↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異質なその者は、世界の常識を改変する。  作者: 久米鱈 鯛子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/54

第51話 朝食

 

 俺は今、木の椅子に座っていた。


 そして、目の前には木製の机があって。


 その上には、平たいのと、深い器が、全部で五つ置いてあった。


 ……否、水の入ったカップもあるので、食器の数としてはもう少し多かった。


「……あむっ」


 その中の一つ。

俺は、自分の一番近くに置かれた、平たい器の上のパンを取った。


 それを口に運び、モサモサと貪る。


 自分の握りこぶしより、少し大きいくらいの、少し硬くなった塊。


 それが、口の中の水分を吸収しながら、ゆっくり嚥下されていった。


「……ズズっ」


 口内の渇きを感じた俺は、すかさず、隣にあった深い器に手を伸ばす。


 その中には、肉、茸、葉などが入った、スープがあって。

 それを、ゆっくりと飲み込む。


 舌の上では、妙な刺激と、その他食材の旨味が広がって、水分が確保された。


「……肯定。……美味しい」


 実に理に適った、食事の組み合わせ。


 摂取しやすいパンと、それにより奪われる水の確保。


 それらが両立された、とても合理的な内容だった。


 ……前に食べた時も思ったけど、やはり良い。


「ははっ、そうかいそうかい。それは良かった。……オメガちゃんは、朝でも良く食べるんだね」


 セルグが、俺の前方に座って、笑っていた。


「ほら、これも食べてみなさい。さっきの得物から取れた内臓を塩で焼いたものだ。少し癖があるかもしれないが、中々美味しいよ」


「……ん」


 俺は、男が差し出してきた器の方を見た。


 ……その中には、一見小さな、肉片のようなものが入っていた。


 丸みを帯びた、楕円形。


 それが、さらに小さく切られて、置かれている。


 ──さっき見た、あの内臓。

 あれに火を通すと、この様になるのか。


 俺はそんなことを思いながら、手元の道具を手に持った。


 先端が分かれた、棒状のそれを、肉片に突き刺す。


 そして、そのまま口に運び、咥えると……中で、弾力のある感触がした。


 モキ、モキと咀嚼すると、奥から濃い肉の味がする。


 それ自体は、思っていたより淡泊であって。


 しかし旨味というか、汁というか、そういう美味しさがある気がした。


「……評価。……普通、変な感触」


「ふむ、そうか。……どうやら、オメガちゃんにはまだ少し早かったみたいだね。食べられなかったら、残してもいいよ? 私が食べるからね」


 俺が思った事をそのまま告げると、セルグがそう言って若干器を引いた。


 ……何故、そちらに寄せる?


 食べられる物ならば、わざわざ食べない理由など無い。


 今、俺に最も必要なことはエネルギー補給であり、その為であれば摂取できるものは何でも摂取する。


 ……だから、まだそれだって、食べるのだ。


「……否定。……食べる、それも。全部」


「え? 苦手……っていう意味じゃ、無かったのかな? 食べられるなら食べてもいいけど……私も食べたいから少しは取っておいてね」


 男はそう言うと、肉片の端を一つ、口の中へと運んだ。


 ……まあ、確かに。


 これを捕ってきたのも、解体したのも、調理したのも……全ては、セルグがやった事だ。


 今回の事に関し、俺は何ら労力を使っていない。


 ……。


 ……。


 ……これは……。

 早めに、何か”手伝い”を、しなければ。


 ******


 俺は残っていたスープを全て飲み干し、器を机の上に置いた。


 炉の上に置いてあった鍋は、既に空っぽで。


 先程出された焼いた内臓も、器の上のパンも、全て食べた。


 結果、俺の空腹感は完全に鳴りを潜めていた。


「──ご馳走様でした。」


 同じく、食事を終えたらしいセルグが、両手を合わせていた。


 そして、まるで祈るように、或いは軽くお辞儀をするように、そう言っていた。


 ……それを見ていた俺は、何となくそ(・)う(・)す(・)る(・)べ(・)き(・)だ(・)っ(・)た(・)と思い出して。


 彼を真似るように、「……ごちそうさま。」と口にする。


「ははっ。オメガちゃんは、ちゃんと礼儀正しいんだね。……さて、それじゃあこの後の事なんだけど……昨日言っていた通り、川に洗濯に行こうか」


 男はそう言いながら、席から立ち上がった。


 そして、机の上の食器を集めつつ、料理所へ向かう。


「……疑問。……洗濯?」


「あぁ、そうだよ。数日分の服が溜まっているし、オメガちゃんが気にせず眠れるように布団も洗おうと思ってね。──そうだ! ついでに、水(・)浴(・)び(・)もしてしまおうか」


「……。」


 水浴び……つまり、川の水で、体を清めようという事。


 布団や、布や、衣服も一緒に。


 なるほど……。



 ……。



 ……。



 ──風呂、か……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。