第2話 顕現
その日、空間が割れた。
闇夜に照らされる森の頭上。遥か彼方の天が裂け、そこから黒い何かが漏れ出した。
それらは漂い、惑い、広がって行く。
空気を喰らい、生命を蝕み、大地を呑み込んで行く。
本来の理に沿わず、徐々に、少しずつ、大きくなる。
交わり、跳ね除け、混ざり合う。
されども完全には溶け合わず、その靄は確かに存在している。
それは、全てが”異物”であった──。
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────なんだ、ここは。
真っ暗で何も見えない視界が、自身の所在を眩ました。
……いや、そもそも眼というものは開いているのだろうか。
一体、なにが、どうなった。
俺は確か、挙式場で男に刺されて死んだはず……。
……寒い、ような気がする。
実際に身を震わせているわけでは無いし、気温が低いという事実もないのに、それでも何も感じないというのは寒気を感じるものなのか。
全く、状況が理解できない。事態が呑み込めない。
こんなことは、これまでの人生に前例がない。
……それに──あぁ、もう。
何なのだ、このナニカが纏わりつくような感覚は。
何も見えないし、何も聞こえないし、何も触れられない。
くそっ……せめて、”身体”さえ動いてくれれば────。
「────は?」
突然、視界が明るくなった。
バッと視野が広がって、同時に言葉にし難い浮遊感を覚える。
なんだ、いきなり何が……。
それに、圧倒的なまでの眩暈がする。まるで宙返りをしているような、胃の中が沸き立つような不快感。
──否、それは正しく落下していた。
真っ暗な空の下、空中に投げ出され俺は落下している。
まずい、このままでは地面に激突してしまう。回避方法は……ダメだ、周りの木々には、とても間に合わ────。
──バッシャン。
次に俺が感じたのは、冷たい液体を打ち破った感覚だった。




