第2Q:頭脳と解析とスクリーンと
ピーーーッ!
第2クォーター開始の笛がコートに響き渡る。
「2クォーターもそのまま押せぇぇ! レバンにボールを集めろ!」
第1Qの成功体験に沸く西の観客席から声が飛ぶ。ボールを持った西のガードが、迷わずインサイドで構えていたレバンへ鋭いパスを放つ。しかし、セルラはニヤリと笑った。
(また右からの力押しだな。さっきと同じポストムーヴだ!)
レバンは得意の右側へ力強く一歩を踏み出し、マッチアップするセルラをパワーで押し潰そうとした。——だが。
「なっ……!?」
セルラが、あえて右側の進路を極端に切る立ち位置を取っていた。
右へ行けない。レバンは咄嗟に左へ切り込もうと軸足を支点に体を反転させた。
しかし、その進路(左)には——腕を上げてガッチリと構えた東のヘルプディフェンダーがすでに待ち構えていた!
「ダブルチームッ!?」
「逃がすな! パスコースを消せ!」
すかさず3人目がカバーに入り、外に待機している西の選手へのパスコースを身体で遮断する。
(右に行けない……左には壁……外へのパスも出せない……!?)
これまで簡単にゴール下へ侵入できていたレバンに、一瞬の「選択の迷い」が生じた。
「くそっ、強引に投げてリバウンドを取る……!」
迷いが生じた一瞬の隙を突かれ、セルラとダブルチームの上からレバンが強引にシュートを打とうとした、その瞬間。
バシィィンッ!
「貰った!!」
カバーに入っていた東の選手がレバンの手からボールを弾いてスティールした! 西ベンチからは「えぇぇ!?」と悲鳴が上がる。
これこそが、東の主将セルラが第1Qでレバンと直接激突しながら観察し導き出した戦術——『選択肢削り』だった。
セルラはレバンという怪物を一人で止められるとは最初から思っていなかったのだ。
その代わり、相手が成功を確信している「得意な進入路」をあらかじめ消し、誘い込んだ先で連動して壁を作り、パスでの逃げ道を塞ぐ。
「選択肢を一つに絞らせ、その最後の一つをチームで潰す!」
しかし、レバンの強さは本物だった。その後も圧倒的なパワーで東の守備陣をねじ伏せ、泥臭く得点を重ねる場面もあった。
だが、第1Qのように楽には決めさせてくれない。シュートを一本打つたびに体力を削られ、毎回複雑な判断を迫られるレバンの額から、大粒の汗が吹き出し始めた。
「レバンが……攻めあぐねてる……!?」
西の選手たちに動揺が走る。
◇
守備で生み出した最高の流れを、東は攻撃へと繋げた。
「アルニタ様の作戦で行くぞ!!」
東のガード選手がトップの位置でボールを保持する。そこへ、セルラ自身が素早く西のガード選手の横に駆け寄ってガッチリと立ち塞がり、その270センチの巨体で壁を作った!
「なにッ!?」
壁に引っかかり、ガードへの追いかけが一瞬遅れる。セルラとマッチアップしていた西のセンター・レバンは「スイッチ(マークする相手の交代)か!?」と一瞬判断に迷う。
その一瞬の隙を逃さず、東のガード選手がセルラの壁を擦り抜けてドライブ! レバンが慌ててカバーに飛び出したその瞬間——
壁となったセルラが素早く身を翻し(ロール)、空いたゴール下へと一直線に切り込み飛び上がった!
「セルラさんッ!」
東のガードから、レバンの頭上を越えるアリウープパスがセルラの手元へ収まる! 空中でフリーとなった巨漢セルラが、そのまま力強く両手でアリウープダンクを叩き込んだ!
バシュゥゥンッ!!
【第2Q(残り5分):西 38 ー 30 東】
「やったぁ!決まりましたぁぁ!」
東のベンチで、次女アルニタが小さな拳を握りしめて声を弾ませた。
自ら壁となり、味方をフリーにすると同時に自身も切り込むセルラの『ピック&ロール』。カイトとアルニタが叩き込んだチームプレーが、完璧な形で結実したのだ。
「タイムアウト!!」
西のベンチで長女メイサが叫ぶ。
ベンチに戻った選手達にメイサから檄が飛ぶ。
「皆、動揺しちゃダメよ!ロールに対しては基本的にスイッチで対応して!レバン、オフェンスは一度フリースローラインまで上がってポストアップから外へ捌いて(キックアウト)!皆も外からじゃんじゃんシュートを狙って!!」
「「「おう!!」」」
メイサもまた、カイトから学んだ采配を必死に振るい、レバン一人に頼らない攻撃の形を指示する。
コート上で審判として走り回るカイトは、胸の中で感心した。
(いいぞ、メイサもアルニタも……! 俺が何も言わなくても、自分たちの頭でしっかり考えてチームを動かしてやがる!)
インサイドで再び対峙するレバンとセルラ。
西はレバンの規格外の個の力とメイサの指示で喰らいつき、東はセルラの高度な頭脳・ピック&ロールとアルニタのチーム戦術で猛追する。
ピーーーッ!!!!
前半終了(第2クォーター終了)の笛が鳴り響いた。
【前半終了(第2Q終了):西 46 ー 42 東】
一時は12点あった点差が、わずか4点差にまで縮まっていた。
「ハァ……ハァ……ちっ、セルラ……気味の悪い守りと攻めをしやがる……!」
ベンチへ戻るレバンは、激しく息を乱しながらセルラを睨みつけた。第1Qの余裕は消え去り、その瞳には焦りと苛立ちが混じり始めている。
しかし、東のセルラも息を荒らげていた。
(追いついてきた……だが、レバンの体力とパワーはまだ衰えていない。後半、必ずさらに激しい力押しが来るぞ……!)
両チームの主将がセンターとして真っ向からぶつかり合い、消耗がジワジワと表面化し始める中、勝負の行方は全く分からないまま、運命の後半(第3クォーター)へと引き継がれるのだった。
(第14話へ続く)




