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異質なその者は、世界の常識を改変する。  作者: 久米鱈 鯛子


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第40話 食後の始末


 夜空を見上げ、俺はそこに存在した星々に感銘を受けていた。


 今まで、何度も見てきたはずで。


 今日のそれだって、特に何が違ったわけでも無いはずなのに。


 ──何故か、今宵の星空は、俺の心に強く残った気がした。


「……あぁ、そうだった。すまない──食事の、最中だったね。あまり遅くなるといけないし、早く食べてしまおうか」


 セルグはそう言うと、自分で持っていた器に、忙しく口を付け始めた。


 ……あぁ、言われてみれば、確かに。


 今は、食事の……栄養補給の真っ最中だった。


 ……。


 ……俺は、そんな大事なことを忘れてしまうくらい、考え事に──この空に、耽っていたのか。


「……ズズッ」


 俺はそう思いながら、よく熱の通ったスープを口に含んだ。


 肉の油と旨味。

 茸の風味。

 野草の香りと苦味。


 たったこれだけの器の中の、琥珀色の液体から、様々な味がした。


「……評価。やっぱり美味しい……パンも、食べる」


 注がれた器の中身を再び飲み干すと、今度は膝の上の皿の、パンに手を伸ばした。


 数刻前に、これと同じものを食べた。


 あの時も、確か軽くて食べやすく、直ぐに呑み込めるため”美味しい”と思ったっけ。


「ははっ……オメガちゃんは、本当によく食べるねぇ」


 二つあったパンの内、一つを齧り、飲み込む。


 そのまま、もう一つのパンに喰い付いたところで、セルグがそう言ってきた。


「……こふへい。……ふぁん、おいひい……おはあり」


「ふふっ……オメガちゃん、口の中にものが入っている時は喋らない方が良いんだよ。お行儀が悪いからね……はい、スープのおかわり」


 俺が手渡した器を受け取りつつ、セルグはそう言っていた。


 口の中に、ものが入っている時……つまり食事中は、あまり話さない方が良いらしい。


 ……なるほど。言われてみれば確かに、そうだった気がする。

 今度からは、気を付ける様にしよう。


「……。」


 ──その後、俺は男の言いつけを守り、無言の中での食事を続けた。


 ******


「……さて。そろそろ片付けて、小屋に入ろうか。……だいぶ冷えてきたしね」


 食事を終え、俺とセルグは焚火の火にあたっていた。


 当然、ただ何の考えも無く、見ていただけではない。


 夜が更けてきて、周囲の気温が下がった結果、体温を維持する為に火にあたっていたのだ。


 ……焚火は温かかったけれど、周りは少し寒かった。


「スープの残りは、明日の朝食にするとして……オメガちゃん、また少し手伝ってくれるかな?」


 セルグはそう言うと、まだスープの入っている鍋を俺に手渡してきた。


 ……その鍋は、ほのかな温かさを残していて、今尚良い香りを漂わせていた。


「熾火は……いいか、炉のものを使えば……」


 男が、また何かを呟いていた。


 しかしその後、彼は徐に焚火に砂……土をかけていた。


 ……なるほど、焚火はああやって後始末をするのか。


「これでよし──さっ、オメガちゃん。中に入ろう」


 そう言って、セルグは小屋に向かって歩き出す。


 そして俺は、そんな彼の後ろを、両手で鍋を持ったままついて行った。


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