表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異質なその者は、世界の常識を改変する。  作者: 久米鱈 鯛子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/46

第31話 違和感

 ※お食事中の方は、閲覧をお控えください。


 ******


「さて。あと他に、案内していない場所は……」


 小屋の中から。


 外の小屋前の敷地と続いて。


 俺は、セルグに彼の生存圏の案内をされていた。


「……あ! そうだ。大事なところを忘れていたよ。……まあ、わざわざ見せるようなものでも無いけどね……」


 男はそう言うと、「ついて来てくれるかい?」とこちらを手招いた。


 俺はそれに素直に従って、彼の後ろに付く。


 すると、セルグは脇の道から小屋の後ろ側へと回って行った。



 ……その途中。

 小屋の外壁には、石で囲まれた”炉”があった。


 恐らく、それは位置的に料理所に近い場所だと思われる。


 そして、その炉の中にはまだ熱を帯びた、黒い炭が入っていた。


 ……そう言えば、先程セルグが料理をしていた時に、火を使っていた気がする。


 それに、この小屋にはどうやら煙突があるようだ。


 ということは、この炉は外からも中からも、使えるものなのかもしれない。


「……あっ、オメガちゃん! そこは熱いから不用意に触らないでね、危ないから!」


 ついて来いと言われた手前、俺はその炉が気になって足を止めてしまっていた。


 すると、それに気付いたセルグが振り返り、そして慌てた様子でこちらに走ってくる。


 どうして、そんなに急いで戻ってくるのだろう。


 ただ、少し──一部が赤く染まった、この炭が気になって。見ていただけなのに。


 これは先程セルグが言っていた、薪の成れの果てだろうか。


「……否定。危なくない……見てた、だけ」


「えっ? ……あ、いや、私の早とちりだったかな……そっかそっか、すまないね。一瞬、君が炉の中に手を入れようとしていたように見えたから、思わず大声を上げてしまった」


「……。」


 別に、触ろうとしたわけでは無い。


 触らずともわかる、これは熱いだろう。


 ……。


 ──だが。



 ……何となく、何となくだ。


 何故か、どういう訳か……少しだけ、気になってしまったのだ。



 この、炭に灯った小さな火種が────全く、”危なくない”と、感じてしまって。



「……質問。……この、黒くて、赤いの……熱い?」


「え……えーっと、それは勿論だよ。さっき料理をするのに薪をくべたからね、火自体は出ていないが、触ったら火傷をするくらいには熱いさ」


「……そう。……なら、やっぱり……危な、い?」


 火傷をする。つまりは、損傷を負う。


 それは、要は危険であり、危ないという事。


 ということは……火は、危ない……?



 ────今は、そう思わないけど。



「……理解。……案内、続き……ついてく」


「……あぁ、分かったよ。念のためもう一度言っておくけど、不用意に火に近づいてはダメだよ? オメガちゃんが火傷や怪我をしたらいけないから」


「……。」


 俺は、セルグの言った事に対し、肯定も否定もしなかった。


 ……けれども、彼はそれを気にした様子はなく、引き続き歩き始めた。



 ──炉から飛んだ火の粉が、風に乗って流れる。


 それは小屋の裏手、セルグが歩いていった方向へと散っていった。


 距離にして、僅か数十歩程。


 しかし、確実に小屋から離れたその場所には、小さな”木造の箱”が立っていた。


 否、その壁の薄さから単なる敷居と表現した方が良いかもしれない。


 そして、その箱には正面に扉があって────何やら独特な香りを、自身の鼻腔が感じ取っていた。


「……ここも、まあ……一応ね。案内ってわけでもないけど、使い方は教えておかないといけないから……」


 セルグはそう言うと、その箱の敷居を開け放った。


 ──すると、中から一匹の()()が飛び出した。



 それは、そのままゆっくり空中を旋回していた。


 しかし、やがてどこかへと飛び去って。

 直ぐに、その所在が分からなくなってしまった。


「……。──見ての通り、ここは便所だ。汚いところで悪いね……」


 セルグは、その飛び出した虫に全く興味がないようだった。


 代わりに、少々顔を歪ませながら、箱の中を覗き見ている。



 ……それは、人が一人入って、ギリギリの大きさだった。


 手前側と、奥側で、それぞれ段差になっていて。


 そして真ん中には、小さな丸い穴が空いている。


 ……どうやら、この異臭はその穴の中からしているようだった。


「これでも、可能な限り掃除はしているんだが……あぁそれと、使()()()()はその奥にある灰を掛けておいてね」


 男はそう言うと、箱の中の奥、穴のすぐそばに置いてあった木の桶を指差した。


 その中には、文字通り灰色の……『灰』が、入っていた。


 使った後──なるほど。


 セルグは言っていた、ここは『便所』であると。


 つまり、ここで”排泄をした”後に、その上からあの灰を振りかけろという事か。


「……理解。わかった」


 俺は、セルグの言った事に対し、そう答えた。


 すると彼は、それを聞き終えた後早々に扉を閉めてしまって。

 そして、再び小屋の方へと歩いていってしまった。



 ……。



 ……。



 「────排……泄……?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ