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異質なその者は、世界の常識を改変する。  作者: 久米鱈 鯛子


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第16話 種族『瘴気』


「……自分の情報が、見たい。……今度こそ」


 俺のその言葉に反応するように、またしてもそれは姿を現した。



 ======

 Lv.0


 ・名前 【オメガ】

 ・年齢 【0歳】

 ・種族 【瘴気─人型】


 ====

 ……特性 【侵食】【体内収納】【】【不干渉】【】【再定義】……

 ====


 ・スキル 【なし】

 ======



 ……やはり、そうだ。


 俺がこれまでに得てきた情報の中で、『瘴』に関連するものはこれしかない。



 ──種族、『瘴気』。これこそが、俺の抱いた確信だった。



 後に続く人型という部分は、一先ず置いておこう。


 眼前の彼女たちの種族が、エルフ語と呼ばれる言語を介する『エルフ族』なのだとしたら。


 差し詰め、俺は瘴気という得体の知れないモノで形作られた、人の形をしたナニカであるのかもしれない。



 ……しかし、ではそれが一体何なのかと聞かれれば、正直よくわからない。


 けれど、一先ず自分はそうであるとして。

 そして、彼女たちのこれまでの奇行の一端を自身が担ってしまっていたんだとしたら。


 ──或いは、彼女たちが執拗に俺に迫っていたことも、納得は出来るというものだろう。


「────理解。……なら、もしかして。私悪いことしちゃったかな?」


 この女たちの異常が、仮に自分の存在のせいだったのだとしたら。


 それは、まあ何となく申し訳ない気持ちが湧くような気もした。


 無論、これらはあくまで推測であり、どこにもそのような証拠はない。


 ただ、少なくとも彼女たちの亡骸を前に、このまま何もせず放置していこうという気持ちにもならなかった。


「瘴気、か……。たぶん、この身体から出てる”黒いの”、だよね? ──うーん。これ、()()()()()()()?」


 漆黒の装束を纏い、今尚黒い霧を出し続けている自身の体に対し、俺はそんなことを思った。


 彼女たちの奇行。

 黒く濁った川。

 朽ちて、枯れ往く森。


 これら全てが、自分の身体から放出し続ける瘴気が原因なのだとしたら──。



 ……もし、そうなら。なんて()()()()ことをしているのだろうか。


 あまりにも非効率的すぎる。


 燃料効率が悪すぎて、頭が痛くなる。


 特に害したかったわけでも無い周囲を、俺は無意識のうちに侵食しようとしていたことになる。


 こんな広大な範囲を、気付かぬうちに呑み込もうとしていたことになる。


 ──あぁ、なるほど。

 だからこその、あの異様な疲労と空腹感なわけだ。


 意図せぬ瘴気の生成をここに至るまでの間ずっとし続けていれば、それは薄くもなるし、疲れるし、お腹も空くだろう。


「──希望。この瘴気が出ないようにしたい。……うーん、うーん……」


 目を閉じ、俺は自身の中へと意識を伸ばす。


 どうにかそれらを抑え込めないかと、頭を悩まし、唸り声を上げた。



 ……。



 ……。



 ……。



 ────あ、できた。



 閉じていた目を再び開けると、既に身体からは何も出なくなっていた。


 何故、どうやったのか、上手く言語化は出来ない。


 しかし、敢えて言葉にするなら全身を力ませるように、或いは脱力するように、身体から漏れ出すそれらを無理矢理抑え込んだのだ。


 ……けれど、特に圧迫感や苦しさは無かった。


 寧ろ、エネルギー効率が良くなったというか、身体の感覚がより研ぎ澄まされたような気さえする。


 ……いや、やっぱり多少窮屈かも?


「……んーん。とにかく、これで……さっきよりは、マシになったかな」


 (もや)の放出を抑えた俺は、再び川の流れる先を見据えた。


 このまま、引き続き人里を目指して森を進むのであれば、これで恐らく先程までのように周りを勝手に侵食していくようなことは無くなるだろう。


 折角人が住む村や町を見つけられたとして、さっきの女達のような状態になられては聞きたいことも聞けなくなってしまう。


 これで絶対大丈夫、という確信はない。が、それは実際にもう一度人に会ってみないことには分からない。


 兎に角、また歩き出してみよう。


 ……。


 ……。


「……──あ。そうだ、忘れてた」


 数歩歩いた後、俺は思わずそう言って背後を振り返った。


 そこには、先程倒れた”エルフたちの陰”が二つ。



「うーん……結局、コレどうしよう……」


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