しに代わっておしおきよ!」


 海兵服を着た女性戦士の如く見栄を切る。


「何言ってるの? この人?」


「察してくれ」


 あえてツッコむことをせず。俺はコーヒーを飲んだ。


「アイドル恋愛粛清仮面?」


「御法度リリン!」


「えーと……」


「アイドルは恋愛をしちゃいけないのだぞ?」


「知ってるけど。私は欲しがりだし」


「俺はそんなアイドルが許せない!」


 どの口が言っているんだろうな? まぁ今更だが。


「とにかく。佐倉マアジに近づくな」


「マネージャーさんも同意見?」


「いや、茶くらいなら付き合うが」


「ま、マアジぃぃ……」


 そんな見捨てられた声を出すな。リンゴ。いいだろ。別にいいだろ。星空野とお茶をするくらい。


「じゃあ俺ともしろ」


「今度な」


「言質取ったからな!?」


「お前も茶を飲むか? 今なら星空野の奢りだぞ」


「パフェとアイスティーを」


 あ、頼むのね。


「マネージャーさん。彼女は?」


「アイドル恋愛粛清仮面」


「一切わからないんですけど」


 安心しろ。俺もよく分かってない。


「じゃ、これからも私の愚痴を聞いてくれる?」


「それくらいはお安い御用だが。それこそお前んとこのプロダクションのマネージャーの仕事じゃねーの?」


「どこから愚痴が漏れるか分からないし」


 まぁそれも真理か。


「その点、マネージャーさんには気兼ねしなくていいし」


 そこはしてくれ。


「アイドル恋愛粛清仮面さんは大丈夫なの?」


「何に対して言っているのかによるな」


 頭か。言動か。異能か。あるいはバカさ加減か。


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