第182話:総括マネージャーは大変じゃない
「――――ッ ――――ッ ――――ッ」
今日はオメガターカイトのダンスレッスンの日。俺はホケッとソレを眺めていた。うーん。普通に色々と感動するな。いかんいかん。俺は総括マネージャー。でもなぁ。ルイもタマモも可愛いんだよなー。
「ふぅ」
そうして一旦ダンスレッスンが休憩になって。俺はスポドリをオメガターカイトに頒布してまわった。
「ありがとうございます。マネージャー」
ルイがニコッとして受け取る。それからスポドリを飲みながら俺の隣に座る。
「どうだった? ダンス」
「素人目には何とも。ただ最高だとしか言えないな」
「最高かー」
だってオメガターカイトのダンスだぜ? 最高以外に何があるんだよ?
「タマモのおっぱい見てたでしょ」
「ミテナイヨー」
「はぁい。ギルティ」
クスクスとルイが笑う。俺も笑った。こういう時間があるならマネージャーも悪くない。しっかしやっぱり壁には鏡があるんだな。こういうのって知識として知っているけど実際に見るとな。まぁんなこと言ったら既にマネージャーとして見てはいるんだが。何度見ても感動というか、なんかファン心理が疼く。
そうしてダンスレッスンが終わって、そこからは解散。とは言っても、杏子以外は全員同じマンションなのだが。
「マネージャー。一緒に帰りませんか?」
で、杏子がニコッと笑んでくる。ま、いいか。
「…………」
ルイとタマモが面白くなさそうに見てくる。そこはご勘弁を。
「佐倉くんってさー」
で、ワゴンに乗って杏子の家まで送る。
「何か?」
「どこに住んでるの?」
「黙秘」
「そこはスクールメイトのよしみとしてさぁ」
「学校で会えるだけでもいいだろ」
「私と会えること。嬉しいんだ」
「そりゃアイドルが学校にいればな」
「みんな私に夢中だもんね」
否定はしない。オメガターカイトの角夢杏子がいるだけで学校はバラ色だろ。
「佐倉くんも幸せだね」
「そーかもなー」
「ちょっと淡白過ぎない? 佐倉くぅん?」
「別に理由はないぞ」
「無いの?」
あるかもしれない。
「とりあえずだ。杏子もこれから頑張れよ」
「佐倉くんが応援してくれるならねー」
「応援しなくても頑張れ」
「佐倉くんの応援が欲しいの。あ、パンツいる?」
「欲しい」
「そっかー。じゃああげるね」
ジョークのつもりだったんだが。
「佐倉くんが欲しいって言ったんだよ?」
否定も難しく。で、脱ぎたてパンツを渡される。
「おー」
愛らしい柄のおパンツだった。広げてちょっと感動。
「ちなみに今のお前って……」
「ノーパンだよー」
やはりそうなるか。
「興奮する?」
「しない方が男としてどうかと思うぞ」
「じゃあさぁ。私の部屋で一勝負」
「はい。お疲れ様でしたー」
ワゴンが杏子の家につく。
「寄っていかない?」
「お断り申し上げます」
「タレントのモチベーション維持もマネージャーの仕事だと思うけど」
「商品価値を維持するのもマネージャーの仕事だ」
チュッと杏子は投げキッスをした。
「愛してるよー。佐倉くん」
あーはいはい。
「本気だからね?」
「じゃな。夜の夢に」
「出てきてくれるの?」
「さて、どうだろう」
「むー。佐倉くんは意地悪だ」
「否定も難しいな」
実際に俺が意地悪なのは議論の余地もなく。だからソレを改めようと思っていなくて。
「他の子推しにしちゃダメだよ?」
「それは今後次第ということで」
ルイとタマモのことを言うわけにもいかず。もちろんサヤカとイユリとアワセとリンゴのこともな。そうしてワゴンから杏子を下ろして。そのままマンションまで。
「マアジ~?」
ポケットの中のパンツをどういう風に処理すべきか悩んだが。後ルイの声が怖い。
「何もしてないぞ?」
「愛を囁かれなかった?」
「それはもちろん」
「マアジは嫉妬という感情を知らないの?」
「存分にご承知していますが」
「その上で杏子と一緒したの?」
断る理由も無いしな。
「どうせ帰ったらルイがいる」
俺はギュッとルイを抱きしめた。
「ま、マアジ……」
「大好きだぞ。ルイ。お前に夢中だ」
「は、はわわ……」
「…………むー」
で、あちらが立てばこちらが立たず。タマモが不満そうにしていた。
「はいはい。来ていいぞ」
「…………マアジ♡」
そうしてタマモも俺に抱き着いた。いやー。恵まれているな俺。
「これってサヤポン自重するところ?」
「そこは自重してくれ」
「むー。おにーさんは意地悪だ」
俺の推しはルイとタマモ。これは譲れない。その上でオメガターカイトが俺を好きだというのなら、それについては何も言わない。
「じゃ、飯にするか」
「今日は何?」
「冷や麦」
ただし釜揚げの熱々の奴な。




