第15話 騒がしかった女達
どちらとも分からぬ方角から、朝日が顔を出し始める。
川辺であるからか、或いは朝方特有の湿度の高さであるためか。
肌に纏わりつく水気の感覚が、随分と煩わしく感じられた。
「……で。一体、何だったの?」
つい先程まで眼前で繰り広げられていた、あまりにも非生産的な彼女たちの行動に対し、俺はそんな感想を零した。
背後から胸を貫かれ、川辺にうつ伏せで倒れる髪の短い女。
そして、そんな女を刺し殺し、自分もその場に倒れたもう一人の髪の長い女。
俺に対し弓矢や炎などで危害を加えたらしいその二人は、結局騒ぐだけ騒いだ挙句、勝手に静かになってしまった。
「……疑問。……何がしたかったんだろう、この二人」
突然現れた、耳の尖った女たち。
しかし、彼女達は一体何の目的があって、何故こんなところに現れたのだろうか。
それに、折角ここまで川を辿ってきて、当初の目的であった『人に会って情報を得る』というのを達成できるかと思っていたのに。
結果として、何も聞くことが出来ないままその者達は動かなくなってしまった。
さて、どうしたものだろうか。
何か、彼女達について分かることは……。
──そういえば、先程髪の長い女が気になることを言っていたっけ。
確か、自分達は『エルフの戦士』であるとかないとか……。
それに、その者が体調の悪化の原因が、”瘴気”であるとも言っていた。
そして、その言葉には聞き覚えがあった。
あれは確か、オメガについて記されていたあの光る板に──。
「──希望。……情報が知りたい、見せて」
記憶を頼りに、俺は真実を確かめる為、自身の希望を口にした。
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Lv.75
・名前 【リファーア】 (瘴)
・年齢 【153歳】
・性別 【女】
・種族 【エルフ】
・スキル 【森の加護】【状態異常耐性:中】【魔法適性:小】【風読み】
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Lv.77
・名前 【リーシェル】 (死)
・性別 【女】
・年齢 【157歳】
・種族 【エルフ】
・スキル 【森の加護】【状態異常耐性:小】【魔法適性:中】
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そうして、俺の眼前に二つの板が姿を現した。
「……え?」
けれど、その内容を見て俺は一瞬困惑する。
確かに、自分は情報が知りたいと望んだ。
しかし、それは瘴気という言葉に付随した、自身の情報を確かめたいという意味での発言だった。
──ただし、同時に彼女たちが一体何をしていたのか、何をしたかったのか、何者であったのか……。
確かに、それを知りたいとも欲していた。
なるほど。
その結果が、これというわけか。
「納得。……それに、この二人のことが分かるのは、悪いことじゃない」
そう判断した俺は、彼女達の『情報』について目を通し始めた。
それぞれの名前、年齢、種族……。
名前については、二人が何度か互いに呼び合っていたので何となくわかる。
……だが、種族『エルフ』というのは、一体なんだ?
それに、年齢も人間にしては高すぎる……。
また、どうやらこの女たちにもレベルとやらの概念があるようで、そして各々スキルというものをいくつか所持しているようだった。
──けれど、そんなことより。俺がそれらについて最も違和感を覚えたのは、女たちの名前の横に記された『文字』であった。
「……死、と……瘴? これは、どういう意味?」
それぞれ違った単語が、そこには記されていた。
リファーアという女には『瘴』、そしてリーシェルという女には『死』。
……。
……もしかして、これは本人の状態について言っているのだろうか?
確かに、このリーシェルの方はもう一人の女に心臓を刺され、倒れた。
現に、そこに転がっている彼女の体を見ても、肌に血色は無く明らかに生気を感じられない。
──あくまで傍見ではあるが、『死亡している』と定義して差し支えないであろう様相をしている。
「……理解。たぶん。……でも、じゃあ(瘴)っていうのは?」
仮に、名前の横にその者の状態について記されるのだとしたら。
では、このリファーアという女は、現在どういった状況にあるというのか。
傍から見た感じ、今のところ彼女も息があるようには見えないが──。
「瘴、瘴、しょう……──あ。もしかして、瘴気のこと?」
しばらくの思考の末、俺はようやくその答えに辿り着いた。




