第180話:現実は非常である
「「「「星空野シータに惚れられたぁ!?」」」」
「気に入られた……な」
スマホを見せる。星空野シータのコメントログが流れていた。ちなみに俺は読んでない。面倒だということもあるが、ルイがどういうコメントを返信しているのか見るのが怖い。
「ディーヴァラージャの桃野ヲヒメに引き続き~!」
俺の襟を掴んでグワングワンと揺らすイユリ。
「そんにゃレベルじゃにゃいにゃーよ。スターガーリー51の星空野シータって……雲の上の人だにゃー」
まぁ一人で何億と稼ぐモンスターではあるな。
「ルイとタマモは大丈夫なんですの?」
「そりゃ警戒はするけど」
「…………一応マアジのことは信頼していますし」
嬉しいことを言ってくれるねセニョリータ。
「ヲヒメの時もそうだけどさ。マジで結構マアジってボクの事好きだぞ」
「…………色々していますしねー」
マジでガチ推し。ルイとタマモがいれば女子なんて要らないんじゃね?
「でも星空野シータデスよ?」
イユリの戦慄も止まらないらしい。たしかに聞くだけで震える名前ではある。オメガターカイトは国民的アイドルだが、スターガーリー51は国民的スターだ。
「マアジ?」
で、最後にリンゴがニッコリ。
「粛清していいのか?」
「俺をか?」
「星空野シータに決まっているだろう」
ダメです。社長に迷惑がかかるぞ。ただでさえお前らの暴走で胃を痛めているっていうのに。
「マアジはいいのか?」
「俺はルイとタマモにベタ惚れだから」
ヒュンと、繊維が俺の首を絞める。
「もちろんリンゴちゃんも推しですが」
「よかろう」
それで繊維は解かれた。
「それでおにーさんはどうするにゃーの?」
「既読スルー」
「うわぁ」
サヤカがガチで引いている。そんなにありえないか? 俺の対応。
「っていうか既に腐男子認定されていますわね」
「お姉様ってBLの素養がありますデスから」
アワセとイユリもログを辿っていた。ちなみに俺のスマホのロックを開けられるのは俺とルイとタマモだけだ。他の四人には明かしていない。
「イユリ。今度のリリィコンプレックスの同人誌だが……」
「もちろん。買いデスよ!」
グッとサムズアップするイユリ。ガールズラブの同人誌を買うのはイユリの使命だし、俺は別に性癖に同性愛は該当しないが、好きなサークルの本はジャンルが何であれ買うことにしている。まぁその点で言えばルイもBL本買ってるんだけど。
「そう言うの好きなのか?」
リンゴがわからないと聞いてくる。アイドルやっているんだから同人界に詳しくないのは珍しくないだろうし。目の前の仕事とアイドル恋愛粛清仮面御法度リリンで忙しいだろうしな。
「リンゴちゃん。男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛をするのが世界の真実なんデスよ」
晴れやかな笑顔で言っているが、それ少数派の意見だからな。性癖的に言えば左翼に該当する。
「まぁマアジは女の子っぽい顔してるけど」
悪かったな。
「中性的な顔の人って美人だって言うしな」
褒められてんのか? リンゴとしても俺をテスタメイトにする以上、目の前でディスりはしないんだろうけど。
「で、ルイが腐男子装って、星空野さんとコメントしていると」
「うん。ちょっと楽しいよね」
「性格を疑いますわよ。リーダー」
ジト目のアワセ。
「ボクはアワセの性癖を疑うんだけどね」
「だって星空野シータですわよ!? 自分より成功している女に男を寝取られるなんて、それなんて希望!」
そこで絶望じゃないのがアワセの凄いところだな。
「とにかく。俺はオメガターカイト以外とは浮気しないから」
「ヲヒメとはキスしたくせに」
「アレもオメガターカイト案件。あと思い出させるな」
不本意の二点五乗だ。黒閃でも決めたのかってレベル。
「…………アユさんも結構脅威ですよね」
難しそうな顔でタマモが言う。まぁ個人レベルで言えば最強の一角だしな。今マサチューセッツに工科大学が存在しているのはアユの気まぐれでしかない。
「じゃあ特におにーさんは星空野シータとはあんまり関係にゃいにゃ?」
「どうやってお断りするか悩んでいるレベル」
「もったいにゃい。搾り取れるだけ絞りとろーにゃ」
「お前がやれ」
舵を取れ。
「でも返信に困ってはいるけど、星空野シータさん、諦める気配有りませんね」
それだよなー。別段俺も相手にする気は無いけど、ルイのサクラコメントに真摯に返しているあたり、俺を嫌うという行為にはカロリーを使うらしい。
『好きな政治家はキm――』
やめて。色んな方面に問題が頻出するから。
「というわけで、義理と人情の問題でお前らにも現状の説明はしたが、俺は全く興味がないことを伝えておく」
「ちにゃみにおにーさん。今日のお相手は?」
「…………はい」
恥ずかしそうにタマモが手を挙げる。
「どういうシチュをお望みで?」
「…………首輪をつけて二足歩行禁止でマーキングするところをマアジに……」
どこまで行ってもタマモの性癖は通常営業らしい。
「マアジ~?」
「リンゴさん? 文句を言う相手が違いませんか?」
あと俺の首に繊維を巻きつけるな。
「そういうことは俺とやれ!」
お前のシチュも結構ぶっ飛んでるぞ。くっころが好きとかどこの姫騎士だ。
「はぁお姉様と出来るのが週一は厳しいデス」
「わたくしは捗りますけど」
「サヤポンは大丈夫だにゃー」
っていうかそんなに大勢とは出来んのよ。俺はエロゲ主人公みたいな絶倫でもベッドヤクザでもないし。精々二回。それも調子が良ければな。
「っていうか。星空野シータさんとも?」
「サヤカが接触してないから無理だろ」
していても無理だが。
「向こうが誘ってきたら?」
「丁重にお断りします」
「もったいにゃいにゃー」
「この年齢で刺殺されたくないしな」




